京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ペット2』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2019年8月1日放送分
映画『ペット2』短評のDJ's カット版です。

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ニューヨークで一人暮らしの女性ケイティーと暮らす小型犬のマックスとフサフサの毛をした大型犬デューク。ある日、散歩中に出会った男性チャックと恋に落ちたケイティーは、結婚してリアムという息子を出産します。家で主役の座を奪われたマックスはしばらく戸惑うものの、歩き始めたリアムとしだいに打ち解け、今度は人一倍、いや、犬一倍、リアムの一挙手一投足を心配そうに見守る過保護な親のようになります。ただ、行き過ぎた心配性が仇となり、そのストレスで動物病院に連れられた彼は、首にエリザベスカラーを装着されます。そんな折、家族で田舎の農場へ旅行へ出かけるのですが、マックスがそこでどんな試練を受けるのか、そしてマックスが留守の間、ニューヨークのペットたちも騒動を起こしてしまいます。うさぎのスノーボール、でっかい猫のクロエなど、前作で活躍したキャラクターに加え、農場の猟犬ルースターやサーカスのホワイトタイガーであるフーなど、新しい動物たちも登場します。

怪盗グルーのミニオン危機一発 (吹替版) SING/シング【通常版】(吹替版)

「怪盗グルー」シリーズや名作『SING/シング』で知られるイルミネーション・エンターテインメントが贈る動物たちのドタバタコメディ、2016年に続く第二弾となります。原題は“The Secret Life of Pets”なので、「知られざるペットの生態」ってな感じでしょうか。監督は前作に続いて、クリス・ルノー。脚本家も続投です。字幕版では、新キャラである猟犬ルースターの声をハリソン・フォードがあてていることで話題を作りました。
 
僕は吹替版で鑑賞しました。前作に引き続き、マックスとデュークのコンビを、それぞれバナナマン設楽統(おさむ)と日村勇紀が演じています。ちなみに、ルースターは内藤剛志ですね。
 
そして、今回併映される短編作品は『ミニオンのキャンプで爆笑大バトル』です。
 
それでは、金魚以外のペットを飼ったことがない僕がどう観たのか。制限時間3分の短評、そろそろいってみよう!

ディズニーやピクサーと比較してみた時に浮かび上がるイルミネーションの大きな特徴は、とにかくキャラクターの魅力を突き詰めているってことです。しかも、行儀のよろしくない、決して模範的ではないキャラを好むわけです。グルーは泥棒だし、そもそも得体のしれないミニオンたちは悪党に仕える。グリンチは天下一のひねくれもの。『SING/シング』の劇場主でコアラのバスター・ムーンですら、夢を見るのはいいけど、だいぶ問題のある奴ですからね。まともな奴なんて出てこない。キャラクターの破天荒さ、悪さ、常識を軽々と超えていく痛快さに、僕たちはフィクションとして、また現実を突き抜けるアニメーションとしての快楽を覚えているんだと思います。
 
前作の『ペット』もまたその典型で、飼い主が家にいない間に動物たちがしでかす(人間にしてみれば)悪行を、スクリーンという蚊帳の外から、対岸の火事として見物するという構図がヒットの要因でした。『SING/シング』でも発揮されていた、各動物たちの実際の習性や人間側のイメージをそれぞれのキャラクターに戯画化して織り込んであるので、動物「あるある」や「ありそう」ってなネタで笑いのジャブを打った後、それをひねってエスカレートさせて盛り上げを作っていました。

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では、続編となる今作はどうか。大きな変化がふたつあります。その1は、リアムという子どもが登場したこと。その2は、ニューヨークから外へ出ること。それぞれ検証しましょう。
 
まずは子どもから。彼がいることで、面白いことに『トイ・ストーリー』っぽくなるんですよね。もともと、「人間の暮らしに密着しながらも人間の感知しないところで、コミュニティーが形成されているとしたら…」という着想は似ている両シリーズですが、リアムくんを心配して手助けしてやろうという小型犬マックスの行動も感情も、ウッディーに似ているわけです。しかし、現実にはウッディーはおもちゃであって、マックスは生き物。ウッディーのように、自分の存在意義はどこにあるのかといった実存的な問いをマックスがすることはなく、ただただ心配が積もり積もって医者に診てもらうというギャグにサラリと落とし込んであります。ただ、うまいなと思うのは、本来の住処とは言えないニューヨークという大都会で動物たちが暮らすと、これに限らず環境負荷によるストレスってペットは抱えちゃうよねっていう、人間のご都合による災難という風刺は病院での他のペットたちの描写からうかがわせている点ですね。

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そんな前置きを経て、その2ですよ。彼らはニューヨークを出て、本来いるべき場所とも言える自然いっぱいの農場へ出向くわけです。ここでは、たくましくダンディーな猟犬ルースターとの出会いがあって、言わば都会っ子で動物としての本能を忘れかけたマックスが導かれて成長していきます。
 
ざっとこうした変化があるわけだけど、はっきり言って、これだけじゃ弱いんですよね。だって、原題の「知られざるペットの生態」って部分が途中から抜け落ちるし、物語をドライブさせる悪役もいない。そこで、もうひとひねり。マックスやデュークが留守中のNYの顛末を描こう。前作で悪役だったうさぎのスノーボールが、今回はスーパーマンなどヒーローに憧れる空威張りのスカした野郎として、依頼に基づき、悪徳サーカス団に囚われているホワイトタイガーを救出するというエピソードや、マックスにホの字のメス犬ギジェットがマックスから預かったおもちゃを巡る騒動も付け加え、それらを編集でコロコロと場面転換しながら群像劇風に語っていくという構成にしてあります。

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何だか楽しそうに聞こえますね。実際楽しいです。飽きないです。ただ、これもイルミネーションの大きな特徴ですが、脚本は強引です。キャラクターのアクの強さは天下一品ですが、そこを重視するあまり、お話の調和は取れていません。色んな人がいてこの社会は成り立っていることを肯定するダイバーシティやホワイトタイガーが象徴する移民・難民の問題への目配せくらいはあるものの、何か立派な教訓やメッセージも無いに等しいです。でも、定番のギャグから臆面もないパロディーまで笑えるところは山盛り。お行儀は悪いし、まとまりには欠けますけど、とにかく楽しませますよという、あっけらかんとした心意気。僕は買います。3の製作も予定されているようだし、この夏、頭を空っぽにして、安心して楽しめるダークホース『ペット2』を劇場で楽しんでください。


いくらニューヨークが舞台だからって、冒頭にこの超のつく有名曲を流してしまうという臆面のなさが、もうむしろイイぞって気がしてくるから不思議です。実際、ニューヨークは魅力的に描かれているからいいんだけどさ。


さ〜て、次回、2019年8月8日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』です。アニメが3週続いたんでそろそろ実写がみたいなと思っていたら、もはやアニメ以上に荒唐無稽な展開をみせている大人気シリーズの新作がブルンブルンとやって来ましたよ。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!