京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

パンチ!パンチ!パンチ! 4 〜電話〜 (旧ウェブサイトコラム『小噺パラダイス』)

どうも、有北です。
思いもよらない誘いだった。正直、葛藤があった。先程自分の貧しさにひとしきり打ちひしがれたばかりなのだ。自分の住まいの年間の家賃が、友人の家のドアの値段にイコールであることに、涙を禁じえなかったばかりなのだ。貧乏はいやだ!大声で叫びたいくらいなのだ。そんな自分が貧乏人たちの祭典に出るなどと。勝っても負けてもみじめではないか。葛藤があった。ためらいがあった。しかし、同時にこんな思いもあった。「どうせ貧乏なんだから、ただ貧乏なのはいやだ。貧乏を武器に、賞金を手にしてやる。」そう思った僕は、「やるよ!」N君に返事していた。いい声だったと思う。決意すらみなぎっていたと思う。たしかにこの決断に至るまでに僕はおおいに葛藤したわけだが、その葛藤は凝縮され、非常に濃密な葛藤となっていた。僕はくだらん打算にはとてもよく頭が回るのだ。通常の人間なら10時間は必要とする葛藤を、僕なら必要とあれば10秒でこなす。このときがまさにそうだった。N君の耳にはほぼ即答だったに違いない。僕の脳内に大いなる葛藤があったことなど思いもよるまい。「じゃあ、プロデューサーさんに有北さんの連絡先教えておきますよ。」そう言ってN君は去っていった。そしてはたしてその夜、プロデューサー氏から電話がかかってくるのである。僕は電話をとる。「もしもし・・」