京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ジェイソン・ボーン』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2016年10月14日放送分
『ジェイソン・ボーン』短評のDJ's カット版です。

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2002年にスタートした、スパイシリーズ。ロバート・ラドラムの『暗殺者』を原作とし、マット・デイモンを主役のボーンに迎え、これまで3本作られました。2012年の『ボーン・レガシー』は、スピンオフ的なサイドストーリーなので、文字通り脇へ置くとして、ボーンを主人公とした作品としては、これが4作目。前作の『ボーン・アルティメイタム』から9年を経てのシリーズ再開です。監督は、過去このシリーズで2本担当したポール・グリーングラス。今回も、記憶障害に悩む元CIAの殺し屋ボーンが、自分の過去を突き止めようとしながら、自分を裏切ったCIAと孤独な戦いに挑む様子を描いています。

ボーン・アイデンティティー (字幕版) ボーン・スプレマシー (字幕版) ボーン・アルティメイタム (字幕版)

今回は109シネマズ エキスポシティのIMAX次世代レーザーで鑑賞しました。でかいスクリーンでのアクション映画はやっぱり最高でした。
 
それでは、僕もボーンばりに記憶をたぐりながら、3分間の短評いってみよう!
 
☆☆☆
 
ファーストカットから、「ああ、ボーンシリーズの新作を今僕は観ている」と強く意識させられる、「よ、待ってました!」なボーン印満載の内容になっていると思います。というのも、このシリーズって、たとえば007やミッション・インポッシブルなど同じスパイ映画と比較しても、よりハッキリした特徴・スタイルを備えているんですね。
 
記憶障害を抱えているというボーンのキャラクターが要請するものでもあるんだけど、まずはざらついた映像のフラッシュバックがとても短く挿入される。それに呼応するように、ワンショットがかなり短い。いわゆる長回しとは対極にあって、印象としては平均数秒でカットが変わる。それが全体のスピード感につながる。とにかくシリアスに重たいトーンで進むので、ボーンを始め、役者が笑うことはまずない。で、派手な顔の人が登場しない。みんな地味。毎回女性は出てくるけど、色気はなし。ポップな音楽もまず使わない。連発される迫力のファイトシーンは、CGよりもマット・デイモンやスタントによる本物のアクションにこだわる。こちらも毎度見せ場になるカー・チェイスでは、必ず道路を逆走する。ヨーロッパを中心に、あちこちの街を観光映画的にいつも移動している。ボーンは常に逃げていて、CIA本部から、その時々の権力者がその時々のハイテクを駆使して指示した現地の刺客とやり合い、CIAはいつも自信満々なんだけど、いつもまんまとしてやられる。
 
これがおおよそのシリーズの特徴で、そのまんま今作『ジェイソン・ボーン』の特徴でもあります。とにかく、「待ってました」のオンパレードなので、ファンにとってたまらなくもあるんだけど、さすがにデジャヴというか、それこそボーンばりに僕らも、「ああ、確かこんなことが前にもあったような気がする」と記憶がフラッシュバックしてしまう。その意味で新鮮味が薄い、置きにいった感じは否めないです。
 
たとえば、これまでの3作にすべて出ていたニッキー・パーソンという女性キャラが、今回も頭から登場するんだけど、彼女の辿る道のりが、もう完全に2作目『ボーン・スプレマシー』と同じやん、とかね。CIAの内部分裂、権力闘争も同じ枠組みだし、こうすれば盛り上がるという方程式をそのまま脚本に当てはめているんで、ボーンの父の死の新たな真相って言われても、結局はすべての発端となるトレッド・ストーン作戦に戻っちゃうんです。「もう蒸し返さんといたって!」って言いたくなりますけどね。
 
その分、アクションシーンにはこれまでと違う工夫を見せようという意気込みは伝わりました。こちらもボーン印ではあるけど、一般人でごった返す場所での逃走劇ね。冒頭のギリシャのデモなんて、時事ネタも入ってるし、なかなか良かったです。乗り物もバイクにしていて、しかも白バイですよ。面白い。で、何と言っても、今回はベガスで派手なの用意してますよ、逆走込みのカーチェイス。ただね、敵がよりによって装甲車に乗っちゃったんですよ。とにかく今回は警察の乗り物がよく盗まれる。しっかり防犯して! 装甲車なんて無敵の車でしょ。だから、簡単に言うと、大味です。凄いんだけど、大味です。カー・チェイスをする流れも、無理やり持っていった感じがして、大味です。
 
プラス、これはアクション全体について言えることなんだけど、マット・デイモン46歳、少し身体のキレに陰りがあるのか、これまで以上に細かくカットを割ってるんです。その結果、こちらの瞬きすら考慮に入れてくれないような急ぎっぷりで、正直なところやり過ぎだと思いました。ベガスのシーンも、目先の派手さを優先するあまり、マイケル・ベイばりに空間構成の説明不足な、破壊のための破壊シーンになっちゃってるのが残念でした。
 
と、文句ばっかり言ってるようですが、実は悪い印象はそうないです。なぜなら、僕はスタイリッシュなマンネリはわりと好きなんですよ。待ってましたって言いたいタイプ。で、もちろん一定以上の面白さはあるわけだから、安心して楽しめました。ただ、さすがに次もこの感じで行くと、そろそろいよいよ飽きられるぞという警告メインの短評となりました。

シリーズ通しての主題歌は、Extreme Ways / Moby
文句なくいいんだけど、このチャプターからは別のバンドを起用するとか、Mobyでも別の曲を書き下ろしてもらうとか、しないかぁ…

さ〜て、次回、10月21日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神ミホさんから授かったお告げ」は、『何者』です。鑑賞したら、あなたも #ciao802を付けてのTweetをよろしく!