京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年8月4日放送分
『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』短評のDJ's カット版です。

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MCU(マーヴェル・シネマティック・ユニバース)やDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)、そしてキングコングなどのモンスターバースなど、各配給会社が、現在ヒットめがけてしのぎを削っているのが、ユニバース構想と呼ばれる映画シリーズです。さまざまなキャラクターたちによる物語が、実はひとつの世界の壮大な物語の中に与するというようなもののこと。各作品単体でも楽しめるけれど、組み合わせて考えるとより楽しめるという特徴があるので、配給会社としては、あてるとデカいんですよね。昨年、007もスピンオフを作ってユニバース化するかもなんてニュースも出ました。その功罪はとりあえず脇へ置くとして、この『ザ・マミー』は、ユニバーサル・ピクチャーズが往年のモンスター映画をリメイクする「ダーク・ユニバース」の第一作という位置づけです。

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オリジナルは1932年の『ミイラ再生』という作品。それが99年からの『ハムナプトラ』へと展開し、今回また仕切り直してやってみようと。
 
トム・クルーズ演じる米軍の関係者ニックは、世界あちこちの戦闘地域で貴重な古代遺跡からでた品を掠め取って闇市場へ流して儲けている男。中東で武装グループによる襲撃を受けた彼は、ひょんなことから古代エジプトの墓を発見。考古学者の女性ジェニーと共に、その棺をイギリスへ輸送中、葬られていた古代エジプトの女王アマネットが蘇り、大惨事が幕を開けます。
 
監督は、『ミッション・インポッシブル3』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』など、名だたるビッグバジェット作品に脚本参加しているアレックス・カーツマン、43歳です。監督としては2本目となります。
 
それでは、制限時間3分間の短評を今週もスタート!

このキャリアにして、最近出る作品のクオリティーが軒並み高くて、アクションもますますキレが増している印象のトム・クルーズ最新作ということで、また日本にはファンも多いですから、期待している方も多いでしょうし、僕もそのひとりなんですが、ほとんど前情報なしに観に行ったこともあり、正直なところ、結構消化不良な感覚を僕は持っています。
 
まず、脚本にかなり難があります。おかしいなぁ。『ジュラシック・パーク』『ミッション・インポッシブル』『宇宙戦争』『スパイダーマン』のデヴィッド・コープや、『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー脚本賞を獲ったり、最近だと『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』なんて傑作も脚本・監督してるクリストファー・マッカリーが脚本を手がけてるんですよ。なぜ、こうなる?

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何が問題って、まず王女アマネットの呪いがもうひとつピンと来ないことなんですよ。プロローグとして描かれる部分なんですけど、要するに彼女は王になり損ね、死の神セトってのに魂を売り、世界を意のままにしようとしたところ、その企みがバレて生き埋めというか、生きたまま棺に入れられてしまったということなんだけど、それから数千年が経って呪いの力で蘇ったと。それはいいとして、彼女が何をしたいのかがどうにも伝わってこないんです。あと、鳥や蜘蛛を操ったり、ニックの意識下に入り込んで呪いをかけてセトに憑依されるっていうんだけど、彼女のそういう能力によって何がどうなったら、こういうことが引き起こされて危ないんだというロジックが全然わからないんで、次から次へと惨事が起こっても、大変なのはわかるけど、いまいち危機の正体が伝わらないんで、事態の全体像がつかめなくて入り込めないんですよね。

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それから、ニックとヒロインのジェニーの関係もチグハグな印象が拭えない。最初は騙されたって言って怒っていたジェニーが、命を救ってもらったからニックはいい人ってことで手のひらを返して恋人みたいになるんだけど、その感覚が今ひとつこちらには伝わってないから! 
 
ダーク・ユニバースなわけで、これから色んなキャラクターが出てくるのは理解できるんだけど、それにしたって、あのモンスターを封じ込めるという謎の組織「プロディジウム」の役割も、それを仕切るラッセル・クロウ演じるジキル博士の存在も、唐突だし、何しろ目的がもうひとつこれも伝わらないんで、同じく大変なことが起こっても、大変なのはわかるけど、それが結局何がどうして危ないのかという全体像がよくわからないんです。
 
中世の十字軍の騎士たちの墓がロンドンでこれまた発見されてっていうエピソードも面白いんだけど、なんかこう取ってつけた感じが否めない。
 
肝心のニックも、1作目だからしょうがないのかもしれないけど、こずるい男という当初の設定が活かされないまま、あれよあれよと呪いをかけられて、素のニックについてよくわからないまま事態が進行するから、どうしても僕らは置いてけぼりになるんです。
 
やっぱりプロローグが問題なんですよ。全体を貫く意志なり野望のようなものがうまく提示されていないので、何が起きても、ただのパニックに終わってしまう。だから、トム・クルーズラッセル・クロウもせっかくがんばってるのに、そのシーンが映画全体の中でうまく機能していないんだよなぁ。
 
ジャンル的にも、インディー・ジョーンズ的なアドベンチャー、ミイラというかゾンビもの、パニック、アクションといった要素をブレンドしてるんだけど、うまく混ざりきってはいません。
 
まとめると、ダーク・ユニバースの出だしは、ちょっとつまづいてますね。焦点が定まってないし、芯が見えない。今後、フランケンシュタイン、半魚人、透明人間と、ジョニー・デップハビエル・バルデムといった『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』コンビを巻き込んで続いていく模様ですが、全体の構想をしっかり練って立て直していく必要がありそうです。


さ〜て、次回、8月11日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』です。何を隠そう、僕マチャオ、ジョジョ弱者です。大丈夫なんでしょうか。僕みたいなズブの素人も、熱心なファンも、観たら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!