京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

仕組まれた進入前夜 〜返せ私の青写真〜

チネチッタ・スタジオの敷地内に映画を学ぶ学校がある。
ポンデ雅夫はどこからかそんな情報を仕入れてきた。
2005年春のことである。
私はてっきり彼が入学するもんだと思っていたので、
焼き芋をほおばりながら適当に相槌を打っていた。
するとポンデは突如私に怒声を浴びせ、
態度がなっとらんと頬を紅潮させた。

何のことやらさっぱりわからないが、
しぶしぶ私は焼き芋をいったん口から離すことにした。
話を聞いてやれば、彼の腹の虫もおさまるだろう。
そうすれば、私も落ち着いて焼き芋に専念できる。
ところが、事態はそう簡単ではなかった。
まるで宣伝マンであるかのように学校の意義を強調したポンデは、こう言い放ったのである。

「いいかい、こんなチャンスは君にとって二度と訪れないぞ。映画の聖地で映画を学べるんだ」

おののいた。
どうやら彼は私に通わせるつもりらしい。
意味がわからない。
映画を撮っているのは、むしろ彼ではないか。
私は一介の旅行会社員である。
ローマでも適当に旅行関係の職を得ようと目論んでいたのだし、
何よりポンデもその方向で納得していたはずだ。
その彼が何の前触れもなく意見を翻していたのだ。
私は彼に説明を求めようとしたのだけれど、
こんなときに限って焼き芋が喉につっかえている。
声が出ない私を尻目に、彼はこう続けた。

「君には編集コースがいいんじゃないかな…うん、そうしよう。手続きは僕がやっとくよ」

ポンデは一人満足して、部屋を出て行った。
私は声が出なかった。
今度は焼き芋のせいではない。
唖然としたからだ。

人の人生を何だと思っているのだ、彼は。

私も私なりにローマでの2年間について思いをめぐらせていたのだ。
青写真はできていたのだ。
それを…

次第に腹が立ってくる私。
言うべきことは言っておかねば。
決然と立ち上がり後を追おうとしたところへ、彼の方からやってきた。

「いやぁ、インターネットってすごいね。もう仮登録できちゃったよ。まぁ、がんばっていこうよ。僕もバックアップするからさ…もぐもぐ」

私はまたもや声が出なかった。
あろうことか、彼は私の焼き芋を電光石火で平らげてしまったのである。
何が、もぐもぐだ。
やっとのことで声を発した私は、ポンデに向かってこう叫んだ。

「こらぁ、私の焼き芋と青写真を返せ〜!!」

ポンデはぽかんとしていた。