京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

二宮大輔(ハムエッグ大輔)

パオロ・タヴィアーニ『遺灰は語る』レビュー

タヴィアーニ兄弟の弟パオロ・タヴィアーニが監督を務めた映画『遺灰は語る』が日本で公開される。兄ヴィットリオが2018年に亡くなり、弟パオロが一人で撮影した初めての映画だ。もともとのタイトルは”Leonora addio”といい、日本語にするなら「さらば、レオ…

モルタッチは魔法のことば

「ブオニッシモ」という言葉を耳にしたことはないだろうか。「美味しい」を意味する「ブオーノ」の語尾が変化したもので、協調の意味が加わり「めちゃくちゃ美味しい」となる。イタリア語で書くと”buono”の語尾の“o”の部分が”issimo”に変わって”buonissimo”…

エドアルド・レオ特集上映 字幕翻訳者が語る『わしら中年犯罪団』

最近は観光ガイドの仕事がなくて、YouTubeばかり見ている。いままで見てこなかった総合格闘家のYouTubeチャンネルなどを見ている。これが面白い。めちゃくちゃ面白い。いろんな切り口で面白さを語ることができるのだが、何より格闘技が語学に通じているとこ…

エドアルド・レオ特集上映より 『俺たちとジュリア』解説

短い短いストローのささった熱い熱いコカコーラ。 これがなにかというと、トスカーナ方言の特徴を紹介するときのおもしろフレーズだ。イタリア語で書くと、La coca cola calda calda con la cannuccia corta corta.となる。前回のカタカナ表記のジレンマをい…

エドアルド・レオ特集上映より 『ブォンジョルノ、パパ。』邦題について

「スッチャーデスさんボンジョルノ」とオザケンが早口で朗読したダースのテレビCMが流れていたのは、もうかれこれ25年前のこと。「おはよう」や「こんにちは」を意味するこの「ボンジョルノ」という言葉が曲者で、分解すると「ボン」(良い)、「ジョルノ」…

エドアルド・レオ特集上映より 監督としてのレオ

子どものころは俳優をするなんて、一度も考えたことがなかった。 この一文から始まるエドアルド・レオのホームページのバイオグラフィが面白い。キューブリックにはまって、履歴書に嘘のキャリアを書き、イエローページでみつけた芸能事務所に送り付けると、…

エドアルド・レオ特集上映より 『わしら中年犯罪団』サウンドトラック

「ジローラモに騙されるな」と声を大にして言いたい。スーツに高級腕時計でキメて、口を開けば女の子の話……。そんなステレオタイプなイタリアのちょいワルおやじ像を打ち壊すべきではないか。そんな思いから、現地イタリアのちょいワルおやじの生態を紹介す…

エドアルド・レオ特集上映より 『わしら中年犯罪団』解説

「マリアーナ団にぞっこんさ」 このセリフから始まる予告編からもわかるとおり、主人公モレーノもぞっこんになる実在の犯罪組織マリアーナ団が、本作の大きなテーマです。今回は作中、ましてや字幕だけでは語り切れないマリアーナ団の魅力に迫りたいと思いま…

エドアルド・レオ特集上映より 『黄金の一味』俳優紹介

先日『黄金の一味』(Gli uomini d’oro)をなら国際映画祭にてプレミアム上映させていただきました。おかげで大盛況のうちに上映を終えることができました。難しい状況下でご来場いただいた皆様、改めてありがとうございました! そして本作は10月にアップリン…

エドアルド・レオ特集上映より 『黄金の一味』解説 

どうも僕です。ハムエッグ大輔です。恥ずかしながらドーナッツクラブに戻ってまいりました。ここ数年は個人で活動してたのですが、この度エドアルド・レオ特集上映実現のために、再びドーナッツクラブと手を組むことになった次第です。今日から数回にわたっ…

「バルゼッレッテ」でイタリアを楽しもう!

「バルゼッレッテ」でイタリアを楽しもう! 3月19日開催、京都ドーナッツクラブ主催イベントのお知らせです。 バルゼッレッテ(バルゼッレッタ)とは、イタリアのジョーク、笑い話のこと。バルゼッレッテを通してイタリアを見れば、イタリアの流行、文化、ユ…

11月9日 西尾孔志監督トークショー@第七藝術劇場

レイトショーの後ということで、少し遅めに始まったトークショー。この日上映された2本の映画、『フィルムがない!』(Il caricatore, 1996)と『ただ彼女と眠りたかっただけなのに』(Volevo solo dormirle addosso, 2004)を鑑賞された西尾孔志監督が、ドーナ…

フェリーニの遺言

先日、映画を観て衝撃を受けた。その映画というのは『ファントッツィ、皆と対立』(Fantozzi contro tutti, 1980)だ。パオロ・ヴィラッジョ演じるファントッツィといえば、イタリアで知らない人はいないコミック映画の主人公。1968年にテレビドラマとして人気…

伊田広行さんを迎えてのトークショー『陽気なイタリア社会の困難な現状』

さる9月14日、元・立誠小学校特設シアターで、ドーナッツクラブ配給の映画を上映後、チルコロ京都でトークショーを実施しました。その日上映された『ただ彼女と眠りたかっただけなのに』は、主人公の青年が、人件費削減のため、同じ会社で働く社員の中から25…

マッシモ・ガウディオーゾの青春時代

『フィルムがない!』(Il caricatore, 1996)は、少ない資金でなんとか映画を撮影しようと奮闘する三人の若者を描いたコメディー映画である。若者たちのうちの一人が、現在テレビや映画で活躍する監督エウジェニオ・カプッチョなのだが、実は残りの二人も、イ…

愛嬌でモテる色男ヴォーロ

ファビオ・ヴォーロことファビオ・ボネッティは、まだ小学生だった頃、ある映画が大好きだった。アルベルト・ソルディ監督作品の『私が知っていることを君が知っていると私は知っている』(Io so che tu sai che io so, 1982, 日本未公開)。自分と同姓同名の…

童話のクマのやさしさ

古今東西、童話に出てくるクマは、どれも共通の特徴を持っている。それというのは、ライオンやオオカミに引けを取らない猛獣のはずなのに、どこかかわいくて、やさしさまでも感じるというところ。例えばイギリスの童話『三びきのくま』。留守中のクマの家に…

Top Italian Wines Road Show

イタリア版のミシュランと称されるガンベロ・ロッソ。「赤いエビ」という意味で、由来は童話『ピノッキオの冒険』に出てきた酒場のこと。もともとはイタリア国内のレストランを格付けする雑誌だったのですが、現在は料理教室やテレビ番組の制作など、食に関…

私が愛したローマ

ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)が初めて監督を務めた映画『アッカットーネ』(Accattone, 1961)の中に、主人公のアッカットーネとその友人たちがたむろするバールが出てくる。それが現在改装され、バール・ネッチというレストランにな…

イタリア犯罪白書

ローマの和食店でアルバイトをしていたころ、犯罪事件に立ち会うことがあった。ある夜、売上金を入れたイタリア人オーナーの鞄が盗まれたのだ。 防犯カメラに映っていた犯人をにらむオーナー。反射的に警察に通報することを考えた私は、続くオーナーの言葉に…

図書館は町を知るチャンス

ローマを知りたいなら図書館に行くべし、という自説を私は唱えている。これは、資料を求めて足しげく図書館に通った実体験に基づくものだ。ローマ市内にはさまざまな図書館があるのだが、ここで言及したいのは市立図書館のこと。市内を分ける19の行政区ごと…

色に隠された物語

イタリア語で「一文無し」を意味する「緑になる」(essere al verde)という慣用句。これは17世紀、競売で用いられていたろうそくの根元が、緑色に塗られていたことに由来する。ろうそくが溶けて緑色の部分にまで達したら、競売は終了。合図の代わりにろうそく…

風刺漫画に見るベルルスコーニ時代の終わり

「これからはベルルスコーニが恋しくなるだろう」。昨年末、英国タイムズ(Times)紙で活躍する風刺漫画家ピーター・ブルックス(Peter Brooks)は、「2011年を振り返って」というテーマの記事でそう発言した。風刺漫画家は相手が憎ければ憎いほど腕が振るう。イ…

アントニオ・ペンナッキ『ムッソリーニ水路』

『ムッソリーニ水路』(Canale Mussolini、Mondadori、2010)という小説で、アントニオ・ペンナッキ(Antonio Pennacchi)が今年のストレーガ賞を獲得した。 ペンナッキ(画像下)は1950年、ローマ近郊のラティーノ(Latino)という町で生まれる。50歳まで工…

翻訳とは何か?

翻訳とは「同じことを他の言語で言うこと」だそうだ。そう言われてみると、翻訳という作業は言葉に特化したものに思えてくるが、例えば、前回扱った小説を映画化するというようなことだって、言ってみれば文字で書かれた内容を映像に翻訳しているわけである…

映画をつくる

映画と小説が強く結びつくようになったのはいつごろのことだろうか。小説を原作として映画がつくられるという関係だけにはとどまらず、脚本家が、小説を書いたり、小説家が脚本を書いたり、小説家が映画監督をしたり、映画監督が小説を書いたりしている。実…

iPadとさるぐつわの法律

iPadが世界9カ国で同時発売され、日本でも長蛇の列ができたそうですが、ここイタリアでもその人気はすごくて、すでに10万台の予約が入っているのだとか。大手新聞社、レプッブリカ紙(la Repubblica)、コッリエーレ・デッラ・セーラ紙(Corriere della Ser…

おとぎ話の王子さまはゲイ

知り合いのグラッツィエッラが監督、主演を務めるコメディー『おとぎ話の王子さまはゲイ(訳は筆者)』(Il principe azzurro è gay) を鑑賞しました。学生街サン・ロレンツォにあるアッロ・スカーロ劇場(Teatro allo scalo) は、路面電車の線路に隣接されて…

イタリアのバンド、ゼフィロ(Zephiro)日本上陸

イタリアのインディーズ・ロックバンドZephiroが4月初めから3ヶ月の間日本に滞在してライブ活動を行う。東京を中心に3日に1回はライブをする計算だから、かなりハードなものだ。Zephiroはイタリア語で「春風」とか「そよ風」という意味で、「ゼフィーロ…

ファブリツィオ・デ・アンドレ広場

住んでいるアパートから徒歩5分のところに、ファブリツィオ・デ・アンドレ広場という名前の場所がある。広場というよりは、団地にはさまれた簡素な公園という趣なのだが、その名前は同名の歌手に由来する。ファブリツィオ・デ・アンドレ(Fabrizio de Andrè)…