今年に入ってから観た映画では一番笑いました。堪えきれず、声に出して笑ってしまうレベル。強引に一言でまとめると、アメリカ・ハイティーン版、実写『
ドラえもん のび太の大魔境』です。余計に分かりにくくなったかもしれない… 今も『
のび太の宝島』がかかってますが、劇場版
ドラえもんって、尺が長い分、大冒険があって、それを道具だけじゃなくて、仲間で助け合うことで乗り越え、TVではめったになし得ない成長をするでしょ? ああいう感じです。
アメリカの高校も日本と似たような感じですよ。主人公のスペンサーは、家でゲームばっかりやってるオタクで、ファッションに疎い
潔癖症。勉強はそこそこできるんだけど、そこにつけこまれて、幼なじみだけど最近は縁遠い不真面目なアメフト部の兄ちゃんからはレポートの代筆をゴリ押しで書かされてる。学校のイケてる運動部男子に色目を使ってすり寄る
スマホSNS依存のかわいこちゃん。生真面目だけどシャイで人付き合いが苦手で、教師にも理屈をこねていく協調性のない孤立した女の子。多かれ少なかれ、こういうタイプ、あなたの身の回りにいるでしょう。同じ学校にはいるけれど、決して交わることのなかった子たちが、居残りを命じられたことで、交わらざるを得なくなる。そこで、「意外とこいつ良い奴じゃん」みたいな、普段なら気づけなかった部分に気づいていく。この設定は青春ものの名作、85年の『ブレックファスト・クラブ』とも似ていますね。
前の『
ジュマンジ』も、みんなで力を合わせるというテーマはあったんだけど、これは現代版アップデートとしてかなりよくできてます。ちゃんと、前作のエンディングから繋げてあるし、ふたつの時代を物語内に取り込んで、ゲームの中から出られなくなった人がいるっていうタイムトラベル要素もそのまま活かすどころか、ジェネレーションギャップや
ラブロマンス要素までそこに掛け合わせてもっとうまくやってる。さらに、
ボードゲームから
ビデオゲームへと変更することで、現代においてより馴染み深くしてあります。各キャラクターが3つのライフを持っているという設定は、アクションゲームで「3騎ある」っていう感じだし、全体としては
RPGの枠組みですね。ゲーム内の住人と話す時のセリフパターンが決まっているし、4人が変身したキャラそれぞれにスキルが決まっているのも
RPGそのもの。
誰もが笑いを禁じ得ないのが、この変身です。『
君の名は。』でも、男女が入れ替わって、「なにこれ?」的な一連の展開がありますが、こちらはもっと強烈。何しろ、オタク男子が
ドウェイン・ジョンソンになるんだもん。なんだ、この
上腕二頭筋は? そりゃ、なるよ。フェロモンの塊。だけど、中身は元のまま。アメフト部の黒人の兄ちゃんは、足の遅い武器係になっちゃって、オタク男子の助手的な立ち位置に甘んじますからね。最初にそれぞれのスキルが表示されるんだけど、弱点、スピードと強さ。「強さが弱点ってなんだよ、おれ!」っていう悲痛な叫びに笑わない人はいないでしょう。自惚れ女子は小太りのおっさんの姿になって、「私の
スマホはどこよ? ていうか、トイレに行きたいんだけど、どこ? そして、どうやってやんの、これ?」と大騒ぎ。
ゲラゲラ笑いながらも、同時に僕は、「キャラがステレオタイプ過ぎてなんだかな~」と思っていたことも事実です。でもね、そんなことはなかったです。この変身を一発ギャグでなく、最後まで持続させることで、めちゃマッチョなのにびびってたり、すごい色気なのに男を誘惑しようとするとぎこちなさ過ぎて滑稽だったり、僕らが実生活で持ってる「人を見かけで判断する」ステレオタイプをしっかり揺さぶってくるんです。そこに、思春期特有の彼らの
アイデンティティの形成プロセスが重ねられる。
だんだん変身した姿に馴染んでくると、もうこのままゲームの中で過ごしてたほうがいいんじゃないかって、あるキャラが自問する場面なんて最高でした。そこからの決断とエピローグへの流れはジンと来るし、「お前らは確実に前より輝いてるぜ」って僕は胸の内で断言しましたからね。
脚本の話が多くなりましたけど、こういう王道的青春物語としての枠組みに、「インディー・
ジョーンズ」的な大冒険、ハワイロケが功を奏した
大自然の映像、さすがは「アテ書き」だけあって見事にハマった役者たちが織りなすギャップ演技と会話のグルーブ。細かすぎるくらいに仕掛けられた笑いの小ネタの数々。全部入っている上に、この作品は吹き替えで観る人も多いと思うんだけど、日本語のセンスが素晴らしいです。僕も今まさにイタリア映画のコメディーの字幕翻訳やってるから分かるけど、トッ
プレベルでした。
さらに、こういうアド
ベンチャーはそもそも4DXに向いてるってのはあるけど、少なくともこれまで僕が経験した中では、たとえばヘリの動きと座席が同期したり、銃弾が耳元をかすめたりっていうギミックも効果的で、一番楽しかったです。ていうか、物語自体が、ヴァーチャルの世界に迷い込んでしまった人物の話だから、4DXの座席にいる僕ら観客と状況自体がシンクロしててピッタリ。
というわけで、超満足! この春、あなたもぜひ叫んでください。マジ
ジュマンジ〜〜〜!!!!
チラシによれば、この「マジジュマンジ」とは、「物事が予想の斜め上をいくこと」だそうです。こういうセリフは翻訳ならではの面白さですよ。そして、802で見つけたプレスリリースには、こんな遊び心が… 10万字のジュマンジって… バカ過ぎます。大好きです。
評の中でドラえもんを引き合いに出してますが、キャラも当てはめてみたんですよ。スペンサーはのび太で、フリッジはジャイアン。ベサニーはしずかちゃんだけど、このしずかちゃんはかなりムカつくんだよな… そして、マーサは、え〜と、そうだ、花沢さんだ! って、それサザエさんじゃないか! そして、ドラえもんがいないよ。ってことで、あくまで似ているのはメッセージ性と物語の構造だけであるということに気づいたという裏話でした。そりゃそうだ。
評の中では、十把一絡げに成長って言ってますけど、その度合いも人それぞれってのが、また僕は気に入りました。フリッジは、たいして大人になってないもの。あいつは、まったく… 僕と同じヘッドホン使ってんじゃねぇよ!
さ〜て、次回、4月12日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『娼年』。出ました、R18! 白石和彌監督作『彼女がその名を知らない鳥たち』では、その美しい裸体で女性たちを翻弄し、あろうことか大阪城をバックにとんでもないことをしでかした松坂桃李ですよ。僕は彼の姿をTVや街の広告なんかで見かける度に「あいつめ!」ってなってたんですよ。ま、それだけ演技が良かったってことですね(当たり前だ)。今回も僕をムカつかせてくれるんでしょうか。このコーナーでも高く評価した『何者』の三浦大輔監督ということで、かなり楽しみにしております。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けてのTweetをよろしく!