京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 12月31日放送分
映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』短評のDJ'sカット版です。

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エピソードIV「新たなる希望」の公開から42年。遠い昔、はるか彼方の銀河系を舞台にスカイウォーカー家を中心に繰り広げられてきた、壮大なサーガがついに完結です。伝説の騎士ジェダイルーク・スカイウォーカーの想いを受け継いで、銀河を司るエネルギー、フォースを前作で覚醒させたレイ。そして、祖父ダース・ベイダーの遺志を受け継いで宇宙を支配する組織ファースト・オーダーの幹部として指揮を執るカイロ・レン。ライトサイドとダークサイド、光と闇を象徴するこのふたりの宿命の対決はどうなるのか。R2-D2C-3PO、BB-8、レイア将軍、天才パイロットのポー、元ストームトルーパーのフィン、レジスタンスの同志、ハン・ソロ、彼の良きライバルのランド・カルリジアン、チューバッカ、ルークなどなど、旧三部作、新三部作、そしてこの続三部作に登場する様々なキャラクターたちも華を添えながら、新たなる夜明けはどう訪れるのか。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (字幕版) スター・ウォーズ/最後のジェダイ (字幕版)

 監督・脚本は、続三部作の陣頭指揮を執ってきたJ・J・エイブラムス。前作「最後のジェダイ」を監督したライアン・ジョンソンは、今回は結局関わりませんでした。シリーズのオリジネーターであるジョージ・ルーカスは、作品の権利を製作会社ごとディズニーに譲り渡したわけですが、新しい構想がディズニーから却下されているということで、この買収以降のエピソード7から今回の9というのは、ディズニーの上層部とJJたちの合作ということになります。もちろん、丹念なマーケティングに基づいたものです。なので、最初から3作がきっちり練られていたというよりは、毎度、作っていった感じとのことですが。

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(C) 2019 and TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
レイアは、亡くなったキャリー・フィッシャー。『フォースの覚醒』の未使用テイクを合成しました。レイをデイジー・リドリー、カイロ・レンをアダム・ドライバー、フィンをジョン・ボイエガ、ポー・ダメロンをオスカー・アイザックが演じています。

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僕は今回、ブルク7でドルビー・シネマのデビューを果たしてきましたよ。2D字幕版。黒がしっかり黒ってのが良かったです。しかも、スクリーンの入口から気分を高める仕掛けがあって、かなり満足の鑑賞となりました。それでは、容姿がわりかし似ていることから、人呼んで南森町アダム・ドライバー、つまりはカイロ・レンことマチャオ、今年最後の映画短評いってみよう!

旧三部作を劇場で観た世代がいて、僕のように新三部作から劇場で観てきた世代もいるし、もちろん続三部作からという若者たちもいるわけです。そのすべてのファン層を相手に、広げきった風呂敷を畳む役割を担ったJ・J・エイブラムスの気苦労たるやといったところですが、先に結論めいたことを言うならば、JJは手堅いってことです。2時間22分の長尺ながら、まったく中だるみすることなく、要所に見どころを散りばめて、きれいなラストに着地させるという、まとめる手腕は、さすがって感じでした。スピルバーグを想っての『SUPER8/スーパーエイト』を撮り、『ミッション:インポッシブル』『スター・トレック』という超人気シリーズを続々と手掛けた人物ですからね。今作も、何かええもん観たぞという気にさせてくれます。そしてこれまで描かれてきた要素もきっちり出てくるし、女性が活躍して、黒人やアジア系もいれば、スター・ウォーズで初めて同性のキスシーンまであって多様性にも配慮しているし、言うことないんじゃないか。と、観終わった直後は思ってしまうほどです。
 
ただ、そのまとめ上手が災いしたというべきか、サービス精神に溢れすぎて、過去作へのリスペクトばかりが先行して、肝心のオリジナリティーに欠けているのではないかという批判が、『フォースの覚醒』で起こりました。で、J・Jからバトンを受けて、ライアン・ジョンソン監督はケレン味溢れる絵面で、私達を魅了。したんですが、確かに血湧き肉躍るものの、どんでん返しのためのどんでん返しが多く、『最後のジェダイ』は152分かけたわりに、スケールが小さく感じられたし、フォースが民主化されたのはいいんだけど、そのフォースが万能すぎて、「それがありやったらさ…」という不満を残したと僕は評しました。

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スター・ウォーズというのは、宇宙を舞台にした神話であり、ファンタジーであり、戦記であり、冒険活劇の娯楽作です。その長きにわたる歴史は、技術の進化とともにありました。だからこそ、旧三部作から新三部作までも16年の時間が必要だったわけです。その意味で、続三部作にも、溢れる情熱に満ちた、物語のパターンを超えるある種のいびつさを含んだ、わくわくさせるサムシングが求められていたことも確かだと思います。ところが、実際に用意されたのは、マーケティングに基づいた、見所を作るべくして作った、帰納法的に整理された小綺麗な物語という商品でした。予定調和的で、要はリスクを回避しすぎているってことです。難題ではあるけれど、一応ひと連なりの物語である以上、途中でルーカスが排除されてしまったことによる弊害を感じざるをえません。

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さっきも言ったように、面白く観たことは事実なんですが、死んだ人物が生き返るほどのフォースが乱発されたことには、今回もめまいがしました。ともするとスカイウォーカー家とその周辺の出来事だけに感じられなくもない話を、前作で血縁から解き放って開かれたものにしたはずなんですけど、今回の展開だと、結局元の木阿弥は言い過ぎにしても、やっぱり特権階級のものなのかという感じしちゃうんですよね。まるでカイロ・レンが金継ぎよろしく手下に修復させたマスクのように、ノスタルジーに満ちたあれこれを継ぎ接ぎすることに時間を割いてしまい、すべての対立の根源である光と闇の拮抗、人はなぜダークサイドに堕ちてしまうのか、そこに一条の光を差し込むジェダイたちライトサイドの力の源はなんなのか、そこを掘り下げる展開を観たかったとも想うのは贅沢にすぎるのでしょうか。僕には結局パルパティーンという悪の姿がよくわからなかったんです。
 
なんて具合に、結局もやもやした気分が抜けない僕ではありますが、ともあれ、これをもってスター・ウォーズは一応の完結をみました。がしかし、前作のライアン・ジョンソンが中心となっての新たな三部作が構想されているようで、ディズニーは2022年から1年おきに公開する模様です。マジか… ま、ドル箱ですからね… 開かれたスター・ウォーズが、本当の意味でスカイウォーカーという血脈から解き放たれて、フレッシュな魅力が爆発することを願ってやみません。
どうでもいいことですけど… レイたちが砂地獄に落ちて大変な目に遭うところで、ライトセーバーが懐中電灯の代わりになるってところは、思わず「そんな使い方もあるのか! 欲しいぞ!」と思ってしまいました。あのシーンだけに、完全に蛇足な感想ですけどね!
さ〜て、次回、2020年1月7日(火)、新年1本目に扱う作品は、スタジオの映画神社でおみくじを引いた結果、『テッド・バンディ』となりました。いやぁ、新春早々、実在の殺人鬼のお目見えです。どんなあんばいなんでしょうか。僕は予備知識ゼロですわ。鑑賞したら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!