京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

焼酎バーにて 5 最終章〜しばしの別れ〜 (旧ウェブサイトコラム『小噺パラダイス』)

どうも、有北です。
たまたま入った焼酎バーで、謎の男に出くわした僕です。
男がなにも注文していないにもかかわらず、おばちゃんはなにかの焼酎をグラスになみなみと注ぎ、男の前に置いた。いかにも手馴れたようす。いつものことという感じだ。なんだきみたち。なんか、あれか、そういう関係か。それにしては、男のほう、だいぶ若くないか。問い詰めたい。問い詰めたいが、そんな勇気は僕にはない。
なんとかふたりの会話から情報をゲットしたい。
そう思ってふたりの会話をなんとか拾おうとしたのだが、案の定たいしたことは言わない。唯一聞こえてきたのは、「俺、今日、車なんだよ。」という男の声。車か。そうか、車か。そうこうしているうちに彼は店を出て行った。彼が店にいたのは、正直10分くらいではなかったか。グラスは空になっていた。
店の前でエンジン音がして、車は遠ざかっていく。豪傑。なみならぬ豪傑だ。僕は心の中でひそかに彼に豪傑の勲章を与え、もう好奇心を抑えきれず、意を決して厨房のおばちゃんに尋ねる。
「あのう、失礼ですけど、さっきの豪傑とはどういうお知り合いで・・?」
そのとき豚キムチを炒めていたフライパンが激しく火を吹いた。「あつっ。あつっ。」厨房から、声。僕の問いかけは彼女の耳には届いていないようだった。
できあがった豚キムチを食べながら、僕はおばちゃんととりとめもない世間話をした。結局豪傑の正体はわからずじまいだったが、おばちゃんが3年前ソムリエの試験に落ちたというどうでもいい情報だけはゲットした。いらん、そんな情報。あと、おばちゃんの好意により全品10%割引券もゲットした。焼酎ダイニング、また来よう。