京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『スター・トレック BEYOND』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2016年10月28日放送分
『スター・トレック BEYOND』短評のDJ's カット版です。

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シリーズ誕生から今年で50年。2009年にJ.J.エイブラムス監督がスタートさせたリブート(仕切り直し)の3作目。23世紀の宇宙を舞台に、地球を含めた平和な惑星連邦から飛び立った宇宙探査船U.S.S.エンタープライズの冒険を描いています。今回は、未知の星に不時着した宇宙船を救出するミッションに出たところで、謎の異星人クラールが率いる無数の飛行物体に襲われ、エンタープライズ号が大破。仲間が散り散りになってしまいます。

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J.J.エイブラムスは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』で忙しかったということで、今回からは「ワイルド・スピード」を手がける香港出身のジャスティン・リンが監督をすることに。

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僕は熱心なトレッカーでも何でもないんですが、今回のリブート版『スター・トレック』を観直し、観落としていた『スター・トレック イントゥ・ダークネス』を観てから、109シネマズ大阪エキスポシティのIMAX 3Dで鑑賞してきました。エンタープライズ号が実物大に感じられるスクリーンのサイズ感はたまらないものがありましたが、109シネマズ大阪エキスポシティは4DXも対応してるので、今回のBEYONDはそちらでの鑑賞もいいでしょうね。
 
それでは、いつものように3分間の短評、いってみよう。

テレビドラマ版が計5つ、28シーズン、テレビアニメ版、劇場版が今回で13本あるわけですよ。あまりにも膨大だし、トレッキーとかトレッカーとか言われるマニアもいるもんだから、おいそれとは入り難いというか、敷居が高いのは間違いないですよね。僕もTVシリーズなんて、たまたまやってるのをチラッと観たことがあるくらいで、そもそも日本では視聴環境がアメリカほど整ってなかったので、今回お告げが下るまでは、ほとんど門外漢だったんですが、この1週間ですっかりファンになってしまいました。『スター・ウォーズ』よりもハマってるかも。

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簡単に言うと、異文化交流なんですよ。僕らの想像を超えるような、僕らの価値観からすれば変な生き物が出てくる未来の話なんだけど、オリジネータージーン・ロッデンベリーさんの思惑通り、そのカルチャーギャップによる摩擦や交流には、現代の地球が抱えている様々な問題が投影されているので、僕らはそのドラマを自分たちのものとして観ることができる。考えることができる。すごく進歩的で、なおかつ、すごく現代的。僕らの未来のある種の理想像を提示してくれている。だから、本来は細部まで含め、ドラマでゆっくり、一話簡潔で観続けるのがいいんです。そんなとっつきにくいスタートレックをJ.J.はどうしたかって言うと、語弊を恐れずに言えば『スター・ウォーズ』化してるんだと思います。ドラマよりもアクション。スピーディーな娯楽活劇になってる。もちろん、スタートレック本来のテーマにも目配せはしてあるから、スタートレックという宇宙への入門としては、2016年現在はやはりここっていう感じ。
 
前置きが長くなりました。そんなリブート3作目の一番の特徴は、クルーたちのキャラクターを引き立たせたこと。これまでの2作は、やっぱりカークとスポックのバディーものの側面が強かったんだけれど、なにせエンタープライズ号がコウモリ、あるいはイナゴみたいな小型宇宙船の大群に撃破されて、クルーが散り散りになるので、知らない星でまた皆ひとつのチームに集まらないといけないわけです。そこで、これまでにはなかった意外な組み合わせを実現させることで、キャラクターをより立体的に見せている。たとえば、スポックとマッコイ医師の掛け合いは漫才みたいでしたね。新キャラの異星人ジェイラも加わり、拠り所であるエンタープライズを失ったからこそ試されたクルーの絆が、また強くなっていく友情物語という、鉄板、王道な展開。敵であるクラールが抱える悲しみも含め、間違いないっていう感じ。
 
ジャスティン・リン監督は、ファンだったスター・トレック初参加でプレッシャーもかなりあったようですが、手堅くまとめていました。予算もこの手の作品にしてはそう多くなかったらしいので、知恵を絞ったようです。もしかすると、脚本にスコッティ役のサイモン・ペッグが参加しているのが大きいのかなとも思うんですが、敵を撹乱させるために使う道具がとてもアナログで笑いましたね。意外だし、いいバランスだったと思います。ラジオは、僕は当然アガりました。選曲もグッド。
 
ただ、全体としてはあまりにも王道・直球だったので、スター・トレックシリーズのデザイン性の弱さは浮き彫りになっちゃったかな。まあ、これはこのリブート全体に言えることだけど。
 
たとえば、今回も敵があまりにも敵っぽいんだよな。冒頭の和平協定を結ぶ時、化物みたいな異星人、カメラを引いたら、すげぇちっちゃい、みたいな、ああいう意外性、面白みをもう少し全体に散りばめて欲しかった。
 
とはいえ、今回はクルーの絆がメインテーマ。そこはきっちり表現されたアクション娯楽大作王道として、間違いなくのんきに楽しめる1本です。
 
良質なSF、あるいは宇宙という舞台で展開される知的生命体の理想を目指すドラマ、実は人間の本質を語っている金字塔スタートレックは、ONE PIECEが好きな人とか間違いなくハマると思います。これをきっかけに触れてみては? 僕はとりあえず、最初のシリーズ「宇宙大作戦」のDVDをポチッと買ってしまいましたよ。
 
☆☆☆
 
ロシア訛りの英語を喋る操縦士チェコフを演じるアントン・イェルチンが、事故で27歳の若さで亡くなったんですよね。撮影後ですけど。カークとマッコイが、チェコフが隠し持っていたお酒を飲むシーンありましたね。あれは、追加で撮影されたようです。イェルチンを思っての、映画クルーの弔いと考えれば、今回のテーマと合わせてグッと来ますね。

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さ〜て、次回、11月4日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神ミホさんから授かったお告げ」は、『インフェルノです。番組ではIMAXでの試写会も実施しましたが、鑑賞したら、あなたも #ciao802を付けてのTweetをよろしく!