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京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ファインディング・ドリー』短評

映画 ラジオ 野村雅夫(ポンデ雅夫)
FM802 Ciao! MUSICA 2016年7月29日放送分
『ファインディング・ドリー』短評のDJ's カット版。
7月27日(水)TジョイPRINCE品川で鑑賞。

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2003年に大ヒットを飛ばした『ファインディング・ニモ』から干支一回り、ついに続編です。というより、スピンオフと言った方が正確かもしれませんね。なにしろ、主人公が変わってるわけですから。

ファインディング・ニモ (字幕版)

前作でニモ探しを手伝ったナンヨウハギという青い魚のドリー。健忘症なんですね。そんな彼女が両親と生き別れになってしまっていることを思い出します。ドリーはニモとその父マーリンと一緒に、オーストラリアから太平洋を越えて遥かカリフォルニアへ渡り、海洋生物水族館へ。果たして両親に会えるのか。
 
僕はスケジュールの都合で東京、品川の映画館で吹き替え2Dで観てきたんです。夏休み真っ盛り。平日の午前中にあんなに映画館が混んでるのは久しぶりで、僕の定位置も誰かに先を越されてたし、その周りもビッシリ。珍しく端っこでした。で、良かったのは、そこ、敷地内に水族館があるんです。劇場から出ても、映画の世界が少し感じられるような、八代亜紀の声がどこかから聞こえてきそうな体験ができました。
 
☆☆☆
 
同じ魚ってことも手伝って、僕が思い出したのは、レオ・レオニの絵本、小学生の頃に国語の教科書で読んだ『スイミー』です。何らかの理由で集団に適応できない人物がいる。ま、この場合は魚ですけど。もしかしたら、その人は集団の足を引っ張ることの方が多いかもしれない。でも、ふとした拍子に、その人の実は抜きん出た能力が発揮されて、集団を窮地から救うことだってある。つまり、欠点だとされている要素だって、実はその人の大きな魅力かもしれないというお話。「スイミー」の場合は、魚の色でした。これは人間では肌の色に通じます。で、この作品だと、「ドリー」の場合は忘れっぽいこと。いやぁ、忘れ物王子としては身につまされるなぁ。ただ、ドリーの忘れっぽさは、英語だとはっきり「短期記憶障害」となってます。そう、これは障害者の話なんです。考えたら、途中からドリーの相棒になるタコのハンクは足が1本ない「ななこ」さんだし、それが原因で大きなトラウマを背負ってる。ジンベエザメのデスティニーは極端に目が悪いし、シロイルカのベイリーはかつて頭を強打したことで、エコロケーションという音波で見えないところも見えてしまう能力が損なわれたと悩んでる。

スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし

そんな彼らが、この物語内では、知恵を出し合ったり、互いに刺激を与え合うことによって、自分の精神的なつっかえを外したり、及ばない部分を補い合って、みんなで想像を超えるアクションを起こす。その結果、成長したり、自立したりする。これは併映されてた『ひな鳥の冒険』のテーマとも重なりますね。それをあくまであくまでコメディーとして成立させるのが素晴らしいです。
 
ドリーは確かに言ってることをすぐに忘れるんだけど、常に前向きですね。あきらめない。しかも、歯を食いしばるんじゃなくて、ノホホンと感覚的にしのいでいく。どちらかというと理屈っぽくて段取りを踏みたがるマーリンなんかは、息子のニモにたしなめられて、ドリーなら、目にしたものからアイデアを膨らませて急場をしのいでいくよと諭されてました。こういう喋りを聞いてもらってたらわかると思いますけど、僕の脳内はマーリンっぽいところがあるんで、そうやねんなって、また身につまされました。
 
しかし、いくらなんでも、タコのハンクについては、能力が高すぎるんじゃないか。多くの観客が思うところでしょう。擬態も完璧だし、何でもござれ。でも、そんな彼が、実は最も深いだろうトラウマを秘めているわけで、そこはバランスとして悪くないと僕は考えてます。まさかのカーアクションシーンと、その結末に流れるサッチモの『What A Wonderful World』には爆笑。あんな笑いが待ってるなら、多少のご都合主義的な飛躍には目をつぶっていいんじゃないですか? 

ま、それでも、太平洋ってこんなに狭いのかしらって思わせてしまったところや、映画内の時間の流れ方がよくわかんないところ、つまり時空間的に詰めきれていないところは、脇が甘いと言うよりは混乱を招くレベルだったので残念だったことも指摘しておきます。
 
それにしても、フルCGの映像は安定の美しさだし、画面構成では隅々まで小ネタを仕込んで手を抜かないし、イルカのエコロケーションを映像化するアニメならではの実験精神もあって言うことなし。
 
それにしても、小さな頃のドリーの喋り方はもう猟奇的なかわいさ。僕は暗がりの中でもうへたりこんでいた事をご報告します。
 
☆☆☆
 
音楽の使い方、主題歌の持ってき方は申し分なし。エヴァーグリーンな名曲『Unforgettable』を、ドリーと重ねるなんて、思いついた時はしめたってなったでしょうね。
 
続編もいいけど、ピクサーには完全オリジナルにもう少し力を入れて欲しいところ。
 

 
さ〜て、8月5日(金)に扱うのは、『THE WAVE ザ・ウェイブ』になりました。久々のリクエスト枠で当たったこの作品は、なんと関西ではシネ・リーブル梅田でしか上映してません。しかも、1日1回。ヒー!! 行けるって方は、それはもうマストでご鑑賞を。そして、鑑賞後は#ciao802を付けてのTweetをよろしく! あ、僕は今日観たけど、結構良かったですよ。