映画『川っぺりムコリッタ』短評
映画でも冒頭で説明が入るので、まずムコリッタのことを話しておきましょう。僕は寡聞(ぶん)にして知りませんでしたが、これは仏教用語が由来とのことで、1日という時間を30分の1にした、48分という時間を指しています。しばらくの間、みたいな意味を持つわけです。まず、この単位が面白いなと思いました。僕がよく10時すぎに「番組はまだ小1時間生放送です」って口癖で言ってますが、それぐらいの単位ですよね。何かをするには短いささやかな時間だけれど、同じく仏教用語である刹那と比べるとうんと長く、考えてみたら、ムコリッタの間に昼は夜にもなりうる。映画を見るには短いが、食事をしたり、風呂に入ったり、ちょっとした庭仕事ならできる時間。ささやかだけれど、生きている実感が得られうる時間とも言えるかもしれません。
『3つの鍵』短評
さ〜て、次回2022年10月4日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『川っぺりムコリッタ』です。荻上直子さんが、まず小説を書いて発表し、それをご自分で脚本に仕立てて監督したという、珍しい流れでできあがった作品のようですね。ムロツヨシを筆頭にキャストも魅力的。あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!
『彼女のいない部屋』短評
共同製作、監督、脚本は、マチュー・アマルリック。『007 慰めの報酬』などに出演してきた俳優でありながら、『さすらいの女神たち』など監督としても知られる人ですね。現在来日中です。
今作はとにかく前情報がまったくなく、あらすじもわからないという状況で観る人がほとんど。もちろん僕もそうでした。だから、ネタバレに気をつけてお話をしますが、『彼女のいない部屋』は部屋に彼女がいる状態から始まります。主人公のクラリスは、ベッドの上にポラロイドで撮りためた家族写真を裏にしてランダムに配置して、まるで神経衰弱のようにめくっては裏返し、そのゲームの題名通り神経を衰弱、あるいは尖らせて、何度もやり直しをするんです。事情が定かではない僕たち観客は、これはいったい何が起きているのだろうと、家を出ようとする彼女に、あるいはそこで鍵を落として鳴ってしまったピアノの音に、目と耳をすませます。どこかに彼女の家出の原因が見つかるに違いない、聞こえるに違いない。そういうわけです。
『ブレット・トレイン』短評
ブレット・トレイン、弾丸列車。これは、弾丸のように目にもとまらぬ速さで駆け抜ける超特急で話が展開するのだという舞台装置と、その車内で実際に弾丸が飛び交うのだという内容の両方を簡潔に盛り込んだ、なかなかうまいタイトルです。原作は文庫で550ページを超えるとあって、そのまま映画にトレースするわけにはとてもいかないわけですが、脚本のザック・オルケウィッツは、「きかんしゃトーマス」やフルーツといったニヤリとくるエピソードを残しながら、「運」と「運命」というテーマを物語の軸として抽出。それぞれに前日譚を持ったキャラクターが、幸か不幸か、偶然か必然か、同じ列車に乗り合わせるという複雑な群像劇に仕立てました。その意味で新幹線が「ゆかり号」となっていたのは、これまたニクい。彼らはみな、ゆかりを持ってしまったわけですから。
『さかなのこ』短評
監督と共同脚本は『南極料理人』や『おらおらでひとりいぐも』の沖田修一。脚本は監督と中学高校の同級生である前田司郎。ふたりのタッグは『横道世之介』以来、二度目となります。ミー坊に扮したのは、なんとのん。理解者であり続けた母親に扮したのは、井川遥。他にも、幼馴染や友だちを柳楽優弥、磯村勇斗(はやと)、岡山天音、夏帆などが演じています。
みなさまおひとりおひとりに、夢中なことや大好きなこと、得意なこと、といった<宝物>があると思います。この映画は『さかなのこ』ですけれども、「うたのこ」「ねこのこ」「ケーキのこ」「しぜんかがくのこ」夢がたくさんでギョざいますね!! ぜひ、夢を大切に持ち続けて、この映画のラストで子どもたちと笑顔で走っているミー坊ちゃんのように、「レッツ・ギョー」でございます。
これはパンフレットに寄稿していた映画評論家、森直人さんの見立てなんですが、サントラを担当していたパスカルズの音楽が肝で、ミュージカルとして考えることもできるだろうと。面白い! 番組では、こちらも最高、CHAIの『夢のはなし』主題歌をたくさんのリクエストに応える形でお送りしました。