京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

そんなばかの壁 (旧ウェブサイトコラム『小噺パラダイス』)

どうも、有北です。
知ったかぶりというのは怖いものです。魔です。魔が住みます。テロや選挙違反などと同じくやってはいけないことのひとつです。たしかにわからない話題などになったとき、まわりについていけないのはくやしいし、せつないものです。つい知らないくせにわかってるような顔をしたり、うなずいたり、隣に合わせて笑ったりしてしまいがちです。それこそが魔です。魔の巣窟です。わからないときは、きょとんとしていればいいんです。ばかになればいいんです。「わかりません」素直にこう口にしたまえ。へたなプライドは身を滅ぼす。わからないときはわからないでいいんです。なんなら一人称もばかっぽくすればいい。「ぼくちん、わかりません」これで十分です。語尾にもこだわりなさい。「ぼくちん、わかりましぇん」。いくところまでいっちゃいなさい。「ぼくちん、わかりまジェンヌ」完璧です。わからないことを端的に表現したいとき、きょとんとした顔でこう口にしてみたまえ。きっと、相手もきょとんとする。それでいいんです。「きょとん」の連鎖。「きょとん」が織り成すコミュニティ。「きょミュニティ」。きょミュニティの住人は、選挙違反などとは無縁です。彼らが当選すればクリーンな政治が約束されます。ビバ!きょミュニティ!ですがここで問題なのは、きょとんとしたやつは決して選挙に出馬しないってことです。こうして政治は汚れゆくってわけですか。

知り合いに中国語が詳しいとのたまう男がいて、へえそうなんだとはじめは思っていましたが、どうも素振りがあやしい。ちょっとしゃべってみてくれよ、と頼むと、彼はやけに堂々と、「アイヤー」と言いました。

「・・他には?」
「アイヤー」
「・・それだけ?」
「アイヤー」

こっちがアイヤーだよ。ていうか言葉かそれは?叫びだろう。本気でそれだけかと聞くと、本気でそれだけでした。ひどいよこれは。モウマンタイよりひどい。もっとあるだろう。ヤムチャとか。せめてニーハオくらいはひねりだせよ。最悪、「マーボー豆腐」とか「リーチ一発」とかでも、ハーフ中国語として認めてやらんでもないよ。ていうかなんできみはそんなに堂々としてるんだよ。こんなときこそきょとんとしろよ。