どうも、有北です。
悲しみに暮れて、友人たちの元を駆け去った僕です。
どこをどうたどったのかは定かではないが、とにかく僕は自宅に帰り着いていた。そう、愛すべき我があばらやに。
僕の部屋は2階だったので、階段を上ろうとすると、ちょうど階段の前にN君がいた。N君は僕と同じアパートに住んでいたナイスガイで、その頃は日々音楽活動に明け暮れていた。僕も彼に誘われて何度か彼のライブに足を運んだことがあるのだが、とにかく曲がどうこう言うより、そのバンドのメンバーであるベンジャミン山本という男のキャラクターが強烈だったことが強く記憶に残っている。とにかくN君は僕に言う。
「ちょっと、話があるんですけど。ここじゃなんなんで・・」
彼は僕を隅っこの方に連れていった。なんなんだろう、この言い知れぬ不安感は。彼の雰囲気からして、次のライブに来てくれなどという軽い話ではなさそうだ。金の無心か?だったら相談する相手を間違ってる。僕の危惧をよそに、彼は口を開く。
「実は、俺、こないだテレビに出たんですよ。」
思いもよらない報告だった。なんのことかわからず呆然とする僕に、さらに彼は言う。
「銭金っていう番組なんですけど。知ってます?」
『銭金』、知っているとも。あの貧乏を競う番組だろう。たまに観る。観るたび、身につまされる。しかし、まさか知り合いが出ていたとは・・
「実は、俺、その時番組のプロデューサーの人と仲良くなったんですけど・・参加者がかなり少なくて、困ってるらしいんですよ。有北さん・・どうですか?」
どうって?
「出てみる気はないですか?」