京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『パシフィック・リム:アップライジング』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2018年4月19日放送分

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今思えば、巨大ロボットや怪獣など、日本が得意としてきたコンテンツの谷間だったと言える2013年。前作『パシフィック・リム』が公開されました。そこで日本のアニメ&特撮ものへのこだわりとリスペクトを込めたのが、今年『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー作品賞を獲得したギレルモ・デル・トロ。今回彼は製作総指揮に回り、テレビやストリーミングで演出をしていたスティーブン・S・デナイトが監督を務めました。

パシフィック・リム(字幕版)

海の底の裂け目から現れたKAIJUたちが地球を襲った惨劇から10年。復興が進んでいく中、KAIJUを倒した人間が操縦するロボット「イェーガー」の技術は更新され、民間企業による無人型イェーガーの開発も進められ、KAIJUのいない時代なりに、人類は備えをしていました。訓練中、突如現れてこちらに襲いかかってきた謎のイェーガー。その正体は? 人類の新たなる戦いが始まる。
 
前作で殉職した英雄の息子だが、ゴロツキとして廃墟で暮らしていたところを軍に呼び戻されて真のパイロットへと成長していく主人公ジェイクをジョン・ボイエガ、その同僚ネイサンをスコット・イーストウッドが演じている他、日本からは前作に引き続き菊地凛子、さらに、若きイェーガー・パイロットとして新田真剣佑など、前作に引き続き、日本人キャストも参加して話題を呼んでいます。
 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

もしもデル・トロが今回もメガホンを取っていたら… 1が日本でもあれだけの熱狂を生んだだけに、監督交代劇を惜しむ声はよく聞かれます。でも、補足しておくと、デル・トロにはやる気があったわけです。実際に撮影の段取りも組んでいたんですが、そこで制作会社レジェンダリー・ピクチャーズと配給会社ユニバーサル・ピクチャーズの対立が深刻化してあえなく中止。企画はしばらく宙吊りになりました。その後、レジェンダリー・ピクチャーズは中国の大連万達(ワンダ)グループによって買収。こうしたゴタゴタで時間を食った結果、デル・トロは『シェイプ・オブ・ウォーター』に集中するべく、自分は製作総指揮に回りました。それでアカデミー作品賞を獲得したわけだから、デル・トロは今後より影響力をもって、トレードマークでもあるフェティッシュなこだわりを実現できる土壌を手にしたわけで、それはそれでトータルで見ればOKだと言えるでしょう。
 
彼は作家性を重んじる人だから、続編と言えど、デナイト監督でないとできないことを実行するといい、押し付けはしないから、好きにやってくれと伝えられたようです。
 
具体的に言えば、今回僕もしっかり驚かされたイェーガー同士の戦いというアイデアはデル・トロによるものです。ただ、それをどう見せるかという演出の部分において、
デナイト監督は、はっきり、前作の踏襲よりも革新を、おかわりよりも違う調理法を選んでいます。その志は評価すべきなんだけど、作家性と嗜好の違いが浮き彫りになった結果、あくまで続編として考えた時に、前作ファンの求めるものとの齟齬が無視できないレベルで生まれているわけです。

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では、その違いとは何か。メインの戦闘シーンに端的に表れています。前作は夜だったり雨が降ってたり海だったりと、とにかく暗い絵面が多かったですよね。何が起きているか分かりにくくて、あれはCGの粗をごまかすためだとも言われていました。確かにそういう技術的な理由もあったはずですが、それをむしろ活かしたデル・トロは、ブレードランナー的とも言える終末論的世界に仕立てました。原子力で動くイェーガーは、操縦がふたり一組でやたら難しいし、動きも鈍重でした。KAIJU相手に劣勢に立たされることもしばしば。でも、だからこそ、ケレン味の利いた日本的な間合いから繰り出される必殺技が決まった時のカタルシスがあったんですね。

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それがデナイト演出にかかると、戦闘シーンはほとんど昼日中、降り注ぐ陽光の下で展開されます。この5年でグレードアップしたCG技術を誇示するかのように。イェーガーそのものもグレードアップ。無人機も含め、バリエーションが増え、カラーリングもスタイリッシュ。操縦は容易になり、動きがキビキビしました。デナイト監督はウルトラマン好き、なおかつマイケル・ベイトランスフォーマー・シリーズに最近は脚本家として参加していますから、そりゃ鈍重なロボットは嫌でしょう。
 
両者の違いは、ロボットを捉えるアングルにも出ています。デル・トロは重量感を際立たせる下から見上げるものが印象的だったのに対し、デナイトは高いところから見下ろすことが多い。デル・トロのジメジメした湿度過多な画面に対して、デナイトはカラッとしていて悲壮感が弱め。
 
ネタバレの問題があるから踏み込まないけど、イェーガー同士の戦いがあるってことは、単純に人類vsKAIJUじゃないわけで、物語の力学も違いが鮮明です。
 
以上、違いを挙げてきましたが、今作には映画としてのまとまりに少し難があることも付け加えます。前作で記憶に残るのは、やはりバトルそのもの。話は正直そこまで重要じゃないというか、ありふれたものでした。アルマゲドン的自己犠牲。KAIJUって一体何なんだという謎。これができなかったらもう終わりだというタイムリミット・サスペンス。でも、話が分かりやすかった分、観客もバトルに集中できたわけです。
 
今回は物語を構成する要素が多い上、それを並べるのに時間がかかっている分、バトルが淡白になってしまってます。操縦も簡単だしね。だから、とりあえずスケール感を出すために、続編にありがちな力のインフレが起きてしまっています。せっかくイェーガーをスタイリッシュにして種類も増やしたんだから、それぞれの特徴を描けば萌えそうなもんだけど、そこに時間を割けていない。となると、真剣佑を含めた若きパイロット達のキャラや成長も描ききれず、ドラマとしても淡白です。
 
結論。デナイトの意欲は買うし、ジャンル映画として一定の水準に達している。その証拠にヒットもしている。大画面で観る価値大アリ。なんだけど、次があるなら、やはりデル・トロにもう一度アップライジングしてほしいと思ったのが正直なところです。

映画通としてもおなじみ、川上洋平くんが『シン・ゴジラ』に反応して書いたというKaiju / [Alexandros]をオンエアしました。

さ〜て、次回、4月26日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、スピルバーグ『レディ・プレイヤー1』です。これ、またガンダムが出てくるぞ〜。2週連続、ガンダム(「アップライジング」でも、チラッと映り込むんですよ)。しかし、結局『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』を観られてないんだよなぁ。それはともかくとして、スピルバーグのタイプの違う新作を同時に観られる環境は素晴らしすぎる! あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けてのTweetをよろしく!