京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『エイリアン:コヴェナント』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年9月22日放送分
『エイリアン:コヴェナント』短評のDJ's カット版です。

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泣く子も黙るSFホラーの金字塔、1979年の『エイリアン』。リドリー・スコットジェームズ・キャメロンデヴィッド・フィンチャーとバトンが渡されたシリーズの前日譚3部作として、1の監督リドリー・スコットがメガホンを取った2012年の『プロメテウス』に続く2本目にあたります。

エイリアン/ディレクターズ・カット (字幕版) プロメテウス (字幕版)

 時は2104年。人類が住めるだろう惑星オリガエ6へと向かっていた宇宙船コヴェナント。2000人の人間と人間の胚をコールドスリープ状態にして運んでいるところ。ウォルターというアンドロイドが船の管理を行っていたところ、コヴェナントはニュートリノ爆発に遭遇。船長たちが命を落とす中、ダメージを受けた船を必死で修復していると、音楽と思われる不思議な電波をキャッチ。発信元を探ると、どうやらその星はオリガエ6よりも遥かに近く、入植地の候補として有力かもしれない。新船長の命を受け、小型船で探索に向かった先は、地球に似ているけれど、生き物たちのいない世界だった…

 
かつてシガニー・ウィーバーが演じたリプリーばりのタンクトップ姿を披露する船長の妻に、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のキャサリン・ウォーターストーンが配役された他、コヴェナント号に乗り組むアンドロイドのウォルターと『プロメテウス』のアンドロイドのデヴィッドを、マイケル・ファスベンダーが1人2役で演じています。
 
それでは、グロいシーンでは極力薄目にして、それでもキツイ時には目を背けながらも何とか食らいついて鑑賞した僕野村雅夫による3分間の映画短評、今週もいってみよう!

折しも来月末『ブレードランナー2049』、つまりリドリー・スコットのもうひとつの代表作の続編(リドリー・スコットはこちらでは製作総指揮)が公開されるわけですが、このエイリアンの前日譚三部作も、テーマとしては同じアンドロイドなんだなということが、より鮮明になってきた作品です。79年の1本目は、当時の時勢も相まって、エイリアンが象徴する男性社会に対して抵抗を試みる女性というフェミニズム的な解釈が多く存在します。興味のある人は、文春文庫から出ている内田樹の『映画の構造分析』が読みやすくまとめてあるのでオススメします。それから21世紀に入ってAIの技術もずんずん進歩していく中で、リドリー・スコットの興味は、より根源的なテーマ、つまりはクリエーション、創造、ものを生み出すことに移っているのでしょう。
 
前作の『プロメテウス』だと、人類の起源としてのエンジニアという存在が登場しました。が、正直なところ、身体を溶かして川にDNAをばらまくあたりから「ぽかん」となってきまして、わりと理解に苦しんだのは僕だけではないはずです。一方、今回はエイリアン1というゴールへ近づいていることもあり、かなりわかりやすくなってきていて、SFではおなじみのロボット三原則「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」なんかも出てきます。この映画の文脈で言えば、人間そっくりのアンドロイドは、人間が生み出したもので、彼らは人間をサポートこそするけれど、何かを独自に生み出してはならないわけです。しかし、あの有能なアンドロイドに学習能力があるばかりか、好奇心まで備わっているとしたら… 現在、これはリアルな話として、AIに小説を書かせるなんて試みがあるわけですけど、好奇心のあるアンドロイドだって、何かクリエイティブなことをしたいと思うのが道理ってもんじゃないのか、と。人間が動植物の遺伝子を操作するように、アンドロイドが生命の根幹にまで興味を持った暁には… 
 
まぁ、こういう「飼い犬に手を噛まれる」みたいな話は『2001年宇宙の旅』にもあるように、SFのスタンダードだと言えると思うし、AIの恐怖はエイリアン1にもあったわけなんで、それ自体に目新しさがあるわけじゃないんですが、さっきも言ったように、AIによって人間の労働環境が大きく変わることがまことしやかに論じられているこのご時世にあっては、この古きテーマがいよいよ現実味を帯びてきて、恐怖がいや増すアクチュアルな問題としてググっと立ち上がってきているということなんですよね。って、ここまで話してきて、エイリアンそのもののについて触れてないじゃないかというツッコミが聞こえてきそうです。だって、しょうがないよ。これ、実態は、「アンドロイド:コヴェナント」って名付けたほうが良い映画だから。
 
いや、もちろん、エイリアンも出てきますよ。やたらすばしっこいちっちゃいチビリアンも出てくるし、おなじみの完成形も出てきます。そして、しっかりグロいです。ショッキングです。特に人間に寄生してからの成長の早さとか、もうウンザリするくらいに怖いです。でも、ビジュアルの言わばエンタメ的怖さよりも、アンドロイドがもたらす精神的ショックの方が、見終わった後はよっぽど大きい。その後味の悪さたるや…
 
ということで、面白くは見たんですけど、いかんせん、アンドロイドを巡る、ある種倫理的なテーマの面白さとは裏腹に、脚本は結構B級感がありますね。誰しもがつっこむのは、お前ら、見知らぬ惑星に降り立つのに、なんでそんなに無防備やねん、と。そして、もっと素朴な疑問も湧いてきます。コヴェナント号は突然のニュートリノ爆発という予期せぬ事態に遭遇したから、その地点で信号をキャッチして、はっきり言って、行き当たりばったりに目的地を変更し、えらい目に遭うわけだけど、もし爆発が起きてなかったら、あの信号はキャッチされないままだった可能性が高いわけでしょ? エイリアンシリーズって、そんな偶然の産物がきっかけだったの? とか… あ、野暮なこと言いました。
 
ただ、B級とされていたホラー映画の価値を一気に押し上げたのがエイリアン1だったわけで、グロ描写よりも脚本の都合の良さというか、こいつらバカなのかっていう乗組員たちの様子、その設定にこそお約束だからと目をつぶってしまえば、かなり楽しめる1本です。スリルはちゃんとあるし。

↑ お願いだから、『カントリー・ロード』は『耳をすませば』だけにしていただきたかった(苦笑)

 

何より、リドリー先生が楽しそうに演出している気がします。これからしばらくは、御年79歳リドリー・スコット大暴れです。ブレードランナー続編、オリエント急行殺人事件リメイクのプロデュース、そして、70年代に起きた石油王の孫誘拐事件を描く監督作が、アメリカで12月に公開されるので、アカデミー賞に絡んでくる可能性も大。『エイリアン:コヴェナント』を観て、あなたも来るべきリドリー祭りに備えてください。

さ〜て、次回、9月29日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、またまた東野圭吾作品が映画化、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』です。涙を売りにしてるけど、僕はそう簡単に泣かないぞ! なんつって、号泣したりして。あなたも #ciao802を付けてのTweetをよろしく!