京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

同じ月を見ている 5 最終章 〜玉の輿〜 (旧ウェブサイトコラム『小噺パラダイス』)

どうも、有北です。
はたしてその新聞に載っていたのは、宇宙開発の記事でした。宇宙旅行はもう完全に現実のものになりつつあるみたいです。例えばホリエモン宇宙旅行ビジネス「JAPAN SPACE DREAM」。ホリエモン曰く、「今回のプロジェクトはぼくの夢の実現です」。夢は叶えるものだとはよく言ったものです。

翌日のこと。
同僚のコマザワさん(仮名)が、宇宙旅行がしたいと言い出しました。彼女はいつもこういう爆弾発言で僕を戸惑わせるのです。まったく、いくらかかると思ってるんだい? ホリエモンならともかく、我々のような小市民にはどだい無理な話だよ。やさしく諭す僕に、彼女は強く反論してきます。
「おまえ、頭が悪いわね…。なにも自分の財力で行こうなんて思っちゃいないわよ。要するに、私に金がなくても、旦那が金持ちなら問題ないでしょ?」
「まさか」
「そう、玉の輿よ。ふふ…」
「だけど、宇宙旅行って。よっぽどの玉の輿じゃないと、無理だよ。そんな男と知り合う可能性なんて…」
「なに言ってるの?」
彼女は僕の言葉を遮るように言いました。
「夢は、諦めたらそこで終わりよ」
なるほど、世の中にはいろんな夢がある。
僕の中にある「夢」の概念とあまりにかけはなれていたので、とっさにそれが夢だとは気づかなかったんだ。そうか、玉の輿という名の夢。夢という名の玉の輿。ああ、現実的な夢。だが現実にしてこそ夢。なんか、もう、わからん。

その日は残業で、会社を出るともうけっこう夜だった。月が出ている。そうか、行けるのか。あそこに行けるのか。そう思って見ると、子どもの頃に見た月とは違って見えた。きっと同じ月を見ている。だが、あの頃の僕は夢を見ていた。今の僕は現実を見ている。コマザワさんは現実的な夢を見ている。それだけの違いだ。たぶん、それだけの違いだ。