京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2018年8月9日放送分

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60年代半ばから70年代前半にかけて、日本でも放送された人気テレビドラマシリーズ『スパイ大作戦』を映画化したもので、CIAのスパイ組織、Impossible Mission Force(IMF)に所属するエージェント、イーサン・ハントの活躍を描くシリーズ第6作。

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盗まれた3つのプルトニウムを回収するミッションの途中で、何者かに強奪されてしまったイーサンたちIMFチーム。世界の3つの都市を標的とした同時核爆発テロを未然に防げとの新たなミッションを命じられます。どうやら、秘密組織シンジケートの残党が結成したアポストルというグループが関与しているらしいものの、手がかりはジョン・ラークという男の名前のみ。まずは、そのラークが接触するという謎の女ホワイト・ウィドウに、ラークになりすまして近づこうとするイーサンたちですが、CIAがイーサンの動きに不信感を抱き、監視役として敏腕エージェントのウォーカーを送り込みます。常に疑いの目を向けられながら任務を遂行するイーサン。核爆発までの猶予は72時間。この危機を乗り越えることはできるのか。

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主役の我らがトム・クルーズは、このシリーズを通して製作も手がけております。監督はこれまで、ブライアン・デ・パルマジョン・ウー、J.J.エイブラムス、ブラッド・バードクリストファー・マッカリーと1作ごとに交代してきましたが、今回は初めてマッカリーが続投となりました。『ユージュアル・サスペクツ』の脚本家で、他にもトムの出演作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』、そして監督としては、同じくトムと組んだ『アウトロー』など、とにかく最近はトムの相棒として知られる人です。
 
イーサン・ハントと行動を共にするエージェントでガジェット担当のベンジーサイモン・ペッグ、メカニック担当のルーサーをヴィング・レイムスが演じる他、前作から登場する謎の女としてレベッカ・ファーガソン、そしてイーサンを監視するウォーカーとして『マン・オブ・スティール』要はスーパーマンのヘンリー・カビルが参加しています。
 
それでは、こちらはタイムリミット3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!
 
まずは、トムの常軌を逸したアクションへのこだわりについて言及せざるをえません。今回もスタント無し! もはやジャッキー・チェンも真っ青じゃないでしょうか。
 
fall outという英語表現にはいくつかの意味があるんですが、第一にそのまま「外側へ落ちる」ということ。イーサンがパリ上空、成層圏の高さを飛ぶ飛行機からスカイダイビングして最短距離で謎の女ウィドウに会いに行くところ。しかも、途中で失神した監視役のウォーカーを救出するという時速320キロで落下しながらの演技。続いて、パリの街路を逆走しながらの猛スピードでのバイクチェイス。しかも、ノーヘル。そりゃ、サドルから吹っ飛びます。敵を追いかける途中での、ビルからビルへの飛び移り。リアルに足首を骨折。そして、離陸するヘリに飛び乗ってから、ぶら下がっている荷物への落下。そして、ヘリを奪って自ら操縦しつつの渦巻き急降下。もう、開いた口が塞がりません。手に汗握りしめまくりの、口の中カラカラです。
 
今挙げた例は、もちろんダイジェストで、他にも普通なら売りにするようなアクションシーンが、この作品ではそこかしこに点在しています。トムのクレイジーさもさることながら、そのアクションや表情を的確に捉えるカメラワークも超一流。付き合わされるスタッフもたまったもんじゃないですよね。一緒に乗り物に乗ったり飛び降りたり。身体を張るだけでなく、その撮影に耐えうる技術を開発しないといけないわけです。頭が下がります。
 
そうやってチーム一丸となって取り組んだ甲斐あって、映像の迫力と美しさには目を見張ります。特に僕が素晴らしいと思ったのは、動きのスピード感を増す表現として使われる、被写体の前を横切るアイテムの見せ方です。カメラと役者の間を車やら柱やらがビュンビュン通り過ぎることで、役者の動きがよりシャープに見せるよくある手法ではありますが、見たことないハイクオリティに達していました。こうした演出技術もさることながら、ロケハンが絶妙で、あれだけ動きがあるのに、そのままポスターになるっていうような決めの画面がいくつもあるのもまいりました。

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fall outには他の意味もあります。「放射性物質が流出する」。そして「隊列を離れる」。実際にプルトニウムの流出が発端となる物語であり、これまでのシリーズからの流れを考えてみても、組織を誰が離れるのか、離れさせられるのか、そのあたりが物語の分岐点となってきました。
 
脚本家として映画界にやって来たマッカリー監督です。複雑な脚本を書くのが得意な人で、なおかつ古き良き技術や映画への強いリスペクトをトムと共有もしています。冒頭、ミッションが告げられるくだりの小道具や、映像を粗めにざらつかせるセンスにも、シリーズの原点への目配せと、シンプルにトムとマッカリーの趣味が反映されていました。そして、脚本です。世界屈指のエージェントたちが敵を欺いて罠にはめていく痛快さが前作の特徴でもありましたが、今回は騙し合い。IMFが仕掛けた罠には、僕はまんまと騙されました。お見事。ただ、その騙し合いをより複雑にするために、今回は大きく3つの立場がある他、それぞれの中でもまたスタンスが枝分かれしていたりするので、正直わかりにくいところも多々ありました。そこに、タイムリミット・サスペンスもいくつも組み合わせてあるということで、展開が唐突に感じられること、そしてイーサンたちが基本的に場当たり的になってしまう印象は否めないです。
 
「どうする?」
「今考える。どうにかする」
 
ってのが多いんですよね。現場主義は一見かっこいいけど、世界の未来がかかってるんで、そこんとこはもうちょっと事前準備をしてもらっていいですかっていうのはありますね。ま、トムの骨折などいろいろあったために、撮影現場が実際に「今考える。どうにかする」っていう状況だったようなので、それを踏まえると、よくまとめられたよ、とも言いたくはなりますが。

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僕が感じた唯一大きな不満は、復讐だなんだと、個人の因縁・怨念めいたものを敵側の動機として前面に出すことで、シリーズのつながりは出るものの、スケールが小さく感じられるのと、娯楽作としては心理的に鈍重になることです。007のスペクターのように、宿敵ってのは大事ではありますが、なぜこんな面倒な方法でのリベンジでないとダメなのか、そこを見せないと、こちらはポカンとするし、辛気臭くなるかなと思います。
 
ともかく、設定やお話の筋は基本的にはよくあるものです。だからこそ、トムやマッカリーがスタッフが、それぞれにやり過ぎなくらいにサービス精神と工夫を凝らすことで、そんじょそこらのドラマや映画には決して真似できない映像体験を僕らに提供してくれる、先週も似たようなこと言ったけど、この夏大本命の1本ができあがっています。

さ〜て、次回、8月16日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『オーシャンズ8』です。来たよ来たよ〜。我らがオーシャンズが帰ってきたよ〜! これで出来栄えがよかったら、3週連続で「この夏の大本命」って言う羽目になりそうです。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!