京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『ボス・ベイビー』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年3月30日放送分
『ボス・ベイビー』短評のDJ's カット版です。

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優しいお父さんとお母さんの愛情を一身に受けて育てられてきた7歳のティムの元に、ある日弟が誕生。というか、タクシーに乗ってやって来た。しかも、黒いスーツに黒いネクタイ、目にはサングラス、腕には高級腕時計、そして手にはアタッシェケースをぶら下げて。どう考えても、おかしいだろ、こいつ。怪訝そうなティムを尻目に、両親は赤ちゃんに構ってばかり。徐々に苛立ちと疑惑を募らせるティムが調査をしてみると、そいつは何と大人のように話すことができるばかりか、口が悪くて人使いのめっぽう荒い、ボス・ベイビーだった。問いただしてみたところ、ボス・ベイビーには秘密の任務があるのだとか…

カンフー・パンダ (字幕版) シュレック (字幕版)

カンフー・パンダ』や『シュレック』で知られるドリームワークス・アニメーション。2年前に買収されてユニバーサル・グループの一員となって初めての長編アニメーション映画となります。日本での公開がアメリカから丸1年も遅くなった経緯については、リアルサウンド映画部の宇野維正さんの「興行ランキング一刀両断!」3月28日付けの記事に詳しいので、スタジオや配給の裏事情について興味のある方はそちらをどうぞ。

あかちゃん社長がやってきた (講談社の翻訳絵本)

原作はマーラ・フレイジーの絵本『あかちゃん社長がやってきた』で、講談社から翻訳が出ています。監督は「マダガスカル」シリーズのトム・マクグラス。僕は吹替版で鑑賞しましたが、ボス・ベイビームロツヨシ、ティムを芳根京子が、そしてお母さんを乙葉、お父さんをNON STYLE石田彰が演じる他、宮野真守山寺宏一といった豪華声優陣も脇を固めています。
 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

このコーナーでドリームワークスの作品を扱うのは初めてです。はっきりとした特徴を、スタジオが言葉にしているので、まずはお耳に入れておきましょう。「ディズニーは、子供と、大人の中にある子供心に向けて映画を作るが、ドリームワークスは大人と、子どもの中にある大人心に向けて映画を作る」。これは元々ディズニーの幹部で94年にスピルバーグと一緒にスタジオを設立した1人、ジェフリー・カッツェンバーグの発言なので、余計にディズニーとの差別化が分かりやすいんですが、この『ボス・ベイビー』はなんと、3月21日に公開したところ、プリキュアはもちろん、日本最強のどらえもんも、そしてなんと『リメンバー・ミー』も抜いて、先週末の観客動員1位を獲得しました。すごい。
 
とまあ、この快進撃には驚いたのでお伝えしましたが、さっきの言葉が鍵です。「子供の中にある大人心」を描くのがドリームワークスである。ティムを思い出してください。彼はいつも背伸びした冒険を夢見る男の子ですよね。そして、ボス・ベイビーは、赤ん坊の皮を被った中間管理職です。これはそんなふたりのバディー・ムービーとして展開する。つまり、ドリームワークス的なるものをそのまま形にしたような作品なんです。だから、下ネタもバンバン放り込んでくるし、それは子供には絶対にわからんだろうっていう映画パロディーとかプレスリーのネタとか、特に説明もなく入れてくる。そして、そもそもの設定も下手すると振り落とされる人が出てくるくらいにぶっ飛んでます。あらすじで書いてるサイトもあるくらいなんで、ここまではいいだろうっていう設定部分を補足しますね。
 
天上界には、この世に生まれてくる赤ちゃんは家族向きか経営向きかで分別され、経営向きとされたベイビーたちはそのまま天上界に残り、ベイビー株式会社で赤ん坊の管理が任される。ところが、最近はどうも赤ちゃんよりもワンちゃんの方が人気があるようで、このままでは赤ちゃんが減ってしまう。何とかしなければ。しかも、地上のワンワン株式会社は人間誰しも夢中になってしまうような愛らしくてたまらない犬の新商品を発売するらしく、ボス・ベイビーはその情報を事前に仕入れるための産業スパイとして送り込まれてきた… なんじゃ、その飲み込みにくい設定は!

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ビジネスマンでゴリゴリの合理主義者たるボス・ベイビーは、愛情なんてものに興味はなく、考えているのは出世です。なんなら社畜です。僕も含め、映画館へ行っている人は、赤ん坊なのにスーツという外見のギャップに興味を惹かれているわけで、そのバリエーションとして、赤ん坊なのに社畜っていう内面のギャップでも楽しませてくれる。でもね、その一点張りのゴリ押しかとも観ながら思ってしまったのも事実です。やっぱり設定が突飛すぎるよって思ったし、その割に、お母さんの妊娠の件はどうなってるのかなとか、説明不足が気になって途中で興味がそがれそうにもなっていたんです。だいたい、画作りにしたって、今動員を争っている『リメンバー・ミー』と比べたらかなわないっていうか、同じ土俵ですらない気もします。
 
ところが、ですよ! まさかの逆転満塁ホームランに、油断していた僕の涙腺は久々に決壊しましたね。これはさすがに口が裂けても言えないけど、終盤でそれまでの物語を大きく括弧でくくるような展開が不意にやって来るんです。そこで明らかになるのは、この作品が実はワーク・ライフ・バランスと兄弟を持つ喜びを大真面目にテーマにしたものだということ。実際に兄がいる監督は、「50年分の僕から兄へのラブレター」だと、この作品に個人的な想いを込めたことを明かしてもいるんですね。
 
さんざっぱら、兄弟なんていない方がいいとばかりの流れからのっていう脚本の構成に参ってしまいました。と同時に、これは大人向けだと確信しました。連れてった子供には、表面的なギャップの部分で通り一遍に笑わせておいてください。で、大人はその笑いの後に、本気でジンと来てください。
 
技術的、そして多少の脚本のアラは置いておいて… 愛情は相対的なものではないということ、そして他者を受け入れることで未知の扉が開くこと、さらにはワーク・ライフ・バランスの問題も含め、アメリカもそうですけど、今の日本でも絶対に観られるべきテーマを扱った作品だという意味で、結果的に、僕は強くオススメしたい1本となりました。僕は一人っ子で、何度か兄弟がほしいと思ったことはあるけど、この映画を観て、やっぱりいいもんだなって思えました。

これまで5年間、毎週金曜午後にお送りしてきたFM802 Ciao! MUSICA。枠組みを多少変えながらも、ずっと続けてきた3分間の映画短評におつきあいいただき、ありがとうございました。

 

僕が担当する新番組FM802 Ciao Amici!(月ー木、17ー19時)でも、この短評は継続します。皆さんのおかげです。これからは毎週木曜日17時台、109シネマズDolce Vitaとしてリニューアルはしますが、システムは基本的に同じ。「映画の女神様からのお告げ」も続きますよ。初回4月5日(木)に扱うのは、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。まだ先行上映中ということで、少し観るチャンスを選ばせる格好で申し訳ないですが、鑑賞したら、新しくなったハッシュタグ #まちゃお802を付けてのTweetをよろしく!

 
 

『リメンバー・ミー』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年3月23日放送分
『リメンバー・ミー』短評のDJ's カット版です。

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メキシコの田舎町で代々続く靴職人の大家族と暮らす12歳の少年、ミゲル。ミュージシャンになることを夢見る彼には、大きな悩みがあった。それは、ひいひいおばあさんの代から、この家では音楽を聴くのも演奏するのも厳しく禁じられていること。先祖を偲ぶ祭日である死者の日、コンテストにこっそり出場しようとしたミゲルは、尊敬する音楽家ロドリゲスの霊廟に忍び込み、飾られたギターを拝借して弾いた途端、死者の国へとワープしてしまう。元の世界に戻るには時間の制限があることを知ったミゲルは、家族に再開するため、そして夢を追うために、偶然知り合った陽気な骸骨ヘクターに助けを求める。

トイ・ストーリー3 (字幕版) アナと雪の女王 (字幕版)

ディズニー・ピクサーの最新作で、監督は『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチ。原題は”Coco”なんですが、邦題の由来となったテーマソング『リメンバー・ミー』は、今回短編同時上映された「アナ雪」の名曲”Let It Go”を書いたロペス夫妻が作詞・作曲を担当しています。
 
第90回アカデミー賞では、長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門を獲得し、興行的にも大成功を収めているこの作品。
 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

まぁ、よくできてます。この春休み、たとえば家族で、あるいは恋人同士で、何か映画を1本観に行くということであれば、『リメンバー・ミー』という選択はまず間違いないです。テーマ設定の裏側をわかった風に読み解くとするなら、昨年の「モアナ」もそうでしたけど、もはや決して無視できないレベルでアメリカの人種を構成しているマイノリティーの文化にスポットを当てつつ、そしてもちろんしっかりリサーチしてリスペクトしつつ、それでもなお、宗教や価値観の違いを越えて誰しもが共感できる物語に仕立て上げる。その能力たるや、もうディズニー・ピクサーの右に出るスタジオは現状ないでしょう。
 
予算も潤沢にあるし、技術も世界トップレベルなので、これだけ引きの画が多くても、その背景までの微細な描き込みたるや唖然とします。だいたい、死者の世界の登場人物はみんな骸骨だってのに、あれだけキャラが描き分けられるってのは感服しますよ。

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モチーフにしているメキシコの死者の日は、このコーナーで扱ったもので言えば『007スペクター』のオープニング長回しでも利用していました。あちらは映画全体を支配する死のイメージを頭から印象づけようとしていたと思いますが、こちらには不気味さも厳かさも無くて、むしろラテンそのものな印象の多彩な色味とご機嫌な音楽に溢れています。これはどちらが間違っているということではなくて、どう切り取るかという問題なので、僕としてはどちらも面白かったです。メインの舞台となる死者の世界も、ああいう感じなら死んでも悪くないって思えるしね。ギャグセンスも一流でした。
 
そして、表面的なご機嫌さ、つまり、生者と死者の世界が実はそう遠くないものであって、精神的な交流は可能なのだという、日本で言えばお盆、つまり死者が戻ってくるという観念の裏にあるド級の切なさに踏み込んだのも評価に値するでしょう。冷酷な話だけど、生者に思い出してもらえない死者は、帰る意味があるのかということですね。死んでもしばらくは誰かに覚えていてもらえる。けれど、生者の誰からも思い出してもらえなくなった時、人は2度目の死を迎える。それこそ、本当の意味での消滅なんだと。
 
僕も基本的には同意できるんですが、家族の絆というテーマを重視しすぎているとも思いました。だって、前半のミゲルがまさにそうですけど、家族っていうのは押し付けがわりと当たり前のように許される牢獄でもあるわけですからね。血縁を越えた絆の価値を描くのが進歩的であるというトレンドの中で、実はかなり保守的な映画でもあるなというのが僕の見立てであり、不満な点でもあります。
 
だって、ミゲルはロドリゲスのある種「お導き」によって死者の国へ行き、そこでの大冒険を経てあのラストへと向かうわけですけど、もしこうしたことも無かったら… あの家族、かなりキツくないですか?
 
ただ、世界中どんな人間にも先祖がいるわけで、自分のアイデンティティを考える時にそこは避けては通れないわけです。折しも日本は彼岸の時期。自分という存在と家族について、つまりは人生の意味を考えるきっかけとして、この映画は万人に開かれた良作だと言って差し支えないでしょう。

さ〜て、次回、3月30日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ボス・ベイビー』。これ気になってたんだよなぁ。アニメ続きですが、ユニバーサル・スタジオxドリームワークスということで、このタッグはどうなのか。見届けましょう。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!

 

映画『去年の冬、きみと別れ』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年3月16日放送分
『去年の冬、きみと別れ』短評のDJ's カット版です。

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婚約者との結婚を間近に控えた新進気鋭のルポライター耶雲恭介。彼は盲目の女性が死亡した不可解な焼死事件と、容疑者の写真家・木原坂雄大について調べ始め、その記事の出版企画を有名出版社に持ち込みます。しかし真相を追ううちに、耶雲は木原坂や担当編集者を巻き込みながら、抜け出せない深みに飲み込まれていく。

去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫) グラスホッパー スタンダード・エディション [DVD]

 原作は映画化が相次ぐ中村文則。監督は『グラスホッパー』の瀧本智行。脚本は、ドラマ「金田一少年の事件簿シリーズ」や『無限の住人』の大石哲也が担当。ルポライター耶雲を三代目J Soul Brothersの岩田剛典、写真家の木原坂を斎藤工が演じる他、耶雲の婚約者百合子には山本美月、編集者には北村一輝が扮しています。そして、RHYMESTERMummy-Dさんも出演しておりますよ〜。Dさ〜ん!!

 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!
 
誰が言ったか知らないが、中村文則の「叙述トリックを駆使した原作は映画化不可能」ということだったようです。言い換えれば、小説ならではの方法で読者をミスリード、騙していたわけだから、そのまんまなぞるように映像に置き換えられないということですね。僕が想像するに、瀧本監督の方針はこうです。「だったら、映画ならではの方法で観客を騙せばいいじゃないか。そして、原作ファンも驚かせてしまおう」。この野心込みの方針を、そこそこ高いレベルで達成できていると僕は思いました。
 
盲目の女性が点字で手紙を書き、炎に包まれる。極寒の海辺。断片的な映像が続くプロローグがあって、本編へと入っていくわけですが、そこで誰もが「あれ?」となるのは、いきなり「第二章」と画面に提示されることです。そして、「第三章」がやって来る。おいおい、じゃあ「第一章」はいつ出てくるっていうんだい。そんな疑問と戸惑いを僕らに一瞬感じさせつつも、それぞれのパートから目が離せないまま進んでいるので、基本的にはこの構成についての謎についてはずっと忘れてます。忘れさせられてます。
 
補足すると、この第○章というチャプター分けは、映画そのもののチャプターだと、僕らは思っているわけですよ。そこでもう…っていうね。映画そのものの構成は、単純化してざっくり分けると、前半と後半です。ガラッと様相が変わってしまう。僕はすっかり騙されました。思ってたのと違う時間の流れ方してるやないか〜!
 
なおかつ、原作では1人称の「僕」が語り手なんですが、映画が1人称のナレーションで進むわけでは必ずしもないため、そしてある決定的な改変があるため、原作読者も、一から十までということはないにせよ、それなりに騙されるはずです。お見事な脚色だと言っていいでしょう。
 
資産家の親子が登場し、家族内での愛憎劇があり、それが人格形成に大きく影響するという筋立てと、廃墟化した郊外の団地、高級マンションといった舞台は、同じ中村文則原作の『愛と仮面のルール』でも観たばかりなだけに、どうしても比較してしまう両者。瀧本監督にはっきり軍配が上がります。
 
振り返って僕が良いなと思ったのは、視線の演出です。誰が誰のことをどんな眼で見ているのか。それはカメラも含めてです。あの場面が実はこうだったのかと、物語的視点の変化がもたらす印象の変化が肝の作品なので、視線にこだわるのは必然だし、とても映画的です。岩田剛典は初めて映画でメガネをかけているんだそうですが、斎藤工も時にサングラスをかけてみたり。これから鑑賞する人は、そこに注目すると面白いと思いますよ。
 
といっても、すべて感心しっぱなしというわけではなく、狂気の見せ方はわりと紋切り型だなとか、結婚を控えている耶雲と百合子の描写に今思えば不自然なところがあるなとか、気になった点もいくつかありました。大きいのはこれです。トリックとしては見事な部類に入るけれど、そこに執着するあまり、登場人物たちの心の闇をえぐり切れていないのと、小説からの改変により、よりやりきれないラストになっている気が僕はしてます。「これって、お前がそもそも理性を保っていれば…」みたいなことを考えると、まあやりきれないんです。
 
いずれにせよ、役者陣もみんな好演してますし、アイドル映画的な魅力も十分。僕も山本美月に夢中でした。そして、サスペンスとしてのクオリティーは、一般的な邦画の水準を越えていることは保証できます。瀧本監督のみなぎる心意気を感じる、小説映画化のひとつのお手本とも言える作品だと言えるでしょう。

さ〜て、次回、3月23日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『リメンバー・ミー』。僕、実はアメリカ行きの飛行機の中で先に観てしまったんですが、やっぱり大スクリーンがいい! もう一度行ってきます。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!

『シェイプ・オブ・ウォーター』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年3月9日放送分
『シェイプ・オブ・ウォーター』短評のDJ's カット版です。

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先日発表された第90回アカデミー賞で、13部門の最多ノミネートを果たし、作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞を獲得。こちらは昨年ですが、世界三大映画祭のヴェネツィアでも、最高賞の金獅子を受賞しました。
 
1962年、冷戦下のアメリカ。宇宙開発にまつわる特殊な政府機関で清掃員として働くイライザは、耳は聞こえるものの口がきけず手話でコミュニケーションを取っています。ミュージカル映画を愛し、映画館の上で一人暮らしの彼女は、同僚の黒人女性ゼルダや、隣人で同性愛者の画家ジャイルズと話をするくらい。淡々と暮らす中で、ある日、秘密裏に職場へ運び込まれた不思議な生き物を目にします。アマゾンでは神として崇められていた半魚人のような「彼」の魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで会いに行き、手話や音楽で心を通わせるのですが、やがて「彼」が国家の実験の犠牲となることを知ってしまう。
監督、脚本、製作、原案は、『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ。音楽はアレクサンドル・デスプラ。イライザを演じるのは、『ブルージャスミン』や「パディントン」シリーズのサリー・ホーキンスです。他に、政府機関のエリート軍人ストリックランドには、マイケル・シャノンが扮しています。
 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

タイトル通り、ひとところにとどまらず、あれこれと形を変えていく映画でした。ヒントを得た54年のSFホラー『大アマゾンの半魚人』を『美女と野獣』のようなラブ・ストーリーにしてしまう。おとぎ話でありながら、エロもグロも入れてのR15指定で、久々に劇場でお目にかかったぼかし処理。制作に60人もが関わったこだわり造形のモンスター映画でもあるし、スパイが蠢く一流のサスペンスでもある。イライザは映画館の上のボロい家に住んでいますね。つまり、彼女の人生の足元にはたくさんのジャンルの物語、その光と影があるわけです。

大アマゾンの半魚人 (2D/3D) [Blu-ray] 

障害者であり、孤児でもあるイライザ。ジャイルズは時折カツラをかぶるゲイ。同僚はアフリカ系の太った女性。それぞれに、当時の社会でノーマルとされていた狭い枠からはみ出して生きています。さらに、単純に考えれば悪役となるストリックランドでさえ、いわゆるエリートで鼻持ちならないレイシスト社畜ながら、劇中で明かされるように、ある理由から狭い檻の中でグレイトでなければならないという強迫観念に苛まれる哀れな男という側面もあります。

 

今回のアカデミーで作品賞を競った『スリー・ビルボード』もそうでしたけど、映画界の大きな潮流として、「自分たちとは違うしよくわからないけれど、確かに存在して無視できないものと、どう共存するか」というテーマがあると思います。この作品はそれをエクストリームに追求しているわけです。究極の異形である半魚人アセットが捕らえられてやって来ます。彼は正体不明の生き物ですから、異形の象徴ですよね。世界観という言葉があるけれど、何かを美しいと思う人がいれば、それを醜いと思う人もいる。世界観は人や社会によってまるで違うわけです。アセットは、西洋的価値観では気色悪いものかもしれないが、アマゾンでは神と崇められているわけですから。この作品は、多様な価値観を多様なジャンルで描いているがうえに、観客それぞれの人間的な器のサイズと形状によって、その印象のシェイプも微妙に変わってくる。そんな特殊な設計です。

 

当然ながら、最重要のモチーフは水でした。バスタブ。卵を茹でるお湯。トイレ。研究所にアセットが入れられる水槽。そして、雨と海。人はかつて誰しもが母親の羊水に包まれていたわけですが、水が愛の象徴であることは言うまでもありません。思えば、冒頭には火事があって、ラストには雨が降っていましたね。降りしきる雨の中で、すべてが交錯して大団円を迎えていく。あらゆるシェイプに対応する愛という希望を、デル・トロは水に託して映像に落とし込んだわけです。

 

イライザもアセットも言葉は話せない。だから、手話と音楽とダンスという肉体的な手段でコミュニケーションを図る。時折、サイレントと見紛うような純映画的、つまり映画でしかできないような表現に出会えることも、この作品の大きな魅力です。イライザとアセットが風呂場で抱き合う場面やファンタジックなミュージカル・シーンは、その最たるものでしょう。ふたりの距離が縮まるきっかけは、水で茹でられた卵の殻をイライザが水槽のへりで叩いたことでした。割れた殻は、彼らを閉じ込める世界を想起させます。こうした小道具の使い方もお見事でした。

 

反トランプ運動やセクハラとパワハラ騒動という2018年現在の社会に巧みにフィットした作品ということはもちろん言えますが、そんなこと抜きに、あなたがどんな形で受け取るのかが大事です。難しいことは抜きに、立派な娯楽作がアカデミーを獲りました。普段は映画館へ行かないという方も、これはぜひ!

さ〜て、次回、3月16日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『去年の冬、きみと別れ』。また来ましたよ、中村文則原作。『悪と仮面のルール』はムムムとなりましたが、こちらはいかに? それにしても、斎藤工の大忙しなことよ。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!

『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年3月2日放送分
『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』短評のDJ's カット版です。

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7世紀。中国大陸で栄華を誇った大国、唐。後に真言宗の開祖となる空海は、遣唐使として倭の国から渡ってきた。長安の都で詩人白楽天と知り合った彼は、権力者が次々と命を落とす怪事件の調査を始める。そこで浮かび上がってきたのは、50年前の遣唐使阿倍仲麻呂の存在と、その仲麻呂が仕えた玄宗皇帝時代の絶世の美女である楊貴妃空海と白楽天は、楊貴妃の死の真相が何らかの形で今に尾を引いていると気づいていく。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一 (角川文庫) さらば、わが愛 覇王別姫(字幕版)

原作は夢枕獏の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』。監督は『さらば、わが愛 覇王別姫』や『始皇帝暗殺』で世界的に評価の高いチェン・カイコー。日中合作ということで、キャストも空海染谷将太、白楽天を中国のホアン・シュアン、楊貴妃を台湾出身のチャン・ロンロンが演じる他、阿部寛松坂慶子も要所で参加しています。
 
中国では年末に封切られて大ヒット。150億円と言われる巨額の製作費も既に回収済みという知らせが届いています。撮影は中国語で行われているんですが、日本では吹き替え版だけが公開されているので、すべて日本語になっています。
 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

映画館で観ていた予告編とあらすじ以外、例によって情報を事前に仕入れることなしに鑑賞したんですが、思っていたものとかなり違いまして、結構戸惑いました。僕が想像していたのは、いわゆるコスプレ時代物で、空海と白楽天がホームズとワトソンよろしく活躍するような歴史ミステリーだったんです。だって、東京ドーム八つ分の敷地に6年がかりでセットを立て込んだとか、2万本の木を植えたとか、エキストラの数が半端ないとか、そういうことも謳われていたので、わかりやすくたとえれば『ラストエンペラー』のようなテイストだと思ってたんです。でも、夢枕獏が原作なわけですよ。陰陽師の人です。本人も作風について「エロスとバイオレンスとオカルト」と言っているくらいですから、ストレートな歴史映画になるわけがないんですね。どっちかと言えば『47RONIN』です。実際、のっけからCGを駆使した超常現象がわんさか出てきます。

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ちなみに、中国でのタイトルは『空海』ではなく、『妖猫傅』。妖怪みたいな猫が出てきて、普通に言葉を喋ります。なんなら、主役は猫なんです。そりゃ、驚きましたよ、僕は。さらに驚いたのは、空海が超常現象を目の当たりにしても特に驚かないことですね。彼は終始アルカイック・スマイルを浮かべながら、何が起きても努めて冷静。むしろ、自分でも妖術まがいの技で呪いを解いたりします。既に悟ってるやん! とツッコミたくなる佇まい。まあ、弘法大師空海は、事実、全国津々浦々に伝説・伝承を残してますからね。たとえば、空海が座って休んだら、その重みでへこんだ跡が残る岩が岡山にあったり、淡路島で村人が空海に水を与えなかったら、水が涸れてしまったり。怒らせると怖いんでしょうかね。それはともかく、この映画は僧侶としての空海よりも、オカルトめいた術を自ら操る超人としての側面が強いんです。なので、歴史ファンタジー映画だと思ってください。そうすれば、鑑賞した時に僕みたいにのけぞらずに済むかと思います。
 
原作は読んでいないんですが、お話そのものはなかなか面白いと思うんです。誰もが知る絶世の美女、楊貴妃の死の真相。詩人李白と、彼をあこがれ越えようとする白楽天の筆による名作長恨歌の秘話。史実をヒントに想像力を羽ばたかせたひとつのファンタジックな歴史解釈として、きっちりエンターテインメントになっています。人の生涯を綴る伝記じゃなくて、幻想的な伝奇ですね。ただ、映画としての出来栄えは僕は高くは評価していません。
 
スタイルやジャンルが苦手だということもあるんですが、それは僕の好みなので脇へ置くとして、客観的に観ても気になるのは、チェン・カイコーのガチャガチャしたカメラワークです。やたらめったら動きすぎるんです。ケレン味は確かにあります。これでもかというほど、てんこ盛りです。だけど、そういうキメの画作りっていうのは、ここっていう場所に取っておいてこそ、メリハリが生まれるわけで、この映画では別に何でもないショットでもキメてくるんですよ。それが仇になって、物語への観客の集中力を削ぐレベルだと思います。ただでさえ、登場人物は多いし、時間軸もややこしい話なので、困りもの。
 
映像面でもうひとつ言いたいことがあります。あれだけあっぱれなセットをこしらえたんだから、CGは最小限にしようよ。レベルは高いんだけど、そもそもが凝りすぎてるカメラワークや、ただでさえ派手な色味と相まって、なんかCGを使えば使うほど漫画っぽく嘘っぽく見えちゃうのも、困りもの。
 
そして、小説ならいいんだけど、映画としてはどうかと思ったのが、それこそ基本CGの猫くんです。彼も喋りすぎ。特に後半は、彼の言葉を絵が補足するという紙芝居状態なところが何度かあって目に余りました。
 
ただ、ここは『マンハント』のジョン・ウーと印象が似てくるんですけど、もはや何のこだわりかよくわからないくらいに詰め込みすぎたテクニックと美意識に翻弄されるという快感は認めざるをえません。あなたは美の洪水に身を任せるか受け流すか。それを体験するには、劇場でないといけません。

さ〜て、次回、3月9日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『シェイプ・オブ・ウォーター』。ついに来た、アカデミー作品賞の本丸。来週はもうその結果も出ているわけですよ。いずれにせよ、ヴェネツィア昨年の金獅子は獲ってるわけですから、一見の価値は大アリ。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!

 

イタリア・マルケ州のおいしい料理と人

マルケ州と聞いてその街並みが頭に浮かぶ人ってどのくらいいるのでしょうか。

 

首都ローマのあるラツィオ州や花の都フィレンツェを擁するトスカーナ州に比べると、まだまだ日本での知名度の低いマルケ州。中部イタリアに位置し、アドリア海アペニン山脈に囲まれた自然豊かな州です。そんなマルケ州を2週間旅したフォトグラファー・香西(こうざい)ジュンさんの写真展“イタリア・マルケ州のおいしい料理と人”が、大阪・肥後橋にあるイベントスペースSAAで開催されています。

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会場前に到着すると迎えてくれるのは、イタリアのマンマが何やら生地を伸ばす大きな写真。ここからどんなおいしい料理が生まれるんだろう。そんなワクワク感とともに扉を開くと、そこには香西さんが出会った飾らないマルケの街並み、人、料理の写真が訪れた土地ごとに展示されています。共通するのは、素朴でやさしい空気感。ガイドブックには出てこない日々の暮らしを感じることができます。

 

ひとつ気をつけたいのは、お腹を空かせていくと危険だということ。パスタの食感が、煮込み料理の温かさが、焼き菓子の香ばしさが伝わってくるだけに食べたくなる・飲みたくなること必至です。香西さんが一番気に入ったという街のコーナーには、豚レバーの網脂包み焼きが。脂のはじける音と香ばしい匂いまで漂ってくるようです。

 

写真展なのに五感が刺激されるようなマルケの魅力溢れるイベントは、3月3日(土)まで開催中。ぜひ足を運んでみてください。

 

文:チョコチップゆうこ

 

☆☆☆

 

イタリア・マルケ州のおいしい料理と人

~食で旅する 香西ジュン写真展~

2018年2月23日(金)18:00 ~ 21:00

2018年2月24日(土)~ 3月3日(土)12:00 ~ 19:00 

会期中休館日なし・入場無料  会場:SAA

 

2017年夏の終わりに旅した、イタリアの「マルケ州」。 

きっかけは、5年前雑誌の取材で訪問し、プライベートでも通いだした

マルケ料理店「オステリア ラ チチェルキア」との出会いから。

こんな素朴でやさしい郷土料理があるマルケってどんな所だろう? 

そんな好奇心から、同店の連(むらじ)久美子シェフの旅に同行する事に。 

初めて訪れたその地には美しい自然があり、ゆっくりとした時間が

流れていました。おいしい料理と人に迎えられ、そこに根付いた

食文化に触れられた貴重な2週間だったのでした。

この土地の事をもっとみなさんに伝えたくて、写真展を開催します。

目で舌で…たくさんのマルケを感じてもらえると嬉しいです。

フォトグラファー 香西ジュン

 

 

 

プロフィール / 香西ジュン(フォトグラファー)香川県生まれ。ビジュアルアーツ専門学校大阪卒業。2005年よフリーランス。雑誌、広告、カタログ等の撮影で活動中。料理、人物の撮影を得意とし、年に数回海外での撮影旅行をライフワークにしている。

 

『グレイテスト・ショーマン』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年2月23日放送分
『グレイテスト・ショーマン』短評のDJ's カット版です。

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19世紀半ばのアメリカ。貧しい家に生まれ育ったものの、身分の違いを乗り越え、名家の令嬢であるチャリティーと結婚したバーナム。ふたりの娘にも恵まれ、一家は精神的には満たされた日々を送っていたが、仕事が安定せずに経済的には困窮。妻子を幸せにしたいと願うバーナムは、試行錯誤の末、外見が変わっていたり、特殊な能力を持つ人達を集めてサーカス興行をスタート。新聞での批評では「偽物だ」とこき下ろされながらも、大衆の指示を集めて大当たり。ショービジネス界や上流階級に太いパイプを持つフィリップを新たなパートナーに迎えたバーナムはエリザベス女王にも謁見。ヨーロッパで成功していたオペラ歌手を引き連れてのアメリカツアーを実現して順風満帆だったのだが…
 
実在した興行師P.T.バーナムに扮するのは、ヒュー・ジャックマン。ビジネスパートナーのフィリップをザック・エフロン、妻のチャリティーをミシェル・ウィリアムズ、さらにはオペラ歌手をレベッカ・ファーガソンが演じています。監督は、これが長編デビューとなるMVやCM出身のマイケル・グレイシー。脚本は、『シカゴ』の脚本や「トワイライト」シリーズ、そして昨年のヒット作『美女と野獣』で監督を務めていたビル・コンドンゴールデングローブ賞で主題歌賞を獲得し、アカデミーでも主題歌賞にノミネートされた『This is me』を含む音楽は、『ラ・ラ・ランド』のベンジ・パセックとジャスティン・ポールのコンビが手がけました。
 
本国アメリカでは出だしこそ観客動員数でつまづいたものの、じわじわと口コミでヒットが拡大。ただし、批評的には振るわず、賛否が分かれています。そういう時ほどやりにくいものですが、しょうがない。サントラのCDを何周かリピートしながら練り上げた制限時間3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

僕は映画を観るまではまったく知らなかったバーナム。作品では描かれていませんが、新聞を創刊したり政治家として活動したりもしていて、アメリカではもともと有名な人物らしいですが、詐欺まがいの行為やパフォーマーの強制労働に近いこともあったようだし、避妊禁止や禁酒運動を展開したり、少なくとも現代の価値観で捉えると、すんなり偉人とは言いづらい、褒められたもんじゃない側面も大いにあった模様です。今回の映画化にあたり、当たり前ですが、バーナムの人生は、製作チームが訴えたいメッセージにかなう部分のみにスポットが当てられていて、かなり単純化されています。

 

最大のテーマは、地位や出自、肌の色、ハンディキャップなどなどに関係なく、社会的なマイノリティにも輝ける場所と方法があるはずだということです。真っ当ですねぇ。そこに、家族愛、イマジネーションが育むアイデア、友情といったサブテーマを加え、波乱に満ちたアメリカン・ドリームの物語として展開させてます。『SING』を思い出しますね。キャラクターの個性を動物に置き換えてアニメにしていたものの、あちらも興行主が主人公で、なおかつそいつに多少のいけ好かない部分があるってのも似通っています。そう、この映画では、バーナムは特に後半、詳しくは言いませんが、なんなら悪役と言っていいくらい、ダイナミックに変節するんですよ。僕はそこはとても面白かったですけどね。欲を言えば、そんなダークサイドをもっと観たかったくらいです。

 

とはいえ、人間の光と闇、ショーの表と裏、やさしさと残酷さ、友愛と差別、こうした対立とせめぎ合いを105分にねじ込んで成立させたグレイシー監督の手腕は賞賛に値すると思います。明暗をくっきりつけた映像と、MVで培われただろうテンポ感ある映像運び、大胆なカメラアングル。バーナムが少年から大人になり、最初の博物館をオープンさせるまでのプロローグにあたる一連のシーンの鮮やかなこと。踊っているうちにチャリティーがいつの間にか妊婦になっていたりといった、時間経過を見せる映像的な演出は、ウットリしてしまうレベルでした。『ラ・ラ・ランド』の作曲家コンビ、パセック&ポールによるポップで現代的な音楽は、高揚感の高め方、ブレイクの入れ方、物語を補強するだけでなく前進させる言葉の乗せ方など、どれをとっても超一級品です。

 

ダンスだって、そうです。バーカウンターでのグラスを使った映画的な踊りの見せ方を筆頭に、人数の大小に関わらず、踊りにも随所に工夫が凝らされていています。これはサーカスが舞台ですから、キャストもかなり大変だけど、みんなよく期待に応えてます。特に、空中ブランコ乗りの黒人女性アニーを演じたゼンデイヤが忘れられない人は多いと思います。そして、音楽が鳴って歌い踊りしている間も、しっかり話が進む。これぞ良くできたミュージカルの醍醐味。音楽な挿入される場面には、もう全部持っていかれます。それまでに何か気になるところがあっても、一旦それを忘れさせてくれる、まさにマジカルな効果を生んでいます。

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はい、今僕、気になるところって言いましたね。もちろん、あります。いや、結構あるんですよ、これが。煎じ詰めれば、脚本です。サーカスが成功するまではいいんだけど、後半になって持ち上がってくる問題とその解決がどれも唐突過ぎて、掘り下げればより深みが出るはずのモチーフをみすみす放棄してるのが惜しい! だから、どれも感動を生むためのトラブルに見えてしまうし、中にはそのトラブルがうやむやなまま放置されているものすらある。キツい言い方をすると、歌の勢いでごまかされてるんですよ。手厳しい評価をする人がいるのは仕方のないことでしょう。

 

後半は今言ったような理由で冷めてしまったのが正直なところですが、それでもこの作品の劇場での鑑賞をオススメしない理由にはまったくなりません。製作陣もキャストも、これを機に躍進する人が何人も出てくるだろう今年度を代表する1本なのは間違いありません。ちなみに、監督のマイケル・グレイシーは、あのNARUTOの映画化でもメガホンを取るそうですよ。どうなりますやら。

さ〜て、次回、3月2日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『空海 -KUKAI- 美しき王妃の謎』。先週の『マンハント』に続き、日中合作。今後こういうことはどんどん増えていくでしょうね。今度は大阪ではなく大陸が舞台。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!