どうも、有北です。
そう、その夜、まさにひとつの電話が僕にかかってきたのです。
電話の向こうはプロデューサー氏だった。僕は参加者が少なくて困っているという話を聞いていたので、てっきりふたつ返事でOKなのかと思っていたが、意外とそうではなかった。彼は、僕の貧乏の度合いについてかなり綿密に質問してきた。曰く、
「きみの貧乏のアピール・ポイントはなに?」
貧乏のアピールポイント?
そんな概念はじめて聞いたよ。まあ言ってることはわかる。やはりテレビなので、インパクトの強い貧乏が欲しいらしいのだ。3日間卵の殻食ってるとか、他人の家のガレージに勝手に住んでるとか。だけど僕はそこまでじゃない。インパクトとか、そんなことを突然言われても困るのだ。こっちはなにも準備してないんだから。戸惑う僕に彼はさらに聞いてきた。
「貧乏を克服するために、なにか工夫していることとか、ある?」
はっきり言って、ない。あのときの僕は貧乏に翻弄されているだけの能無しだった。貧乏のなすがままだった。貧乏を克服するだなんて、そんな大それた思いはなかった。せいぜいが食費を節約するくらい。しかし、彼は僕に期待している。なんだかんだ言っても彼も困っているのだ。ひとりでも多くのインパクトのある貧乏を発掘し、いい番組を作らなければならない。
そのときだった。
追い詰められた僕の脳に、ひとつのアイディアが降臨した。そうだ、あれならいけるかもしれない。僕は彼に、ひとつの提案をした・・