京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『バイオハザード:ザ・ファイナル』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2016年12月30日放送分
『バイオハザード:ザ・ファイナル』短評のDJ's カット版です。

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日本のゲームメーカー「カプコン」のゲームをベースにしたシリーズ一応の完結編。一応というのは、ミラ・ジョヴォヴィッチがアリス役、つまり主演をするのはこれが最後という意味で、別の形でシリーズが続く可能性はまったく否定できない、やりかねんということです。
 
監督は、何らかの形でシリーズすべてに関わっているポール・アンダーソン。ミラ・ジョヴォヴィッチの夫ですね。今回は娘のエヴァ人工知能レッドクイーン役で出演してます。ローラもちょっと出てます。シリーズを彩ってきた敵味方たちもだいたい出てきます。
 
おびただしい数のアンデッド(ゾンビのこと)が地上を埋め尽くす。生き残った人類はもう数少ない。48時間以内にウィルスに対抗する空気感染のワクチンを散布せねば! 例によってアリスが奮闘する中で、これだけのアンデッドを生み出したアンブレラ社と戦い、そこでアリス自身の秘密も明らかになっていきます。
 
27日火曜日の夜、FM802 RADIO CRAZY初日終わりに109シネマズ大阪エキスポシティへと車で駆けつけまして、4DX3D、足して7Dという強烈に刺激的な環境で観てきましたよ。今日は番組でのっけから4DXが聞きしに勝るもんだと吠えた僕ですが、あくまで、映画そのものの評価はクールに分けて考えます。
 
それでは、いつものように3分間の短評、いってみよう。

4DX3Dで観るのに最適と僕が言ったのには理由がありまして、一定以上ややこしい話だと、4DXみたいなアトラクションに乗りながら追っていくのはかなり困難だからです。ジェットコースターに乗りながら、日本の安全保障について考えるのは無理でしょう。気になる女の子を口説く方法ですら難しいかもしれません。その点、バイオハザードなら問題ありません。ナレーションがちょこちょこ入るくらいで、あとはアクションの釣瓶撃ちなので、観ていればわかります。そして、驚くべきことに、過去作を観ていなくても、ほぼわかります。僕がそうでしたからね。
 
映画シリーズのねらいについて、アンダーソン監督はインタビューでこう語ってます。主人公アリスは「記憶を喪失した状態で始まるから、観客と知識の差異がない。原作ゲームの知識がなくても、置いてけぼりになることがない」。いや〜、徹底してますね。原作どころか、シリーズ過去作の知識がなくても、一応ついていけましたから。ってくらいに、シンプルでありふれた話なわけです。監督はこう続けます。「1はお化け屋敷っぽい密室劇。2は町中アンデッドだらけの壮大なアクション。3はクレアという相棒が登場して『マッドマックス』的な黙示録展開になる。4は皆が囚われの身になり、5はアリスが追いかけられるチェイス映画」であると。そして、今回は舞台のラクーンシティーもそうですが、原点に立ち返ってサバイバルアクションホラーになってます。要するに、これはもう作家性と言っていいと思いますが、アンダーソン監督はアクションとその構図こそが映画であって、ストーリーはあくまでアクションのきっかけである。もっと平たく言うなら、かっこいい絵をバンバン撮りたいから、話は二の次三の次だってことでいいでしょう。そんなアンダーソン監督がやりたいように振り切ってやっている印象なので、僕はもうスカッとしましたね。
 
なぜこんなところに武器やバイクが都合良く転がっているんだとか、アリスはもはや不死身だよねとか、そういうツッコミはもういいんです。脚本のあらゆる箇所に、ご都合主義というウィルスが感染してしまっていますが、それで上等なんでしょう。
 
代わりに、ファイト一発的な見せ場がどっさり。監督自身もミラ・ジョヴォヴィッチも原作ゲームが好きということですけど、全体的にゲームっぽい作りになってます。見せ場が作れるシーンがあって、セリフやナレーションで強引にでもつないで、次にまた見せ場を置く。一面をクリアしたら、次の面があって、シチュエーションとミッションを変えてという流れ。だから、仲間が死のうが何しようが、感傷にふけってる時間はないのです。一難去ってまた一難なんです。さながら、風雲たけし城やSASUKE。恒例のレーザートラップもバッチリ出てきます。
 
でも、107分という尺もしっかりあっさりしていて、長くなりがちなこの手の映画の中ではコンパクトな方ですね。シリーズの色んな要素もできる限りぶっこまれてますから、刺激いっぱいお腹いっぱい、設定そのものには疑問いっぱいのまま、とりあえず終わっていきます。
 
深刻な話だし本人たちは大真面目なのに、どうしたって笑っちゃうところもいっぱいあります。でも、ゲームを土台に映画としてオリジナルにどこまで展開できるのかというゲームと映画の関係性においては突出したシリーズだったわけです。観ながら、僕は『ハンガー・ゲーム』とか『メイズランナー』のことを思い出してました。最近のYA映画化作品群に影響を与えていることは間違いないと思います。ゲーム要素については、そもそも『不思議の国のアリス』から受けた影響(というか引用?)もありましたね。
 
僕はこのザ・ファイナルもなんだかんだ嫌いにはなれない。ミラ・ジョヴォヴィッチの露出度高めのアクションがかっこよく見えて、アンデッドやら妙なクリーチャーやらが気持ち悪くて、お化け屋敷的に驚かされて、アリスの秘密を知ることでまた1に戻りたくなるようなこの作品。これだけクリアしてたら、もう十分です。
 
僕はこの手の映画を敬遠してる人ほど、4DXで一度観てみるといいかなと。

さ〜て、次回、1月6日(金)、新年一発目の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様から授かったお告げ」は、『土竜の唄 香港狂騒曲』です。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!