映画『ザリガニの鳴くところ』短評
残念ながら、僕は原作は積読タワーの中に埋もれたまんまでして、このタイミングでも読む時間を確保することがかないませんでした。そんな僕が言うのも妙な話ですが、これは原作にとってかなり幸福な映画化ではないかと思うんです。物語の舞台であるノースカロライナ州に住み、動物学者として活動してきた原作者ディーリア・オーエンズが、それなりに分厚いあの小説で精緻に描写した自然や主人公カイアの言動というのは、125分の映画にそっくり移し替えるなんてことはできないわけです。でも、原作を読んでから映画を観た人に話を聞けば、たとえば湿地帯の景色というのは文字からイメージしていたものにかなり近いのだそう。これは作家の言葉の表現力の賜物とも言えるわけで、オーエンズさんもこんなコメントを発表しているんです。「私が望んでいることの一つは、自然の風景や湿地、自然環境そのものの場面を観た人たちが、“観てよかった”と感じてくれることです。もし映像で接するのなら、湿地は、絶対に大きなスクリーンで見るべきものです」って、これ、オリヴィア・ニューマン監督への賛辞にも受け取れますね。カイアが金持ちの青年チェイスと初めて高い火の見櫓を登った時に、眼下に広がる広大な湿地帯を目の当たりにして口にする言葉「いつも横顔だけ見ていた友だちの全体を見た気分」というのは、原作を読んだ後にこの映画を観た人も同じ気持ちになるのではないでしょうか。
『ザ・メニュー』短評
映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』短評
さ〜て、次回2022年12月6日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『ザ・メニュー』です。これ、新聞で映画評を読んでいて面白そうだなと思っていたんですよ。孤島にある有名レストランに食事に来たカップルが、やはりおいしいものだと感心したまではいいものの、ふとしたことで違和感を感じて… レストランを舞台にどんなサスペンスが繰り広げられるのか。ちょいと怖そうだぜ。でも、僕も大好き『ドント・ルック・アップ』のアダム・マッケイがプロデュースですよ。ユニークな映画がラインナップされるサーチライト・ピクチャーズの作品ということもあって期待大。あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!
『窓辺にて』短評
監督は、現在41歳にして、これが17本目のオリジナル脚本作となる今泉力哉。フリーライター市川を稲垣吾郎が演じたほか、その妻紗衣を中村ゆり、女子高生作家を玉城ティナ、スポーツ選手を若葉竜也がそれぞれ担当しています。
だいたい近い場所に暮らす数人と、その友達の知り合いみたいな面々が、浮気や二股といったモチーフを通して、日常的な『サークル』を形成するように繋がっていく。その中で彼らは自己決定がゆらぎ、浮遊した関係性を生きる。まるで終わらないロンドを踊り続けるように。
さ〜て、次回2022年11月29日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『ミセス・ハリス、パリへ行く』です。1950年代のロンドンで家政婦として働くミセス・ハリスがディオールのドレスに一目惚れし、意を決してパリへと買いに出向いていく。でも、今でも高価なものなのに、当時のディオールなんていったら、そりゃオートクチュールだし、パッと買って帰るわけにもいかないでしょうに。ハリス、どうなる。あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!
『チケット・トゥ・パラダイス』短評
元夫婦をジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが演じます。『オーシャンズ』シリーズ以来、これで5度目の共演となります。エグゼクティブ・プロデューサーとしてもクレジットにも名前を連ねています。共同脚本と監督は、『マリーゴールド・ホテル』シリーズや『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』のイギリス映画人オル・パーカーです。