京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『土竜の唄 香港狂騒曲』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年1月6日放送分
『土竜の唄 香港狂騒曲』短評のDJ's カット版です。

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高橋のぼるの人気コミック実写映画化第2弾。監督三池崇史、脚本宮藤官九郎、主演生田斗真という豪華なトリオと、仲里依紗遠藤憲一堤真一岩城滉一といったメインキャストはそのままに、今回は瑛太、本田翼、古田新太菜々緒など、これまたパワフルなキャスティングが実現。
 
潜入捜査官「モグラ」として、凶悪なヤクザ組織数寄矢会に潜り込んだ主人公菊川玲二。思いがけず日浦組の若頭に就任した彼は、捜査のターゲットである会長の轟周宝から、自分のボディーガードとチャイニーズマフィア仙骨竜の撲滅を命じられる。その頃、エリート警察官の兜真矢が若くして組織犯罪対策部課長に就任し、警察とヤクザの癒着を断ち切るべく玲二の逮捕に向けて動き出す。
 
年末、仕事納めしてから、何だかお気楽な気持ちで観に行ったので、その僕ののほほんとしたテンションが今回は短評に影響するような気がするんですが、とにかく今年も3分間でまとめます。いってみよう!

これはかなり好き嫌いが別れる作品でしょうね。ノレるノレないの分かれ目は2つあると思います。ひとつは、下ネタのテイスト。もうひとつは、原作マンガからのアレンジ。
 
順に話してみると、まずは下ネタ。予告にもある通り、いきなり大阪で全裸の空中飛行があり、股間を通天閣のさきっぽにチーンとぶつけるわけです。玲二はヘリからぶら下がってふるい落とされまいとしがみついて大阪を浮遊するわけですけど、まさにここでしがみついていられる人と、ふるい落とされる人が出て来るのは致し方ないでしょう。小学生レベルの下ネタがあちこちで炸裂するので、苦痛だと感じるかもしれません。
 
生田斗真の素敵な裸体に見惚れる女性方も、どこまでついていけるのか。そして、股間がフィーチャーされるのは、生田斗真のような男性だけではありません。菜々緒仲里依紗も下着丸出し、しかも股間にピントが合う状態がそれぞれあって、これはこれで鼻の下を伸ばしていた男性方も、エッチを越えてトゥーマッチだとしんどくなるかもしれません。

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続いて、原作マンガからのアレンジについてですが、明らかに違うのは、シリアスな要素を完全に排除していること。恐らくは、原作ファンほど、笑いに特化したこの映画化はいかがなものかとノリきれないんじゃないでしょうか。
 
豪華キャストが揃って、一応大作お正月映画という体はとってるんだけど、その実、よくR指定付かなかったなってくらいにエロくておバカに振り切った映画なので、裾野広く受け入れられるようなものでないのは明らかです。いわゆる「メッセージ」も皆無ですしね。
 
で、僕はノレたのかってことですけど、ばっちりノレました。のほほんと劇場へ出かけた、こちらのテンションもマッチしたんだと思いますが、下ネタも過剰な笑いも受け入れられたんです。何度か声に出して笑いました。玲二が欲情すると、リコーダーが鳴る演出で、ご丁寧に小学生が笛を吹く姿を一回挟むところとか、轟夫人て初めて会っ気がついたら全裸になってるところとか、車での本田翼との無茶苦茶なロジックのエロトークとか、仲里依紗とか仲里依紗とか仲里依紗とかのムンムンな色気とか。あの虎とのラストもバカバカしすぎて、失笑するつもりがはっきり笑っちゃう。
 
でも、映画としてデキがいいかと聞かれると、むしろその逆と言わざるをえません。漫画の映画化なのに、漫画のままっで感じで、全体のバランスと話運びはかなりイビツです。「この絵が撮りたかったんだろうな」っていうオモシロがあちこちにあって、そこから逆算してシーンが組み立てられてるもんだから、展開が無理矢理だし、シーン同士のつなぎもとりあえずボンドでくっつけたような乱暴さが目立つ。CGを使いまくってるし、香港狂騒曲なのに香港ロケしてないし、チャイニーズマフィアがモチーフだってのに中国人が出てこなさすぎるし。笑いに寄りすぎてヤクザたちの迫力が完全に殺がれてるし、まあリアリティはほぼなしです。
 
ただ、ここが難しいんだけど、三池崇史宮藤官九郎も、そこは承知して振り切ってるんだろうと思うんです。今並べ立てた僕のツッコミなんて想定内だろうし。パトロクルスさんが先週つぶやいていた通り、ほぼ全編顔芸の生田斗真を始め、役者陣は相当攻めてるし、もうこれはこれでいいんじゃないかという気がしてくるんですよね。だから、評論としては歯切れ悪いけれど、あばたもえくぼでニンマリぼんやりのほほんと観る作品だというのが僕の結論です〜。
 
原作はまだまだ続いているし、次はシチリアマフィア編となるのか、そうなると、シチリアロケはあるのか? 楽しみです(笑)


さ〜て、次回、1月13日(金)109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様から授かったお告げ」は、ついに来ました『この世界の片隅に』です。僕は3度目の鑑賞に向かいますが、あなたも観たら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!