京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『オーシャンズ8』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2018年8月16日放送分
映画『オーシャンズ8』短評のDJ's カット版です。

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スティーヴン・ソダーバーグが監督を務め、主人公ダニー・オーシャン役のジョージ・クルーニーを筆頭に、豪華キャストが集って人気を博したクライム・アクション「オーシャンズ」シリーズ。11、12、13と3本作られましたが、今回は女性キャストのみで犯罪者集団を構成してのスピンオフであり、リブートであり、時系列上は続編でもあります。
 
刑務所に収容されて5年。模範囚としてようやく仮出所を勝ち取ったのは、あのダニー・オーシャンの妹デビー・オーシャン。彼女は収監中に練りに練った犯罪計画を実行に移すべく、かつての相棒ルーと共に仲間をハントします。そうして集まったハッカー、スリ師、盗品ディーラー、ファッションデザイナー、ジュエリーの職人と共に新生オーシャンズを結成。そのターゲットは、ニューヨーク・メトロポリタン美術館で開催される世界最大のファッションの祭典メット・ガラで、ハリウッドのトップスター女優が身につける1億5000万ドルのネックレス。彼女たちは厳重極まりない警備体制を突破できるのか。
今回ソダーバーグは製作に周り、『ハンガー・ゲーム』のゲイリー・ロスが脚本を書き、メガホンも取りました。そして、オーシャンズと言えば、キャストが大事なわけですが… 今回もすごい。デビー・オーシャンをサンドラ・ブロック。その右腕ルーをケイト・ブランシェット。ターゲットとなるハリウッド女優のダフネをアン・ハサウェイハッカーナインボールをリアーナ。ファッション・デザイナーのローズを、ヘレナ・ボナム=カーターがそれぞれ演じています。
 
今回の日本統一ポスターのキャッチコピーは「ターゲットも、ダマしも、史上最強。目撃者は、全世界」なんですが、大阪メトロの駅構内で僕が見かけたポスターは「大阪の夏は、ターゲットも、ダマしも、バリ最強のウチらが盗むで!」だったことも、特に意味はないですが付け加えておきます。
 
それでは、タイムリミット3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

オーシャンズはジャンルで言えば犯罪アクションなんですが、もう少し細かく言うと、英語で「組織強盗」を意味する「ケイパーもの(caper film)」というサブジャンルに当てはまります。視点が警察や探偵ではなく犯罪者の側にあって、主人公は計画を練り、資金と仲間を集め、ターゲットを強奪する。それが成功するのか失敗するのか、サスペンス要素も入って手に汗握るというのが、このジャンルの特徴です。
 
加えて「オーシャンズ」シリーズの場合は、アクションの派手な要素である銃撃やカーチェイスなどを売りにせず、むしろ計画の緻密さ、何かトラブルがあってもそれらを構成員ひとりひとりの特殊能力とチームワークで乗り越えていく頭脳戦で楽しませるという特徴がありました。
 
3本撮られていたこのシリーズは、主要キャストのバーニー・マックが2008年に亡くなり、ソダーバーグ監督は「オーシャンズ14」は作らないと宣言していましたが、結果として、「数字を減らしてしまえばいいじゃないか」という裏技を使って11年ぶりに復活しました。
 
時系列的には続編とはいえ、キャストもキャラクターも一新したリブートですから、ダニー・オーシャンを兄に持つデビー・オーシャンがいかにデキる女かということをまず見せないと始まりません。その点で、模範囚のフリをしたこと、出所して早々の華麗な化粧品の窃盗と高級ホテルにタダで宿泊するくだりをうまく見せた時点で、今回のゲイリー・ロス監督は見事に狼煙を上げたと言えます。

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その後も、才能あふれるキャラクターたちがいかに冴えない日々を過ごしているのか(これはケイト・ブランシェット演じるルーがウォッカを水で薄めて客に出して日銭を稼いでいるという設定に象徴されます。みみっちいなぁっていう)を見せて、そんな彼女たちをうまく乗せて、女性たちならではの能力(腕力ではない)を最大限に活かした計画を実行させ、それぞれのちょっとした後日譚まで用意するという、ケイパーものというジャンルとオーシャンズシリーズの醍醐味をどちらも兼ね備えた作品に仕立てた手腕は見事でした。
 
「痛快ではあるが、ガッツポーズしたくなるようなカタルシスには欠ける」とか、「もっとトラブルや葛藤があっても良かったのでは」とかいった意見が出てくるのはよくわかるんですが、これをあくまでリブートの1作目だとするなら、僕はこれくらいのバランスがちょうど良い加減だと思います。確かに、物語終盤の「ひねり」として機能する、オーシャンズ「7」ではなく「8」の意味がわかるところはある程度予想がつくけれど、僕は「意外性」に重きを置かずして観たので、がっかりなんてまるでしませんでした。
 
今作の肝は、あの宝石すら敵わないような華麗さにあるんです。それはキャストが身につけるお色直しいっぱいの装いしかり。構想5年というデビー・オーシャンの奇想天外なアイデアしかり。そして、この時代にフィットする要素ですが、人種的多様性を意識したキャスティングの女性たちがほぼ自力でデカイことを成し遂げるという設定しかり。だから、裏切りやら不測の事態で彼女たちが窮地に陥ったりするのは、次作以降のお楽しみなんですよ。
 
敢えて言うなら、その手で見せるかっていう、映画的な仕掛けももう少しあるとベストでしたが、それは贅沢というものかもしれません。
 
結論としては、新シリーズのお膳立てとして、船出として、次なる「オーシャンズ9」を観たくなるフリとして、申し分ない1本だと言えます。ま、次作の製作はまだ発表されていないわけですけど、観たいんですよ、ぼかぁ!

もともとこのシリーズはリメイクなんですね。1960年にフランク・シナトラがリアルな自分の仲間たちと一緒に出演した『オーシャンと十一人の仲間』がオリジナルでした。今回はそのシナトラの娘ナンシー・シナトラが歌う『にくい貴方』(These Boots are Made For Walkin’)が「ここ!」っていう場所で使われていますが、それこそ「にくい演出」で、女性にバトンパスして新シリーズはスタートさせてもらいますよっていうことがサントラでも表明されている格好です。

さ〜て、次回、8月23日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ペンギン・ハイウェイ』です。僕もファンの作家森見登美彦原作がまた映画になりました。湯浅政明監督で鳴り物入りだった『夜は短し歩けよ乙女』とは対称的に、こちらはこれが長編初監督の石田祐康。さて、出来栄えは。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!