京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2018年9月13日放送分
映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』短評のDJ's カット版です。

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90年代半ば。同じ女子校に通っていた高校生6人は、サニーというグループを組んでダンスをするなど、何をするにも一緒。他のグループと時に小競り合いを繰り返しながらも、あの時代の青春を謳歌していました。20年以上の時が流れて現在。専業主婦の奈美は、かつての親友でサニーのリーダーだった芹香と偶然再会します。しかし、芹香は末期がんのため入院中で、余命はわずか1ヶ月。「死ぬ前にもう一度サニーのみんなに会いたい」。奈美は芹香の願いをかなえるため、高校時代以来会っていなかった4人の友だちを探し始めます。
 
日本でもスマッシュヒットした2011年の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を、川村元気の企画により、『モテキ』『バクマン』などの大根仁が脚本を書きメガホンを取ってリメイク。現在パートと過去パートがあるということで、基本的にそれぞれのキャラクターがダブルキャストになっています。たとえば現在の奈美は篠原涼子で、過去の奈美は広瀬すずみたいなことです。板谷(いたや)由夏、小池栄子ともさかりえ渡辺直美らが顔を揃えた他、池田エライザ山本舞香三浦春馬リリー・フランキーなどが出演しています。

サニー 永遠の仲間たち (字幕版) モテキ DVD通常版

90年代J-popが計11曲流れるサウンドトラックが話題となっていますが、オリジナルの劇伴24曲を手がけたのは、まさに90年代のシンボル小室哲哉です。
 
それでは、94年に高校に入学した僕、つまりドンピシャで主人公たちと同世代のマチャオがどう観たのか。制限時間3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

企画が動き出したのは6年前。主人公たち「コギャル世代がアラフォーになるまで待っていた」とのこと。実はオリジナルの過去パートというのはもっと時代が前で、1980年代の韓国の民主化運動を背景にしていました。監督を含めた製作陣は、お話の流れはそのままに、時代設定を90年代半ばに変更。だから、たとえば奈美には高校生の娘がいるということを踏まえると、確かにアラサーよりはアラフォーでないといけないっていう必然性が出てくるんですが、やはりこのリメイクを評価するにあたり、なぜ90年代半ばなのかということを考えないといけません。
 
既にバブルは崩壊。主人公たちはまだ高校生ということで、そのあぶく銭の恩恵を受けることも直接はなく、阪神淡路大震災、そして地下鉄サリン事件が続けざまに起こり、どんよりとした不安が社会を覆っていました。そんな中で、刹那主義だとか快楽主義だという批判はあるかもしれないけれど、とにかく今を謳歌する、でっかい夢なんて無くてもいい、小さな喜びを大切にする価値観が出てきた。先日さくらももこが亡くなった時にもいいましたけど、そういう個々人のささやかでも確かに幸せなことを尊び始めた平成の始め。音楽業界はバブルを後ろ倒しして、ユーロビートを取り入れたダンスミュージックが席巻。その中心にいたのは、ご存知小室哲哉であり、trfであり、安室奈美恵でした。
 
コギャル、ガングロ、ルーズソックス、ブルセラ、テレクラ、援助交際。世間を賑わせた女子高生たちのこうした表面的・記号的な要素を、この映画ももちろんベースにしてはいるんですが、サブタイトルは「強い気持ち・強い愛」なんですよね。そこは小沢健二なんです。物語的な理由は映画を観てもらうとして、彼女たちの心を捉えたのは、オザケン的価値観なんだというのが大根監督のメッセージじゃないでしょうかね。
こんな歌詞があります。
 
「すべてを開く鍵が見つかる そんな日を捜していたけど なんて単純で馬鹿な俺
 
いくつの悲しみも残らず捧げあう 
 
長い階段をのぼり 生きる日々が続く」
 
家族でも恋人でもない、友だからこそ分け合える喜怒哀楽があって、「今のこの気持ちほんとだよね」と。
 
今回のリメイクには、安室奈美恵も引退を報じるワイドショーのTV画面に登場。それを眺める奈美は篠原涼子。こういうキャスティングがもう絶妙です。大根監督お得意の小ネタ満載な時代描写もお見事、どの役者も好演していて、選曲も良し。ストーリーの骨格はもともと評価の高いオリジナルを踏襲。一旦の結論として、平成30年、今リアルタイムで観ることに強烈な意味がある快作だと言えます。
 
ただし、いくつか言いたいこともあります。話の性質上、どうしても比較してしまう先週の『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』と比べ、過去と現在の行ったり来たりの見せ方がわりとストレートなので途中ダレが来てしまうこと。J-popをある種のギャグとして使うのはいいけど、全体的にこれもストレートにマンガ的過ぎてスローとか入ると浮いちゃうこと。そして何より、いくら何でもノスタルジックに過ぎないかと。そのせいで、この世代で閉じてる印象もあるのが、どうなんだと。
 
というのも、この話の最大のポイントはラスト、これからもイキイキと女性たちが仲間で感情を分け合って生きていけるんだってところだと思うんで、そのスピリットが広がる描写もあればと僕は思いました。「マンマ・ミーア」と続けて観たから余計にね。
 
とはいえ、日本版青春音楽映画の快作ってのは間違いなし。いつ観るの? 今でしょ。

さ〜て、次回、9月20日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『プーと大人になった僕』です。鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく! と、いつものように書いていますが、この記事をアップしているのは、20日(木)の番組終了後。番組を1週間まるごと休んで休暇を取っていたため(映画コーナーは録音での対応でした)、すっかりこちらへの掲載を失念しておりました。でも、そこはプーのスピリットに習ったものとして(?)、ひとつお許しを。