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京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

シチリアのカポナータ 〜Caponata alla siciliana〜

 ハイヒールのブーツが今まさに蹴り上げんとする魅惑のトライアングル、地中海最大の島、シチリア。照りつける夏の強い日差しの下、乾燥した大地にたわわに実る力強い野菜。赤、あお、黄色とあざやかな彩りで食卓をにぎわせます。そんな夏野菜を甘酸っぱいソースで煮込んだ料理がシチリアの《カポナータ》(Caponata)です。

 かつての食卓での贅沢とは、めずらしい食材や高価な食材をつかうこと、それから、その時期には食べられないはずのものを食べることでした。残暑も過ぎて肌寒くなり、夏の暑さにノスタルジーをおぼえる年の瀬まで夏野菜を少しずつ、大事に食べすすめる。庶民にもできるささやかな贅沢、カポナータはそんな料理だったのでしょうか。

 野菜の煮込み料理はギリシャをこえてトルコまで、地中海沿岸の各地で見られるようですが、日本では南フランスはプロヴァンス、ニース生まれの《ラタトゥイユ》が有名でしょう。

 一見よく似たカポナータとラタトゥイユですが、その違いは味つけ。ただのトマト煮込みに飽きたらないカポナータの酢と砂糖をつかったアグロドルチェ(agro=酸味、dolce=甘味)は、夏の食欲をそそります。

 《カッポン・マグロ 》(Cappon Magro)をご存知ですか。プロヴァンスからイタリア半島を少しばかりすねのほうへと下った海岸線沿い、リグーリアの魚介のサラダです。今ではレストランの料理というイメージが強いでしょうか。

 カッポン・マグロはカッポナータ(Capponata)、あるいはカッポナルダ(Capponalda)とも呼ばれるそうで、カポナータとは遠い親戚だという噂も絶えません。
 
 また、カポナータの材料というと、なす、トマト、たまねぎに、ピーマンやズッキーニもおいしくいただけますが、魚介類をふんだんにつかったお金持ち仕様のカポナータもあったといいます。

 カポナータの語源はラテン語の海辺のごはん処(CAUPONA)だとか、魚の種類(capone)だとか、漁師用語(capone)だとかいわれています。どうやらカッポン・マグロと親戚だということ、カポナータに魚が使われていたということも、あながちエキセントリックな妄想ではなさそうです。

 しかし、語源だ由来だと我々がカッポーネ(cappone、頭でっかち)になってしまってもしかたがありません。いらない知識はこのくらいにして、愛すべき夏野菜と憎むべき酷暑をしばし享受することにいたしましょう。