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京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ドクター・ストレンジ』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年2月3日放送分
『ドクター・ストレンジ』短評のDJ's カット版です。

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ご存知、アメコミの実写化「マーベル・シネマティック・ユニバース」の新作ですが、オリジナルは1963年と、実はキャラとして50歳を超えてるんですね。
 
元天才外科医にして魔術の使い手ドクター・ストレンジ。腕は立つが傲慢さが鼻につく外科医ストレンジが、交通事故によってゴッドハンドを失います。失意の彼を救ったのは人智を超えた力を操る魔術。ネパールで厳しい修行を重ねるにつれ、ストレンジの行く手には闇の魔術が立ちはだかります。元医者という異色のヒーローがいかにして人を救うのか。
 
ドクター・ストレンジをベネディクト・カンバーバッチ、彼の指導者エンシェント・ワンをティルダ・スウィントン、ヒロインの救命救急士をレイチェル・マクアダムス、そして闇の魔術師カエシリウスを、『ローグ・ワン』にも出ていたマッツ・ミケルセンが演じます。
 
例によって、アメコミを読む習慣のない僕マチャオが新しいヒーローをどう観たのか。それでは、3分間の短評をスタート!

予告編の時点で多くの人が覚えただろう既視感を僕が代弁すると…
「これ、『インセプション』じゃないの?」っていうことですよね。この目で見てきましたが、ま、絵的にはそんな感じです。『マトリックス』の匂いもプンプンです。闇の魔術へと「転ぶ」キャラがいるというのは、『スター・ウォーズ』っぽくもある。マーベル過去作との比較で言うなら、金持ちで鼻持ちならないミドルエイジの男性という意味では『アイアンマン』のトニー・スタークとも重なるし、量子という異次元に潜り込むという意味では『アントマン』とも通じる。だから、オリジナリティが薄いんだといった批判も成立するとは思うんですが、僕に言わせれば、既存のアイデアをかき集めたものであったとしても、見せ方次第でいくらでも面白くなるんですよ。その点、手放しに褒めはしませんが、オリジナリティは確実に合格ラインを越えたと思います。

インセプション (字幕版)  マトリックス (字幕版) アントマン (字幕版)

まず何と言っても『インセプション』ぽい映像ですが、予告以上であることは断言できます。もはや痛快というレベルまでやり過ぎてます。立体テトリスみたいな感じかなと思いきや、そこに歪みやねじれが加わってきますから、もう何がなんだかで圧巻です。ぜひIMAX 3Dで、めくるめく映像体験をしてください。1分。その意味では、スピリチュアルな多元世界の存在に懐疑的なストレンジがエンシェント・ワンに最初に体験させられる、というか、魂を飛ばされるシーンも、バッチリやり過ぎていて好感が持てました。『2001年宇宙の旅』もチラッと思い出す、サイケかつドラッギーな感覚が味わえます。

2001年宇宙の旅 (字幕版) 『2001年宇宙の旅』講義 (平凡社新書)

ストレンジが体得するこの魔術の多元的な世界の理屈を理解する作業は、正直、僕は途中で放棄しました。だって、何でもありなんですもん。手元からどこでもドアは出せるし、肉体から飛び出した魂のバトルとか面白いけど、なんで時々現実にも風が起きたりどこかにぶつかったり影響が出るのか、僕には説明できません。
 
監督が、この作品をきっかけに、「マーベル・シネマティック・ユニバースから、マーベル・シネマティック・マルチバースへ」と息巻いてる様子をインタビューで読んで、なるほど、うまいこと言うねえ、ユニバース(普遍)からマルチバース(多元)か… いや、これ以上ややこしくせんといて!!!
 
じゃあ、僕が話に置いていかれたのかというと、実はそうではないんですよ。もはや科学じゃないし、理屈はよくわからないんですけど、言わずもがなの魅力であるストレンジのマントを筆頭に、登場するガジェットの類にしっかりそそられます。全体的に敵の魅力が弱いのと、なぜ敵に打ち勝てたのか、理屈がわかりにくいところもありますが、元医者という特性があちこちに活かされていて、ストレンジそのもののカッコ良さと彼の抱える葛藤はしっかり伝わってきました。顔見世興行としてはそれでまずハードルクリアでしょう。
 
ド派手な映像に目を奪われがちですが、ストレンジの髭の手入れ具合で彼の心情を補足して表現したり、何度も登場する腕時計が重要な小道具としてテーマとリンクしたりという丁寧な演出に好感が持てます。ギャグは少し子供っぽいけど、コミック原作らしいし、お話の潤滑油として機能していました。特に一連の音楽ギャグは映画オリジナルでしょうけど、どれも笑えましたね。
 
ヒーローだから人を救ってなんぼなわけですけど、元医者の設定が効いてくるのは、「自然の摂理」をいじっていいのかという、倫理的な問いかけですね。最先端の医学は、現実問題としてそこは避けられないテーマですから。それこそ、ダークサイドへ落ちていくきっかけにもなりうる。人間は自然のルールとどう折り合いを付けるべきなのか。そして、多次元の話だから当然出てくる「時間」の問題。時間芸術である映画との相性抜群のテーマ。自然の摂理と時間の問題がどう絡んでくるのか、僕は次回以降でそのあたりを楽しみにしています。
 
途中で申し訳程度に『アベンジャーズ』っていう言葉が出てきて、当たり前の話、どうやら同じ世界にいるらしいことはわかるんだけど、マーベル映画をあまり観てない人でも入っていける独立した作品なので、入り口としても良さそうです。


さ〜て、次回、2月10日(金)109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様から授かったお告げ」は、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』です。今週に引き続き、ぶっ飛んだ映像が楽しめそうですね。あなたも観たら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!