京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『まっくろくろの おばけちゃんの ぼうけん』 デヴィッド・カリ〜

まっくろくろの島に住む、まっくろくろのおばけちゃんは写真を撮るのが大好き。 でも、なんでもかんでもまっくろくろの島では写真もまっくろくろ。 キレイな写真が撮れる島に行きたい! 相棒のまっくろくろコウモリさんと一緒に船に乗って、さぁ冒険です。 …

どちらのPRよ!?

どうも、僕です。近所の美容院が店の前に出している黒板に「この残暑、なんざんしょ!」と書かれているのを目にして以降、一気に気温が下がって秋らしくなった気がします。昨日の京都音楽博覧会で、いわゆる夏フェスもすべて幕を下ろした感じ。くるりのアン…

おススメの本 『アルトゥーロの島』 エルサ・モランテ著 2010/09/20

ナポリの海に浮かぶ、火山活動によってできた観光客もほとんど訪れない小さな島。島を出て放浪する父の帰りを待ちながら、自らを産み落としたときに亡くなった母を星座のなかの女王のように憧れ、ひとり気ままに、美しい自然のなか、少年時代の王国を小さな…

アントニオ・ペンナッキ『ムッソリーニ水路』

『ムッソリーニ水路』(Canale Mussolini、Mondadori、2010)という小説で、アントニオ・ペンナッキ(Antonio Pennacchi)が今年のストレーガ賞を獲得した。 ペンナッキ(画像下)は1950年、ローマ近郊のラティーノ(Latino)という町で生まれる。50歳まで工…

『さようなら ぼくの こりす』 フルビオ・テスタ〜

作・絵:フルビオ・テスタ / 文:神沢利子 きこりが森から持ち帰った子リス。 きこりから息子へのかわいいおみやげです。 少年と子リスはすぐに仲良くなりました。何をするにも一緒。 ある日、少年と子リスは森へでかけます。 生まれた場所へやってきた子リ…

精神医療にもっと頓着しよう     (旧ウェブサイトコラム『ローマから遠く離れて』)

イタリアの高名な精神科医に、フランコ・バザーリア(Franco Basaglia)という人がいた。精神医療など門外漢もいいところの僕でもその名前と功績を知っているのは、マルコ・トゥッリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)監督の『輝ける青春』(La megl…

おススメの本 『モンテ・フェルモの丘』 ナタリア・ギンズブルグ著

最近の楽しみの一つに、河出書房新社からここ数年来をかけて刊行されている世界文学全集があります。作家の池澤夏樹さんが個人編集で選んだ20世紀後半の作品群が、ポップなカラーの背表紙で本屋に並んでいます。従来の古典作品を排したこの新しい世界文学全…

『きりのなかのサーカス』ブルーノ・ムナーリ〜

霧が立ち込めるミラノ。ぼんやりとした街をぬけて向かう先は…。霧煙る街と色とりどり楽しいサーカスという幻想的な世界を描いた作品。素材と、本というメディアの特徴を最大限に活かして表現された視覚的にも楽しい絵本です。 イタリアの絵本といえば日本で…

映画をつくる

映画と小説が強く結びつくようになったのはいつごろのことだろうか。小説を原作として映画がつくられるという関係だけにはとどまらず、脚本家が、小説を書いたり、小説家が脚本を書いたり、小説家が映画監督をしたり、映画監督が小説を書いたりしている。実…

おススメの本 『月とかがり火』 チェーザレ・パヴェーゼ著 

私生児として育った主人公が、貧しい養い親の元を離れ青年となり、海を渡り、世界中を次々と逃げ出すように放浪した後、財をなして育った村に帰ってきたところからこの小説は始まります。夏の休暇が終ればやがて都会の喧騒に帰っていかなければならない主人…

おススメの本 『思いではそれだけで愛おしい』 ダーチャ・マライーニ著

この作品は、劇作家である五十代の女性ヴェーラが、歳の離れた若い恋人の六歳の姪である少女フラヴィアに書き続けた十六通の手紙からなっています。読み始め、まるで他人の恋文か秘密の交換日記を読んでいるような気恥ずかしい気持ちが溢れてきます。それほ…

イタリアブックフェアでのトークショー@イタリア文化会館 東京

どうも、僕です。明日は東京へ行ってきます。久しぶりのおのぼりさん。僕は関西人らしく何かにつけて東京を好ましく思っていないので(特に理由はありません)、あの魔都に遊びに行くなんてことはまずないのだけれど、いくら仕事とはいえ、新幹線に乗って移…

おススメの本 『なぜ古典を読むのか』 イタロ・カルヴィーノ著 

――― 今日比較研究をやっていく場合に一番重要な課題は何かというと、文化は普通そうは考えられていないけれども、危機、クライシスに直面する技術であるということね。――― 文化人類学者の山口昌男氏のこの言葉は、作家の大江健三郎さんが、定期的に朝日新聞…

第15回日本絵本賞 読者賞を受賞して

“水おとこ”との出会いは、私にとって偶然、運命的としかいいようのないものでした。 翻訳コンクールの課題図書として私の手元にやってきた“水おとこ”は静かに私を潤 し、幸運の泉をもたらしてくれたのかもしれません。 コンクールで賞をいただいたうえに出版…

おススメの本 『木のぼり男爵』 イタロ・カルヴィーノ著

多彩な作風で知られるイタリアの国民的作家であるイタロ・カルヴィーノの作品は日本でも多数翻訳されているが、今回紹介するのはこれ。 「われわれの祖先」と題された三部作のうちの一つである。 1767年、12歳のある日、家族に反逆して樹上生活を始める男爵…

物差しでは測れない心と心の距離 〜素数たちの孤独〜      (旧ウェブサイトコラム『ローマから遠く離れて』)

2008年のイタリア文学界は、ストレーガ賞を受賞した『素数たちの孤独』(La solitudine dei numeri primi、パオロ・ジョルダーノ<Paolo Giordano>、飯田亮介訳、早川書房、2009年)の話題でもちきりだった。ひとつの現象と言ってもいいくらい。2年たった…

人種差別戦線イタリア

2010年、年明け早々、カラブリア州の小都市、ロサルノでアフリカ系黒人労働者たちが、不当な労働条件を訴えて暴動を起こした。暴動自体は2日間で収まったが、事件の波紋はそれ以降も収まる様子がない。すぐさま各メディアから激しい批判を喰らったロサルノ…

おススメの本『タタール人の砂漠』 ティーノ・ブッツァーティ著

北の砂漠からいつ来るとも知れぬタタール人の襲来に備えて存在し続ける辺境の砦。 すべての色彩を失ってしまったかのようなその要塞で、三十余年を過ごし、やがて死を迎える男の物語。 軍人として栄光を望むこころと、何も起こらないまま一生が終るのではな…

学芸カフェ、スタート!

どうも、僕です。もう長年(といってもいいでしょうね)担当させていただいている学芸出版社のウェブサイト上コラム連載。2010年もお話をいただきまして、先日、初回が無事にアップされました。企画は今年もスタジオOJMM(設計・研究・翻訳)さんです。…

悪人とガツン!

どうも、僕です。先日誕生日を迎えて31歳になり、いよいよ20代と完全に切り離されたような気がして、風貌と内面のみならず、これからは年齢と内面のギャップにも苦しんでいかざるを得ないのではなかろうかと難しい顔をして友人に語ってみたところ、「そうか…

モスキート・メトロ

どうも、僕です。かなりご無沙汰してしまいました。京都姉妹都市映画祭で上映したイタリア人映画監督シルヴァーノ・アゴスティの紹介やら字幕やら準備やらに大わらわ、さらには今月末に発売する同じくアゴスティ小説第二弾の訳校正に追われ(また改めて告知…

自分の居場所 『水おとこのいるところ』

『水おとこのいるところ』 (L'uomo d'acqua e la sua fontana、2008) イーヴォ・ロザーティ著 ガブリエル・パチェコ絵 ひらいたままの蛇口から生まれた、水おとこ。 そんな水おとこに対して人々は、騒ぎ立て、捕らえようと追い回し・・・。 異世界に生れ落ち…

イタリアの絵本『水おとこのいるところ』オンセール!!

どうも、僕です。今月半ばくらいでしたかね、ブログの翻訳紹介コーナーに新しい仲間が加わるようになったんですけど、皆さん気づいてました?よく見ると、「MASAOの翻訳」だったものが、「MASAOと大阪ドーナッツクラブの翻訳」ってなってますよね。このたび…

シンクロニシティー

どうも、僕です。前にも書いたように、今月から専門学校での授業を担当している。もう結構長い間やっている講座なので、自然と足が学校へ向く。水曜日、授業を終えてから、僕はもうひとつの専門学校へ足を運んだ。専門学校のはしごなんて、なかなかしない。…

「豆腐でカプレーゼ」と「さわらのサワークリーム」

どうも、僕です。先週末は久しぶりに夜のクラブ活動ということで、木屋町のコラージュで、α-STATIONの関係者でごった返す“buggin' out”に行ってきました。プロデューサーのFさんやスタッフの皆さんには、いろいろとごちそうになり、DJのポールさんやリス…

イタリア・ジャーナリズムの現在・過去・未来 その2

4月某日、今度はアウディトリウムで行われた“Le grandi lezioni di giornalismo(ジャーナリズムの大いなるレッスン)”に参加する。月に1回、著名なメディア関係者が壇上で講演をするというイベントで、最終回の今回は大手新聞社『テンポ』(il Tempo)編…

イタリア・ジャーナリズムの現在・過去・未来 その1

マルコ・リーズィ(Marco Risi)の映画『フォルタパスク』(Fortapa`sc、2009年)を鑑賞する。1985年ナポリの犯罪組織カモッラに暗殺された若きジャーナリストの話だ。主人公ジャンカルロ・シアーニ(Giancarlo Siani)が作中でメモ帳に走り書きをする。カシ…

KAO展、見参!

どうも、僕です。先日、仕事の息抜きにと、お昼に出町デルタでコロッケをパクつきながら、うららかな春爛漫の陽気の下で花見と洒落こんでいたところ、しめの一口を鷲だか鷹だか鳶(とんび)だかに持っていかれました。泣くに泣けませんでした。背後から突然…

コッリエーレ・デイ・ピッコリ展

現在ミラノでコッリエーレ・デイ・ピッコリ(Corriere dei piccoli)展が行われている。コッリエーレ・デイ・ピッコリとはイタリア最大の売り上げを誇るコッリエーレ・デッラ・セーラ(Corriere della sera)の増刊として週1回、1908年から1995年まで刊行さ…

フロストにぞっこんラブ

どうも、僕です。昨日の夜、ベッドで悲しい出来事がありました。といっても、別に女性に絡んだ話ではありません。ここしばらく読みふけっていたフロストシリーズの最新訳を読了してしまったのです。その何が悲しいんだとおっしゃる向きもあるかもしれません…