監督・脚本は、続三部作の陣頭指揮を執ってきたJ・J・エイブラムス。前作「最後のジェダイ」を監督したライアン・ジョンソンは、今回は結局関わりませんでした。シリーズのオリジネーターであるジョージ・ルーカスは、作品の権利を製作会社ごとディズニーに譲り渡したわけですが、新しい構想がディズニーから却下されているということで、この買収以降のエピソード7から今回の9というのは、ディズニーの上層部とJJたちの合作ということになります。もちろん、丹念なマーケティングに基づいたものです。なので、最初から3作がきっちり練られていたというよりは、毎度、作っていった感じとのことですが。
アイザックソンの『レオナルド・ダ・ヴィンチ』レビュー
どうも、僕です。野村雅夫です。
世界で最も名を知られたイタリアの人物(だろう)レオナルド・ダ・ヴィンチ。今年は没後500年にあたり、日本でもたくさんの関連本が刊行されましたが、その中でも最高峰との呼び声高いウォルター・アイザックソンのものが、文藝春秋から春に上下巻で出ていました。遅ればせながらではありますが、アニヴァーサリー・イヤーのうちに、あかりきなこがレビューを書いてくれたので、以下、どうぞご一読を。
イタリアの人たちは「レオナルド」と聞けば「レオナルド・ダ・ヴィンチ」を自然に連想するそうだ。2019年は、かのルネサンスの巨匠の没後500年であり、日本でも関連本が何冊も出版された。
ひときわ目を引かれたのが「7200ページの直筆メモ」をもとに、レオナルド・ダ・ヴィンチという「人間を」考察した本書である。
「私が伝記作家として一貫して追い求めたテーマを、彼ほど体現する人物はいない」と言うアメリカの評伝作家ウォルター・アイザックソンによって2017年に出版され、日本語版は、今年3月、土方奈美さんの訳により刊行された。私は美術作品には疎いが、多才なレオナルドの人となりにずっと関心があったので「よくぞ書いて、訳してくれました!」とすぐさま本屋に走りたい気持ちになった。
本を手に入れ、目次に初めて目を通したとき、様々なキーワードで章立てされていることに気づいた。そのとき起きた感情は、色んなレオナルドが知れそうだという「わくわく感」と、内容を自分の中で整理できるだろうかという「軽い不安」。しかし後者は杞憂であった。実際には時系列に沿って並んでいて、レオナルドの興味や作風の変化が分かりやすい構成になっている。「レオナルドの人生の詳細についてはさまざまな説がある」が「本書では最も信憑性が高いと思われる説を書き、異論・反論については注で触れている」とあるように、レオナルドの実態に極限まで迫ろうと試みたことが分かる。文章は冷静な視点を基本にしながらも、彼への敬愛が随所で感じられる。レオナルドは研究の成果を論文にまとめたいと言いながら一度もなしえなかったそうだが、他の人たちに伝えたいという彼の夢はアイザックソンによってまた新たに実現されたといえる。
特に、研究ためのスケッチの余白に書かれたメモやいたずら書きの分析が面白い。一見几帳面なレオナルドがメモの書き込み時期やテーマごとの分類にはこだわらなかったことが、現在も私たちの想像力をかき立てている。逸話と総合して筆者が記したレオナルドの日常生活や心情の推察は、動きや色を伴って私の中の薄っぺらいレオナルド像にたっぷりと肉付けをしてくれた。教科書やテレビでよく紹介される「長いひげをたくわえた老齢期の自画像」の顔になるまでに、なんと様々な経験をしたことか。知らなかったことを知ることも、自分の勝手なイメージが修正されるのを感じるのも心地よかった。
意外だったのは、筆者が冒頭からレオナルドは「ふつうの人間でもあった」と強調していたことだ。「「天才」という言葉を、安易に使うべきではない」と。筆者は下巻の第33章でその根拠と「彼に学び、少しでも近づく努力はできる」として、スティーブ・ジョブズも引き合いに出し、現代の私たちにもできることを挙げている。確かに言われてみればできそうな気もすることばかりなのである。それらに気づいた筆者の洞察力はレオナルド並にすごいと思う。私はといえば、レオナルドとは時間や地理的な要素も含め違うことが多すぎて、最初から彼を完全に自分から離れた存在としてとらえていたからだ。特に「脱線する」ことでレオナルドの知性が豊かになった、という部分には励まされる。自分の寄り道も何らかの糧になっていると信じたい。
最後に注目すべきは「訳者あとがき」にある映画化の話だろう。縁あって同じ名前をつけられたレオナルド・ディカプリオが主演という。現在の進捗状況は明らかになっていないが、制作陣がレオナルドのように未完で放り出さないよう願いながら、引き続き楽しみにニュースを待ちたい。
※出版社のサイト『文藝春秋BOOKS』では「おすすめ記事」でヤマザキマリさんも書評を書かれています。別の魅力を紹介されていますので、こちらもぜひ♪
<文:あかりきなこ>
『ラスト・クリスマス』短評
ロンドンのファンシーな雑貨店で働く歌手志望の女の子ケイト。クリスマスを前に、妖精エルフのコスチュームに身をまとう彼女ですが、オーディションはうまくいかず、ヘマをやらかして居候先の友達の家から追い出されてしまいました。そんな中、ケイトのことを何かと気にかけてくれる青年トムが登場。彼はそそっかしいケイトの様々な問題点を見抜いて導いてくれ、しだいに彼女は心を寄せるようになるのですが、この時代に携帯を持たないトムとは会うのも一苦労。彼がボランティアをしているというホームレス支援の施設へ出入りするするようになり、ケイトはやがて世界の見方を変えていきます。
さらに、映画マニアでワム!大好きのポニーキャニオン・プロモーター岩渕氏が教えてくれて知ったんですが、あるシーンでチラリとアンドリュー・リッジリーの姿も垣間見えます。憎いキャスティングですね。
まずひとつは、個人の小さなお話を描きながら、イギリス社会の、いや、ヨーロッパの、ひいてはグローバルな社会テーマを高い志で語るものだったということ。冒頭で描かれるように、ケイトたち家族というのは、旧ユーゴスラビアからの移民なんですね。この番組でも何度もニュースでお伝えしてきたように、UKは主に年長者がもうEUに見切りをつけよう、離脱しようという声を大にしてブレクジットを進めてきて、年明けにもそれが確定するという流れがあるわけです。これは世界中で起きている現象ですけど、何か自分たちの意に沿わないことがあると、その不満というのは、異邦人に理由が押し付けられ、あいつらさえいなければ問題ないんだと短絡的に排斥されてしまう。ケイトたちも肩身の狭い想いをしていて、それは特に彼女が反りの合わないお母さんが体現しているんですが、彼女自身も名前をイギリスっぽくケイトとしているけれど、本名のカタリアは表に極力出さないようにしていました。悪目立ちしたくない、溶け込みたいという意識の現れです。
そして、もうひとつの思ってたんと違うのは、シンプルに歌の解釈です。まさかそんな風に『ラスト・クリスマス』が聞けるだなんて! それが物語になるだなんて! という目を見開いてしまう受け取り方をエマ・トンプソンはしていて、親交のあった生前のジョージ・マイケルにもこの物語の構想を話して承諾を得ていたのがすごいなと。人によってはね、このあたりは少々ファンタジックが行き過ぎてアクロバティックに思えるかもしれない筋立てと半笑いで受け取ることでしょう。あと、音楽映画だからもっと歌を大事にしてほしかったという声があるのもうなずけます。エミリア・クラークの歌は人を圧倒するものではないでしょう。でも、そこはジョージの歌があちこちで華を添えているわけですし、ケイトが今後歌を生業にする、つまり夢を叶えるというきれいなゴールよりも、僕は今回の流れの方がより現実的で良いと思うんです。クリスマスなんだもの。人にやさしく、歌をみんなで歌うのが良かろうと。
さ〜て、次回、2019年12月31日(火)、大晦日に扱う作品は、スタジオの映画神社でおみくじを引いた結果、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』となりました。どうも、先週からくじ運を映画神社に使っている気がしてなりません。あるいは、僕のフォースが目覚めたか。2020年の夜明けを前に、エピソード9が当たりました。鑑賞したら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!
『決算!忠臣蔵』短評
*1" src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41vh4TAf7zL.jpg" alt="「忠臣蔵」の決算書 *2" width="175" />
このコーナーに入る前に、今週はYESの『Money』をかけたんですが、もう1曲これをと思って、クレイジーケンバンド『スポルトマティック』をお送りしました。僕が20代半ばの頃、夢だけがあって金がなかった頃によくカラオケで熱唱していたナンバーです(笑)
さ〜て、次回、2019年12月24日(火)、クリスマスイブに扱う映画は、スタジオの映画おみくじを引いた結果、『ラスト・クリスマス』となりました。もうこのタイミングしかない、後がない(笑)、そんな絶妙な采配でしたね。自分でもびっくり。これ、評判いいですよね。鑑賞したら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!
映画『影踏み』短評
キャストは他に、真壁と学生時代から親交のあった久子を尾野真千子、真壁を兄貴と慕うチンピラのような男を北村匠海。さらには、中村ゆり、竹原ピストル、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶら豪華キャストが集いました。
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』短評
映画『ひとよ』短評
さ〜て、次回、2019年12月3日(火)に扱う映画は、スタジオの映画おみくじを引いた結果、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』となりました。ほんと、もう! なんなのよ! だいたい、スタジオのマイクの風防が赤いんですよ。ピエロっぽいんです。怖いんです。正直、嫌です(笑) とはいえ、前作も短評していたことですし、甘んじて受け入れるとしましょう。あなたも鑑賞したら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。