どうも、僕です。
崑先生は、やはりただならぬお人でした。
12日の土曜日、αステーションも後援していた「市川崑監督お別れ上映会」に参加してきたのです。
座談会では、木枯し紋次郎の中村敦夫さんや、美術監督を多くの作品でお務めになった西岡善信さんといった方々のお話も興味深く拝聴しましたが、わけても、長年にわたって編集に取り組まれた長田千鶴子さんの涙まじりの思い出話には、心打たれるものがありました。
崑先生は、亡くなる直前の病床でも「スタート!」と言い続けるほどに映画の制作現場を愛されたそうです。
そして同時に、無数の映画ファンに、崑先生のフィルムは愛されたのです。
そんなあまりにもナイーブなことしか頭に浮かんでこないほどに感慨に耽りつつ、上映開始です。
僕はまだまだ85本にも及ぶ崑先生のフィルモグラフィーの全貌を知る身ではありません。
むしろ、これから。
でも、そのことを今は喜んでもいます。
まだまだ楽しめる。
今回の上映では、僕は1962年の『破戒』をチョイスしました。
原作はもちろん、かの島崎藤村です。
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感動のラインナップです。
僕がこのフィルムの中でもっとも恐れ入ったのは、
三國演じる部落解放運動家の猪子蓮太郎が暗殺されるシーン。
朝。雪の積もった長屋の続く細道。
辺りはシンと静まり返っています。
猪子はひとり演説会場へと足を運んでいる。
と、そこへただならぬ気配を感じる猪子。
身の危険を感じて歩を早めるところへ、
彼の足よりもすばやく近づいてくる暗殺者…。
ここで僕の拙い言葉で説明するよりも、未見の方は映像を観てください。
緩と急、そして緩。
静と騒、そして静。
雪の上に広がる猪子の血。
その白と赤(このフィルムはモノクロですけどね)。
この綿密な美学に裏打ちされた暗殺描写ときたら、まるで西部劇を見ているような、あるいは時代劇を見ているような、そんな緊張感でした。
他にも印象に残った場面はいくつも指折り数えられます。
目を閉じれば、瞼の裏はスクリーンに早変わり。
崑先生の作品を鑑賞した後に頻発する現象です。
こうして僕は、またしても、崑先生の名演出に恐れ入ったわけです。
崑先生、僕はこれからも先生の作品で人生を豊かにしていくつもりでおります。
引き続き、よろしくお願いします。
では先生、そして皆さん、また非常に近い将来に。