京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

スーパーパートナーのラブホテル

どうも、僕です。

先日、SWINGIN’SUNDAY のディレクターから、「MASAO、このバンド知ってる?」と聞かれたのが発端でした。差し出されたのは、こんなアルバム。

Love Hotel

Love Hotel

全体がセピア調のジャケット内で、かわゆいブロンドの乙女が円形の鏡のようなものを抱えていて、その中には何ともうだつのあがらない雰囲気のイタリア人らしき男性が5名写り込んでいる。

「これ、もしかしてイタリアのバンドですか?」

僕が聞いてみると、ずばりその通りということだった。意外だったのは、このかわいこちゃんもメンバーだったこと。それよりも意外だったのは、彼らが12ある収録曲をすべて英語で歌っていること。

「かなりポップなギターサウンドなんだ。レトロ感満載で、メロディーがけっこう耳に残るよ」

ディレクターは続けます。なるほど、音を聴いてみると、カーディガンズを思わせるような雰囲気。力まないボーカルが男女入り混じって、60年代の良質なポップスを再現しています。さっそく聴いてみましょうか。

これは、アルバムのトップを飾る“Song for Sarah”で、イントロのコーラスから彼らの世界をドーンと提示してくれます。こんなバンドがいたなんて、僕はまったく知りませんでした。それもそのはず、彼らはこのアルバム“love hotel”がメジャーデビュー作なんですね。それまでは地元サレントのライブハウスで力を蓄えていたようなんですが、満を持して発表した本作が、いきなりヨーロッパ各国はおろか、トルコやここ日本でも発売されるなど、一気にスターダムを駆け上った新星なんだそうです。

せっかくなんで、もう1曲聴いてみましょうか。“Do you remember the hill?”です。

これは平成ではないですよね。どう考えても昭和の青春のあり方ですよ。自転車に二人乗りして丘へ向かい、お花畑の中で戯れる若いアベック。ここまで臆面もなくPVを制作してしまうところが、僕の気に入りました。彼らのデビューを報道するイタリアのテレビニュースを見たんですが、テーマはやはり「ノスタルジーそのもの」だとヴォーカルのロズィータが語ってましたよ。照れがないのが良かったです。郷愁をそのまま音にしました、なんてあまり聞いたことがないですからね。でも、アルバム全体を通して聴いてみても決して「古臭く」思わないのが不思議なもので、細部までしっかり気配りされたアレンジに彼らのセンスを感じました。

それにしても、アルバム名の「ラブホテル」にはまいりましたね。僕たちが即座に思い浮かべるあの大人の遊戯場はもちろん日本独自の文化ですから、彼らにしてみれば「まさかそんな意味があろうとは」といったところでしょうが…。

しかし、こうやってイタリアのバンドが日本に入ってくるのは嬉しい驚きです。それこそ彼らが愛してやまない60年代のように、英語圏以外の曲がリアルタイムでたくさん入ってくる環境がカムバックするといいですよね。僕が主宰するイタリア文化発掘集団「大阪ドーナッツクラブ」でも、そうした作業にもっと力を入れなくちゃなと思いを新たにさせてくれた1枚でした。

それでは皆さん、また明日の放送でお耳にかかりましょう。