京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2019年8月8日放送分
映画『ワイルド・スピードスーパーコンボ』短評のDJ's カット版です。

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2001年、21世紀とともに始まった『ワイルド・スピード』シリーズ。英語では、『The Fast and the Furious』1本も観ていないという方も、何となく、カスタマイズしまくった車をストリートでガンガン走らせる屈強な男たちとグラマラスな女たちの話っていうイメージくらいは、ポスターからも受けると思います。これまで8本公開されていまして、ざっくり言うと、人気も評価もだんだん上がってきているという、珍しいシリーズです。ただ、もはやどっちの車が速いか、どちらのハンドルさばきが巧みかとか、そういう話ではもう無くなっていまして、ここのところは登場人物が世界の危機を救ってます。車も使うアクション映画って感じです。で、今回は初めてのスピンオフです。元FBI特別捜査官で、ドウェイン・ジョンソンが演じるルーク・ホブス。そして、もともと敵役だった元MI6エージェントで、ジェイソン・ステイサムが演じるデッカード・ショウを主役にしたバディものになっています。なので、原題は、『Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw』。シンプル。スーパーコンボなんてどこにも書いてないんだけど、半笑いにさせてくれる邦題としては成功していますね。

ワイルド・スピード - スカイミッション (字幕版) ワイルド・スピード ICE BREAK (字幕版)

今回、ホブスとショーの元には、行方をくらませたMI6の女性エージェント・ハッティを保護してほしいとの協力要請が、それぞれ政府から入ります。ショウの妹でもあるハッティは、人類に甚大な被害を及ぼす新型ウィルス兵器をテロ組織から奪還したものの、その組織を率いる超人的なサイボーグのブリクストンに襲撃され、ウィルスと共に消息を絶っていたのです。ホブスとショウは、もともといがみ合っていたふたり。こいつとだけは組みたくないと罵り合うものの、事態の深刻さを鑑みて、しぶしぶながら依頼を引き受けます。ただ、メディア操作もできるテロ組織は、ハッティ・ホブス・ショウの3人をテロリストだと見せかける工作をしたもんだから、さあ大変。
 
ドウェイン・ジョンソンジェイソン・ステイサムの他に、ヴァネッサ・カービーがハッティ、イドリス・エルバがブリクストンをそれぞれ演じます。また、ヘレン・ミレンエイザ・ゴンザレス、さらにはノンクレジットですがライアン・レイノルズも出演しています。

ジョン・ウィック(字幕版) アトミック・ブロンド(字幕版)

監督はデヴィッド・リーチ。『ジョン・ウィック』『アトミック・ブロンド』など、僕の好きなアクション映画を撮っているスタントマンのデヴィッド・リーチ。そして、脚本は『ワイルド・スピード』シリーズ常連のクリス・モーガンです。
 
それでは、制限時間3分の短評、そろそろいってみよう!

当たり前のようにさっきも使ったバディという言葉。仲間、相棒という意味ですが、この作品はそのバディもののお手本とも言えるキャラクター配置をしています。そして、ワイルド・スピードらしいカーアクション要素と、ファミリーの大切さという一貫したテーマを押さえつつ、デヴィッド・リーチ監督ならではの狭いところでの格闘という要素も盛り込んであります。これだけ盛りに盛っているので、ついつい笑っちゃうスーパーコンボという邦題も、映画を観終わる頃には、確かにこれは言い得て妙だと思えてくるんですよね。というわけで、相変わらずのむちゃくちゃな展開なんかもあるっちゃありますが、スピンオフとしての成功を超えて、シリーズ全体でも屈指の満足感、満腹感が味わえる1本であることは間違いないです。

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ひとつひとつ、整理しますね。まずはバディもののお手本だという点。バディものは、最初から仲が良かったら面白くないわけですよ。水と油っていうようなふたりが、なんだかんだと揉めながら、仕方なく一緒に何か作業するうちに、あれよあれよと協力しちゃう。そして、「お前ら、名コンビやないか!」となる。 こういうのが盛り上がる展開です。今回もそれを踏まえた作りになっていて、冒頭から画面をふたつに割って、ホブスとショウの1日の行動を同時に見せていましたよね。あれはうまい。LAとロンドン。パジャマ、朝食、トレーニング、乗り物、悪いやつを懲らしめるまで。ふたりの性格と手法の違いと、実は似通っている価値観を、同じ行動で見せていきます。しかも、これはシリーズの利点ですが、ふたりはこれまでもいがみ合っていたわけなんで、巡り合ってからの仲違いがまた桁違いに面白い。ここはね、ガラス張りの部屋でふたりとも罵り合うんですよ。言葉のボクシングを展開する。今回はお喋り野郎『デッドプール』でお馴染みのライアン・レイノルズも出演していましたが、この子どもの喧嘩的な罵倒の押収も加わっていて笑えます。考えたら、今ハリウッドで一番儲けているかもしれないドウェイン・ジョンソンも、最近は『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』で見せたような、行き過ぎた筋肉キャラを活かしたコミカルな演技も得意になってきていて、そうしたコメディー要素もきっちりシナリオに入れてきた脚本家クリス・モーガンの手腕が光っています。

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続いて、カーアクション。特にロンドンでのバイクとスポーツカーのチェイスシーンはすごかったですね。あそこは、ショウの運転技術が大車輪の活躍。道を塞がれたトレーラーの下に潜り込んでいくところなんて、声を上げそうになりました。あとは、やはりサモアでのヘリとトラックたちによるチェイス。このシリーズの魅力は、マジでやるっていうとこですけど、ヘリもCGではないですから。低空飛行させて、車も走らせて撮ってます。もはやミッション・インポッシブルの世界です。そこでの「ニトロだ!」は、シリーズファンとして、待ってました感もあって盛り上がります。
 
でも、今回のスピンオフで重きがおかれたのは、むしろ、デヴィッド・リーチ監督が得意とする、狭いところでの格闘ではないでしょうか。武器はなくとも、その場にあるものなら何でも使って相手を倒すというアイデアと、それをかっこいい動きとしてみせるリーチ演出はさすが。このあたりは、特に女性のハッティや、ガタイの良さではホブスに負けるショウにいい場面がたくさんありました。

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最後に、ファミリーの美徳。ショウにとっては、これは妹を救うミッションでもあるわけだし、獄中の母親まで出てくるんで、まさに家族の話。そして、ホブス側は娘との会話から始まり、やがては故郷サモアでの大家族との再会+出自の謎が明かされるという展開。そして、バディものの約束として、水と油のふたりが融和していくというファミリー感。こう並べると、シリーズでもテーマの掘り下げはトップクラスです。
 
ただ、苦言を呈するところもふたつあります。ブリクストンのサイボーグっぷりが行き過ぎてて、ひとりだけアベンジャーズの世界からやってきたみたいなんですよ。さすがにちょいと浮いてました。あとはやっぱり、尺ですね。2時間15分はさすがに長い。酒を飲んだり、大移動したり、口喧嘩したりっていう部分を刈り込みつつ、カーアクションももう少しタイトに見せれば、あと10分は短くなったでしょうから。
 
極端な話、シリーズにここから入るのもありっていうスピンオフですので、一定以上の面白さはしっかり担保された1本として、あなたも安心して劇場でどうぞ。


挿入歌からラジオヒットが生まれるような感じではないものの、サントラ全体としては今回も充実していましたよ。番組では、僕の好きなAloe Blaccによるこの曲をオンエアしました。


さ〜て、次回、2019年8月15日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ライオン・キング』です。超実写版っていう触れ込みですが、それが一体何のか、正直あまりピンと来ていないので、この目で確かめてきます。ちなみにミュージカルに疎い僕は、お話はよくわかっておりませんが、ファンはすごく多いですよね。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!