京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

フロストにぞっこんラブ

どうも、僕です。

昨日の夜、ベッドで悲しい出来事がありました。といっても、別に女性に絡んだ話ではありません。ここしばらく読みふけっていたフロストシリーズの最新訳を読了してしまったのです。

その何が悲しいんだとおっしゃる向きもあるかもしれませんが、これは僕にとっては誰が何と言おうとロンサムな出来事だったんです。こんなハイペースでずんずんどんどこ読み進めてしまったら、いくらその分厚さでつとに有名なフロストでも、確実に終りが近づくスピードが早まるというもの。そして、読了と同時に押し寄せる寂しさ。もうこのろくでもないフロスト警部と一緒に時間を過ごせないのか…。わかってはいたんですけどね、それでもこちらの読むスピードを鈍化させない著者ウィングフィールドの巧みなモジュラー形式のストーリー展開、フロスト警部の頓珍漢な迷推理と場違いかつ下品なジョーク、訳者芹澤恵の達者な名調子、圧巻でした。
クリスマスのフロスト (創元推理文庫) フロスト日和 (創元推理文庫)
誠に残念ながらウィングフィールドは亡くなっているそうですが、未訳の大著があと2作品あるので、芹澤さんにはぜひとも精を出していただきたいところです。ただ、あの量をあのクオリティーで訳そうと思えば、やっぱり1作品最低1年はかかるでしょうね。はあ、待ち遠しくて仕方がない。
夜のフロスト (創元推理文庫) 夜明けのフロスト (光文社文庫)
ほんとに好きなんですよね。1ページにつき1か所は確実に笑って読みましたよ。シンプルなことをのらりくらりと回りくどく大げさな言い方で表現する笑いの作法なんかは、僕の好みとぴたりとフィットして、大いに参考になりました。ああ、言葉っておもしろい。無意味な修辞、最高です。こういうのはヨーロッパは強いですね、レトリックの伝統がすごいですから。
フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ) フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)
あと、驚いたのは、イギリスの架空の郊外都市デントンで七転八倒する警察官たちの関係が、これでもかと日本の職場の人間関係と似通っていること。こりゃあ、受けるわけです。名だたる年間ミステリーベストで軒並み1位を獲得してますもんね。うなずけます。

大学の生協で『フロスト日和』を手に取った記憶はあるんですが、当時はあの分厚さと登場人物のリストの膨大さに舌を巻いて、書棚に戻してしまいました。これが不思議なことに、一度はまると、もっと長いのが読みたいとなるんですよね。ものの見事に策にはめられました。

これでフロストとも当分の間お別れですが、翻訳の勉強にもなったことだし、しばらくは余韻に浸れそうです。

それでは皆さん、また非常に近い将来に。