京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

三度目の正直 〜その壱〜

待ちに待った土曜日がやってきた。
思えば、これで3度目の挑戦だ。
2度あることは3度あるという恐ろしい言葉もあるけれど、3度目の正直というありがたい言葉もある。
結局はどうなるかわからないということなのだけど、やれるだけやってみようと私は気持ちを新たにした。
今日という今日は、何としてもスタジオに足を踏み入れたい。

しかし考えてみると、今日の私は今までの私ではない。
何といっても、予約があるのだ。
「予約」という言葉を
こんなにも頼もしく思ったのは初めてだった。
それもそのはず。
今まで私が経験した予約といえば、歯医者ぐらいのものだった。
ところが、その日はチネチッタの予約なのである。
そんじょそこらの予約ではない。

自信と誇りを持って、門番のもとに近寄ってみた。
私は胸を張りつつも、その割にはたどたどしいイタリア語で、「NUCTの事務所に行きたいんです。面接があるんです」
と伝える。

警備員は大きくうなずくと、「詰所に行って、カードをもらっておいで」と言ってくれた。
この門番はその日もやはりイカシていた。
最高だった。やさしかった。

詰所で用件を伝えると、
「OK。じゃぁ、身分を証明するものを出して」と言われた。
予想だにしない一言に、私は虚を衝かれてしまった。

ミブンショウメイショ?

あまりに驚いた私は、
即座に漢字に変換することすらできなかった。

こいつは何を言っているんだ?
疑問をありのままにぶつけたかったのだけれど、残念ながら私の語学力ではその思いはかなわなかった。

脳を瞬時にフル回転させてやっと出てきた言葉は、
「なんで?」だった。
自分の非力が悲しすぎた。

しかし、悲嘆にくれる暇もなく、詰所の人はこう説明してくれた。

「ここは、警備が厳重なんだよ。たくさんの映画人が出入りする大切な場所だからね。だから、関係者以外は、運転免許証なんかを預けてもらわないと、入ってもらうことができないんだ」

なるほど。
ごもっとも、かつ結構な話だ。
私は財布から免許証を抜き取って、素直に提示した。
彼はそれを見て、ぽかんとしていた。

はは〜ん、こやつ、ゴールドカードというものを目にしたことがないのだな?

私は光り輝く自分の免許証に鼻が高くなり、
この無知なおっさんにその凄さを説いてやろうと試みた。
ところがである。
例によってイタリア語がそんな私の試みを阻んでくる。
ぐずぐずしていると、彼が素朴な質問をしてきた。

「これ、何?」

この発言には驚いた。
免許証を出せというから、免許証を出しているのではないか。
それなのに、この男ときたら、
私をからかっているのではないかしらといぶかしんでいると、
「日本の免許証なんて出されてもね、君、こちとら読めないぜ」

あぁ、何という失態。

考えてみれば、当たり前ではないか。
イタリアで日本の免許を出して何になるというのだ?
恥ずかしくて顔から火が出そうになったので、必死にほっぺたを手扇で冷やしつつ、私はさりげなく免許証を取り返した。

続きます。