京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

悪人とガツン!

どうも、僕です。

先日誕生日を迎えて31歳になり、いよいよ20代と完全に切り離されたような気がして、風貌と内面のみならず、これからは年齢と内面のギャップにも苦しんでいかざるを得ないのではなかろうかと難しい顔をして友人に語ってみたところ、「そうかな、雅夫くんはむしろ昔から老成なところもあるからね」などとすかさず返され、「ううむ…」と黙り込んでしまいました。

大丈夫です。何のこれしきです。

さて、このところ立て続けに本を何冊か読みました。基本的に活字ホリックなので、常に何かの本は読んでいる状態なのですが、ここしばらくは、テンポよく順序よく読んだんです。いつもは乱読ですからね。

その中から小説に的を絞ってご紹介をば。

悪人(上) (朝日文庫)

悪人(上) (朝日文庫)

ひとつは吉田修一の『悪人』。つい先だって文庫が出たので、よく本屋で見かけますよね。文体とかレトリックとか語彙とかでうなるようなことはなかったんですが、ストーリーをあれだけ練られると一気呵成に読み切ってしまいます。特に後半はこちらの想像力もこなれてきたせいか、小説というより映画に接しているような感覚に陥りました。それは、文章が映像的というより、構成が映画的ということでしょうね。で、帯を改めて見やると、映画化が決まってるじゃないですか。楽しみです。

で、ふたつめは、ニック・ホーンビィ作、森田義信訳の『ガツン!』。これは番組でも番組のダイアリーでも紹介しました。ブログを覗いてくれている皆さんにもと思いまして。

ガツン!

ガツン!

10代の主人公は母親と生活していて、学校に通いながらスケートボードに夢中。何の変哲もない彼の暮らしは、美人の女の子を好きになることで目まぐるしく激変していきます。未来へ飛ばされるなんていう超常現象に、ティーンエイジャー最大の悪夢である妊娠騒ぎまで飛び出し、えらいことに。

とはいっても、筆致はあくまで淡々としてるんです。これがホーンビィ最大の特徴。人間嫌いなのかと思いきや、どこか人間を讃えているという、愛すべき矛盾が何ともいい感じですよ。

しかし、あれですね、ヤングアダルトなんてジャンルは久しぶりに読みましたが、「ってことで、」という言葉から軽く入る冒頭に、それこそ「ガツン!」とやられました。のっけから「ってことで、」なんて言われても、「ってことでって、どういうことなんだよ」ってなりますよね? うむ、思い出すだに楽しい読書になりました。ぜひお試しを。

それでは皆さん、また非常に近い将来に。