京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

手に届く距離にある映画 Roma Indipendent Film Festival

 ピニェート通り(Via del Pigneto)のすぐ近く、新しく建て直された映画館、ヌオーヴァ・チネマ・アクイラ(Nuova Cinema Aquila)でやっているローマ・インディペンデント・フィルム・フェスティヴァルというイベントに行ってきた。ピニェートは映画関係者や芸術家が集うオシャレスポットとして、ここ数年でカフェやビストロなんかが増えた地区。乱雑としたローマの汚さに洗練された文化が見事に調和したピニェートには、他の盛り場にはない独特の雰囲気がある。そんな場所に新しく映画館ができた、しかも何やら映画祭がやっているということで、友人と2人で足を運んでみたのだ。
 
 映画館は小さいながらも外にあふれるほどの人でにぎわっている。そもそもこの映画祭の発端は、1999年にさかのぼるらしい。細々と発足した自主制作映画を盛り上げる団体が、映画好きで知られる元ローマ市長ヴェルトローニ(Walter Vertloni)などの支援を受け、現在のような形にまで成長した。約100人ほどを収容するだろう1階ホールで、ぼくたちは2本の映画を鑑賞した。1本目は地元ローマを舞台に、青年と少年の奇妙な友情を描いた短編映画『俺、言っちゃうぜ(訳は筆者))』(Io parlo, Marco Gianfredo, 2009年、画像下)。2本目はチェコの監督がつくったコメディー『フランキーは女ったらし(訳は筆者)』(Frantisek Je Devkar, Jan Prusinovsky, 2008年)。どちらもサブカルに走りすぎずかつツボを押さえた佳作だったと思う。1本目が終わったあとに、俳優を交えたインタビューが始まった。座っている座席から数メートルの距離で話している彼らを見て、ある特定の映画が持っている観客に対する近さみたいなものを感じた。そのとき観た映画が自主制作だったからだろうか? 小さいイベントでのことだったからだろうか? インタビュー中、主人公の少年が終始照れているのもおもしろかった。
 
 最後に余談ではあるが、映画館から出たぼくたちは、こちらも最近できたという話題のバー、ネッチに行って夕食を済ませた。昔のバールを改造してつくったこれまたオシャレな飲み屋さんだ。赤ワインのボトルと茄子のミートボールをオーダーする。しかしこんなにオシャレな夜の宴に、ぼくら男2人だけというやんわりしたバッドエンドも、今日観た映画に符号しているではないか。ともあれぼくたちは最終的に、花より団子でピニェートの宵を楽しんだのだった。

=参考リンク=
ローマ・インディペンデント・フィルム・フェスティバル(Click!
ヌオーヴァ・チネマ・アクイラ(Click!
ネッチ(Click!