京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

イタリア

『シチリア・サマー』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 12月5日放送分 『シチリア・サマー』短評のDJ'sカット版です。 1982年、イタリア、シチリア。サッカーのイタリア代表がワールドカップで優勝した、あの夏。17歳のジャンニと16歳のニーノ。バイクの整…

『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 10月17日放送分 映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』短評のDJ'sカット版です。 1947年、イタリアのヴェネツィア。現役引退を決め込んだポアロは、旧知の女性ミステリー作家に誘われ、死者の声で話…

『私たちの声』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 9月12日放送分 映画『私たちの声』短評のDJ'sカット版です。 アメリカ、イタリア、インド、日本。映画業界で活躍する女性たちが短編を持ち寄り、作品を通じて女性を勇気づけることを狙った国際オムニ…

パオロ・タヴィアーニ『遺灰は語る』レビュー

タヴィアーニ兄弟の弟パオロ・タヴィアーニが監督を務めた映画『遺灰は語る』が日本で公開される。兄ヴィットリオが2018年に亡くなり、弟パオロが一人で撮影した初めての映画だ。もともとのタイトルは”Leonora addio”といい、日本語にするなら「さらば、レオ…

映画『帰れない山』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 5月23日放送分 映画『帰れない山』短評のDJ'sカット版です。 1984年、イタリア北部の工業都市トリノで暮らす少年ピエトロの楽しみは、山を愛する両親とアルプス山麓の村にある別荘で休暇を過ごすこと…

『ボーンズアンドオール』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 2月28日放送分 映画『ボーンズアンドオール』短評のDJ'sカット版です。 1980年代後半のアメリカ、バージニア州の田舎町。生まれつき、人を食べてしまう衝動を抱えた18歳の女子高生マレンは、そのこと…

『離ればなれになっても』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 1月10日放送分 映画『離ればなれになっても』短評のDJ'sカット版です。 1982年、ローマ。16歳の女子高生ジェンマは、同級生のパオロと恋に落ちます。彼の親友、ジュリオやリッカルドとも仲良くなり、…

『The Hand of God』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 2月15日放送分 『The Hand of God』短評のDJ'sカット版です。 舞台は、1980年代のナポリ。主人公は、自分の将来、進路について考える年頃の悩めるハイティーン、ファビエット。他に登場するのは、家…

「イタリア名優列伝 ちょいワル編」全体解説 ~イタリアの星々に見とれて~

ドーナッツクラブが国の力を借り(文化庁助成金)、満を持してお送りするイタリア映画祭「イタリア名優列伝 ちょいワル編」、なかには満席回も出る盛況をいただいております。映画館での上映は今週末までのアップリンク吉祥寺を残すのみ、引き続きオンライン…

愛と感謝と懺悔のイタリア疾走コメディ『ワン・モア・ライフ!』3.12公開!

どうも、ドーナッツクラブの有北です。 イタリア映画『ワン・モア・ライフ!』が、いよいよ来週、3月12日(金)公開です。というわけで、もう一度ストーリーを確認しておくと、 中年男のパオロはスクーターで通勤途中、身勝手な運転が仇となり交通事故に遭っ…

人生のロスタイムを描くイタリアンコメディ『ワン・モア・ライフ!』3.12公開!

「人って死んだらどうなるの?」 子供の頃から死後の世界に興味があった私は、よく周囲を困らせる質問をした。大人からは誰からも納得のいく答えを得られなかったが、かわりに映画が未知の世界を教えてくれた。 例えば『天国は待ってくれる』(1943年)では…

モルタッチは魔法のことば

「ブオニッシモ」という言葉を耳にしたことはないだろうか。「美味しい」を意味する「ブオーノ」の語尾が変化したもので、協調の意味が加わり「めちゃくちゃ美味しい」となる。イタリア語で書くと”buono”の語尾の“o”の部分が”issimo”に変わって”buonissimo”…

閉会宣言! エドアルド・レオ特集上映~イタリア娯楽映画の進行形~

どうも、僕です。野村雅夫です。 まだ今日7日(土)いっぱいはオンライン上映が続いておりますが、 一足先に閉会宣言です。春に緊急事態宣言が出る頃に企画を練り始めたこのイベント、吉祥寺、京都、そしてオンラインと、大勢の方にご参加いただけたこと、感…

エドアルド・レオ特集上映 字幕翻訳者が語る『ブォンジョルノ、パパ。』

どうも、ドーナッツクラブのクルーラー担当、有北です。 このたび、エドアルド・レオ特集上映の1本『ブォンジョルノ、パパ。』を字幕翻訳しました。特集上映のほかの作品ではバイオレンスな役どころも見事にこなしていますが、やはり本作のように、レオはま…

エドアルド・レオ特集上映 字幕翻訳者が語る『わしら中年犯罪団』

最近は観光ガイドの仕事がなくて、YouTubeばかり見ている。いままで見てこなかった総合格闘家のYouTubeチャンネルなどを見ている。これが面白い。めちゃくちゃ面白い。いろんな切り口で面白さを語ることができるのだが、何より格闘技が語学に通じているとこ…

エドアルド・レオ特集上映より 『俺たちとジュリア』解説

短い短いストローのささった熱い熱いコカコーラ。 これがなにかというと、トスカーナ方言の特徴を紹介するときのおもしろフレーズだ。イタリア語で書くと、La coca cola calda calda con la cannuccia corta corta.となる。前回のカタカナ表記のジレンマをい…

エドアルド・レオ特集上映より 『ブォンジョルノ、パパ。』邦題について

「スッチャーデスさんボンジョルノ」とオザケンが早口で朗読したダースのテレビCMが流れていたのは、もうかれこれ25年前のこと。「おはよう」や「こんにちは」を意味するこの「ボンジョルノ」という言葉が曲者で、分解すると「ボン」(良い)、「ジョルノ」…

エドアルド・レオ特集上映 字幕翻訳者が語る『黄金の一味』

私、セサミあゆみは今回、「黄金の一味」の字幕制作を担当しました。 この作品には、イタリアの事情を知らないと少しわかりにくいだろうな、というところがいくつか。語りすぎて野暮にならなければいいのだけれど、知っていると映画をより楽しめるだろうイタ…

エドアルド・レオ特集上映より 監督としてのレオ

子どものころは俳優をするなんて、一度も考えたことがなかった。 この一文から始まるエドアルド・レオのホームページのバイオグラフィが面白い。キューブリックにはまって、履歴書に嘘のキャリアを書き、イエローページでみつけた芸能事務所に送り付けると、…

エドアルド・レオ特集上映より 『わしら中年犯罪団』サウンドトラック

「ジローラモに騙されるな」と声を大にして言いたい。スーツに高級腕時計でキメて、口を開けば女の子の話……。そんなステレオタイプなイタリアのちょいワルおやじ像を打ち壊すべきではないか。そんな思いから、現地イタリアのちょいワルおやじの生態を紹介す…

エドアルド・レオ特集上映より 『わしら中年犯罪団』解説

「マリアーナ団にぞっこんさ」 このセリフから始まる予告編からもわかるとおり、主人公モレーノもぞっこんになる実在の犯罪組織マリアーナ団が、本作の大きなテーマです。今回は作中、ましてや字幕だけでは語り切れないマリアーナ団の魅力に迫りたいと思いま…

エドアルド・レオ特集上映より 『黄金の一味』俳優紹介

先日『黄金の一味』(Gli uomini d’oro)をなら国際映画祭にてプレミアム上映させていただきました。おかげで大盛況のうちに上映を終えることができました。難しい状況下でご来場いただいた皆様、改めてありがとうございました! そして本作は10月にアップリン…

エドアルド・レオ特集上映より 『黄金の一味』解説 

どうも僕です。ハムエッグ大輔です。恥ずかしながらドーナッツクラブに戻ってまいりました。ここ数年は個人で活動してたのですが、この度エドアルド・レオ特集上映実現のために、再びドーナッツクラブと手を組むことになった次第です。今日から数回にわたっ…

開催宣言! エドアルド・レオ特集上映 〜イタリア娯楽映画の進行形〜

どうも、僕です。野村雅夫です。 この秋、結成15周年の京都ドーナッツクラブは、「エドアルド・レオ特集上映 〜イタリア娯楽映画の進行形〜」という映画イベントを開催します。 10月16日(金)〜25日(日)アップリンク吉祥寺 10月23日(金)〜29日(木)ア…

『シチリアーノ 裏切りの美学』待望のベロッキオ最新作公開!

60年代から活躍するイタリア映画界の巨匠マルコ・ベロッキオの新作『シチリアーノ 裏切りの美学』が日本で観られる! 僕はすぐさま宣伝の担当者に掛け合って、ポスターを取り寄せ、事務所のチルコロ京都に掲示した。この密な構成。意味深な花びらの配置。ゾ…

『デッド・ドント・ダイ』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 6月16日放送分 映画『デッド・ドント・ダイ』短評のDJ'sカット版です。 (C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved. 警察官が3人しかいないアメリカの田舎町、センターヴィル。署…

『コロナの時代の僕ら』訳者インタビュー

どうも、僕です。野村雅夫です。新型コロナウイルスの感染があれよあれよと拡大した、僕の生まれた国イタリア。毎朝のFM COCOLO CIAO765で紹介できそうな記事を日本の各紙でチェックしつつ、イタリアのメディアの報道や、あちらの友人や親戚がSNSで発信する…

映画『盗まれたカラヴァッジョ』レビュー

どうも、僕です。野村雅夫です。東京では1月に公開が始まり、シネ・リーブル梅田では3月20日、京都シネマでは3月21日、少し遅れてシネ・リーブル神戸では4月3日に上映の始まるイタリア映画『盗まれたカラヴァッジョ』。『ローマに消えた男』や『修道士は沈黙…

小説『靴ひも』レビュー

イタリアの小説で日本語訳が出たものは、その存在を知りうる限り、理解の及ぶ限り、漏らさず読みたい。ずっとそう思って本屋パトロールはしつつも、なかなか読書にあてる時間が確保しきれず、書斎デスク脇の積ん読タワーはうず高くなるばかり。ただ、僕の誕…

アイザックソンの『レオナルド・ダ・ヴィンチ』レビュー

どうも、僕です。野村雅夫です。 世界で最も名を知られたイタリアの人物(だろう)レオナルド・ダ・ヴィンチ。今年は没後500年にあたり、日本でもたくさんの関連本が刊行されましたが、その中でも最高峰との呼び声高いウォルター・アイザックソンのものが、…