京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年11月10日放送分

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アメリカの一見静かな田舎町では、児童失踪事件が頻発していた。ある大雨の日、内気な少年ビルの弟も、近所の路上に大量の血痕を残して姿を消した。何とかできなかったのか。自責の念を感じていたビルの前に「それ」が姿を現し、以来彼は恐怖に取り憑かれてしまう。どうやら「それ」を目撃しているのはビルだけではないらしく、学校で日陰者として生きるいじめられっ子の友人たちも皆、それに遭遇していることが判明。彼らは夏休みを利用して、ビルの弟を捜索しながら、事件の全体像に迫るのだが…

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 『シャイニング』『スタンド・バイ・ミー』『ミザリー』『ショーシャンクの空に』など、映画化作品に名作の多い作家スティーブン・キング。90年にアメリカでテレビドラマとして映像化された『IT』が、今回27年ぶり(この数字が物語内容と符合していて不気味!)に劇映画としてリメイクという流れ。

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監督はアルゼンチンのアンディ・ムスキエティ。やはりホラー映画の『MAMA』以来、これが2本目の長編作品です。予告でも出まくってるわけなんで言っちゃいますけど、「それ」aka不気味なピエロのペニーワイズを演じているのは、スウェーデンの俳優ビル・スカルスガルド。2010年の『シンプル・シモン』という、僕の好きな映画で主役シモンを演じたのが、主演デビューのはず。まだ公開中の『アトミック・ブロンド』でも、シャーリーズ・セロン演じるスパイの作戦を手引する東側のスパイとして好演していました。結構、イケメンなんですけど、見る影もないくらいにピエロになりきってます。文字通りの怪演!
 
それでは、映画を観終えて手元のスポーツウォッチを確認したら、明らかに心拍数が上がっていたホラーの苦手な男マチャオによる、恒例の3分間の映画短評、今週もいってみよう!
 
チャーリーとチョコレート工場』の原作で知られるロアルド・ダールという作家がいます。高校生の頃に英語の授業で読んでから好きになって、一時期ハマっていたんですが、『あなたに似た人』という短編集に入ってる『お願い』っていう短いお話があるんです。子供の頃に、横断歩道の線なんかを踏んだら、そこには蛇がいて噛まれるとか、逆に線を踏み外したら、深い闇に落っこちるとか、そういう妄想遊びをしたことがある人なら、絶対に面白く読める小説で、僕はこの『イット』を観ていて、途中からその『お願い』を思い出しました。要するに、想像力の問題。
主人公たちはみんないじめられっ子。ビルは吃音の症状があるし、ユダヤ教徒や、支配欲の強い母親のいる男の子、でぶっちょもいる。そして、紅一点のベバリーちゃんは父子家庭で、どうもその父親から性的な虐待を受けているっぽいし、おまけに学校でも町でも尻の軽い女であるかのように噂されてる。誰もが心に傷を負っているがために、自分だけの世界を構築して、そこをシェルターのようにしながら、それぞれに何か怖いものから逃れているわけです。そこへ現れるのが、問題の「それ」なんですね。
 
怖い絵が動き出したり、暗いところであらぬものを目撃したり。「それ」というのは、自分の恐怖が反映されたもの。ベバリーちゃんが最もわかりやすいです。男の気を惹くからと自分で切った髪の毛。そして、初潮を迎える時の血がストレートに反映しますからね。自分の怖いものをこそ、見てしまう。これは多かれ少なかれ、誰でも経験があるはずです。ただ、この話の面白いのは、「それ」の姿がある程度共通してクラウン、ピエロであると。普通なら、それぞれに違うものを見るはずなんだけど、なぜか27年ごとに起こる町の失踪事件のことや、仲間の弟や同級生が姿を消したこともあいまって、言わばコックリさん的に集団催眠のようにして似たような幻影を見るわけです。もちろん、大人には見えない。このあたりから、どれが幻影でどれが現実か、その境が無くなってシームレスになるから、ますます怖くなるわけですね。
 
いきなりビルの弟の腕が噛みちぎられたりして、グロテスクな描写もあるものの、全体としてはそこまで絵的に怖がらせることなく、あくまで心理的に攻めてくる演出で、それが物語のテーマとも合致しているので好感が持てました。すべて合理的に説明のつかないものだから余計に怖いわけで、それがホラー映画というジャンルの良さでもあるわけだろうから。
 
オリジナルのドラマを当時レンタルして観ている人もいるだろうから言っちゃいますが、今回の劇場版はこれ単独では終わりません。だから、あのクラウン、ペニーワイズの正体は明らかにはなりません。続きが再来年公開される模様なんですね。なので、消化不良気味なのは否めないんですが、僕はこれはこれとして楽しく観ました。『スタンド・バイ・ミー』や『グーニーズ』にあるような、はみだしっ子たちの連帯。『IT』という代名詞は、鬼ごっこの鬼を指す言葉でもあるし、性的な隠語という側面もあるわけで、受け皿の広い言葉ですよね。思春期特有の性への興味と恐怖が描かれる、チームでの成長・ジュブナイルものとして、爽やかにすら観られるパートもあって、実は間口の広い映画だとも言えます。彼らがどんな大人になるのか、30年後を舞台とするのだろうチャプター2が今から楽しみです。
 
あのデブッチョくんがヘッドホンで逃げ込んでいたのが、New Kids On The Blockの音楽でしたね。ポスターが出てくるとこの演出には笑いましたよ。

さ〜て、次回、11月17日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ザ・サークル』です。ただでさえ、SNSを意識しすぎているのが現代人なのに、24時間すべてを公開するとか、ほんとダメでしょ。それこそ、『IT』とは別の種類のホラーになるんじゃないの? なんて、あらすじを読みながら思いましたが、どうなんでしょう。あなたも #ciao802を付けてのTweetをよろしく!