クリストファー・ノーランが手掛けたダークナイト三部作、完結から10年。共同製作と共同脚本、そして監督を務めたのは、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』や『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のマット・リーブス。ブルース・ウェインには、『TENET テネット』や「トワイライト」シリーズのロバート・パティンソンが扮したほか、レニー・クラヴィッツの娘ゾーイ・クラヴィッツや、ジェフリー・ライト、コリン・ファレルなどが出演しています。
『ナイル殺人事件』短評
『ドリームプラン』短評
『偶然と想像』短評
誘惑に右往左往する男たちの姿に『道徳とは果たして何か』と宙吊りにされるのみだ。しかし、面白い映画というのはそもそもそういうものなのだ。答えは宙吊りにされ、私たちは永遠に誘惑され続ける。
誘惑されて困惑する男たちってところも含めて、この濱口さんのロメールの評価は、そのまんま『偶然と想像』にも当てはまります。はっきり言って、海外での評価を受けての逆輸入状態になっている濱口作品ですが、誰もが知るスターが出ていようがそうでなかろうが、尺が短かろうが長かろうが、予算が多かろうが少なかろうが、安定して質が高く面白いものを世に出せる濱口メソッド、あなたも今のうちに接しておいてください。特にこの作品は入門としておすすめです。
『ドント・ルック・アップ』短評
社会派ダークコメディーを得意とする、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『バイス』などの監督、アダム・マッケイ。彼が監督・脚本・製作を務めた今作には、超豪華キャストが集いました。ミンディ博士にレオナルド・ディカプリオ、ケイト・ディビアスキーにジェニファー・ローレンスのほか、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジョナ・ヒル、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデと、すごいことになっています。
『The Hand of God』短評
そして、アカデミー賞の授賞式で観客の度肝を抜いたのが、マラドーナへの感謝です。マラドーナがいたからこそ、今の僕がいると。どういうことなのか。今作では、ソレンティーノが映画監督になってからも、37歳にいたるまで住み続けたナポリそのものの不思議と、世界的スターのマラドーナがナポリへやってきたことがいかに多くの市民に影響を与え、例のワールドカップにおける神の手ゴールによって自分が文字通り生かされた体験の不思議を描いています。マラドーナがいたからこそ、今の僕がいるという趣旨の発言は、誇張でもなんでもないのだと、これを観ればわかります。
冒頭、美しきあこがれのおば、パトリツィアの身に起こる宗教的かつ俗っぽくもある奇妙なできごとのシーンがありました。彼女は聖人と妖精に出会ったというのだけれど、夫からは浮気だと罵られて大騒ぎになる場面。ファビエットは、彼女の不可思議な体験を信じるんですよね。理性や理屈を超えて、その話を受け入れるわけです。そのスタンスが全体を通して満ちています。思わずあっけにとられたり、固唾を飲んでしまう、現実ベースなのに現実離れした映像の数々は、鑑賞後にも不意に脳裏に蘇るほど、すごいです。ラスト、主人公がナポリを離れて映画の都ローマへとひとり列車で旅立つ場面。車窓の外側からとらえたファビエットの顔には、ガラス越しに外の景色が二重写しになっていて、それが流れていく。ナポリで彼が経験した数々のできごとを僕たちも反芻しながら、人の営みや時代、街の不思議と、その中で地に足つけて自分の生を紡ぐのだと一歩踏み出す勇気をじわじわたたえるラスト。ノスタルジックであり、シビアでもあり、愛おしくもあり、忘れたいが、思い出される… 遠いナポリのユニークな映画でありながら、オトナの階段を登る若者の普遍的な有り様をしっかり描く。ソレンティーノ、やはり巨匠の域です。入門としてもオススメ。フェリーニを継承するイタリア映画の最高峰のひとつ、ぜひどなたもご覧ください。