FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2019年5月9日放送分
映画『名探偵ピカチュウ』短評のDJ's カット版です。
ポケモンに関わる事件の捜査へ向かったきり、家に戻らなかった探偵の父ハリーを恨んだティム少年は、父だけでなくポケモンも遠ざけて祖母と暮らしていました。やがて大人になったティムのもとに、ある日、ハリーと同僚だったというヨシダ警部補から電話が入ります。曰く、お父さんが事故死した。ティムは人間とポケモンが共存する街ライムシティーへと向かいます。父の自宅で遺品の整理をしていたところ、自分にしか聞こえない声で人の言葉を話す名探偵ピカチュウに遭遇。かつてハリーの相棒だったと語るピカチュウは事故の衝撃で記憶を失っていたものの、ハリーは生きているはずだと言います。ティムとピカチュウは事件の真実を探り始める。
96年にゲームボーイ用ソフトが発売されて以来、アニメ、映画、カードゲーム、漫画、絵本などなど、いわゆるメディアミックス展開をして、20年以上の長きに渡り世界中で愛されているポケットモンスター。これが初のハリウッド進出にして実写映画化となります。
原作は、3年前に発売された同じタイトルのニンテンドー3DS用ゲーム。超大手の製作会社レジェンダリー・ピクチャーズが脚本と監督に抜擢したのは、ロブ・レターマン。『モンスターVSエイリアン』なんかを手がけている人ですが、今回の作品が最もビッグバジェットの大作だと思います。
名探偵ピカチュウの声を『デッドプール』のライアン・レイノルズがあてている他、日本からは渡辺謙がヨシダ警部補として登場。さらには802でもおなじみの歌手リタ・オラや、ポケモントレーナー役として竹内涼真も出演しています。
あとは、ポケモンがね、いっぱい出てきます。当たり前だけど。ピカチュウ、コダック、メタモン、リザードン、ベロリンガ、ゼニガメ、エイパム、プリン、フシギダネ、ミュウツーなどなど。まあ、僕はだいたいわからないんだけどさ。
それでは、ポケモン弱者の僕がどう観たのか。制限時間3分の映画短評、そろそろいってみよう!
僕の評価は揺れています。定まらないというのが、正直なところです。ぼんやりしていて申し訳ないんですが、要するに、チャーミングなところと、どう見ても及ばない、あるいは突き抜けないところとが共存しているんです。
まず誰もが驚いたピカチュウの造形。なんか、フサフサしてる。しかも、ちょっとゴワゴワしてるよ。ポケモンが世に出た頃、ゲームに興味ゼロで女の子と音楽と文学にしか興味のなかった僕ですから、そもそも思い入れがないというのが良かったのか、わりとすんなり受け入れることができました。声がおっさん、というか、ライアン・レイノルズ、というか、デッドプールです。このギャップもですね、面白いんだけど、正直なところ『テッド』です。足して、テッドプールです。そっから下ネタを抜いた感じ。悪くないんだけど、既視感はあります。
そして、ポケモンと人間が共存共栄する街ライムシティーの引きの画がありますね。あれはもう、コンセプトも込みで『ズートピア』です。既視感はあります。それから、これも多くの人が指摘している通り、エイパムというポケモンが凶暴化した時の見た目と動きがまんま『グレムリン』なんですよね。これも既視感ありでした。
それから、毛がフサフサしているぬいぐるみ的なポケモンと、わりと忠実に再現されているツルッとしたポケモンの違いはなんなんでしょうか。人間と一緒に暮らしているのがフサフサで、そうでない野生のがツルツル? でもないか? 『ズートピア』は多様化する人間社会の置き換えだったけれど、ライムシティーでのポケモンたちと人間はどの程度深くコミュニケーションが取れているのか、本当に共存しているのか、よくわからない。これは全体の尺においてライムシティーの描写が不足していることが原因でしょうね。などなど、今ひとつ、疑問が拭えないまま話が進んでいきます。それから、これはタイトルの問題でもありますが、どうも「名探偵」と呼ぶほど推理モノでもないんですよね。謎の解明は、わりと他動的でした。
え〜、じゃあ、もうダメじゃん。っていうわけでもないんですよ。ピカチュウはやっぱりかわいいし、メタモンが次々と変身する様子は実写だからより活かされる面白みでした。それから、なぜピカチュウがおっさんの声なんだっていう最大の疑問がわりと気持ちよく回収されるラストと、爽やかでジンと来るその余韻は良かったんじゃないでしょうか。ポケモン初の実写化としては十分に楽しめる一本です。これだけキャラクターがたくさんいるわけですから、うまくすればマーベルのようにユニバース化だってできる余地があるわけですしね。
ただ、そのためには、もしまた実写をやるんであれば、ある程度、それぞれのキャラクターをしっかり描く努力をしないとダメだと思います。今回の最大の問題は、なんだかんだとアクションやバトルを見せ場にしたこと。悪役の欲望も行動もわかりやすすぎるくらい記号的な「悪」なんだから、そこは最小限にして、もっとポケモンそのものの魅力を打ち出すべきです。そう考えると、ライムシティーでのポケモンたちの暮らしぶりをやっぱりもっと見たかったですね。でも、もっと見たかったってことは、それだけ興味を惹かれたこともまた事実なのでありました。
Honest BoyzによるElectricityもなかなか良かったです。日本初のキャラクターものの実写化ってとこを音楽で表現してる感じがあったし、世界中で観られる映画で日本語の響きが混じってるってのは、なかなか面白く聞かれるんじゃないかなと思いました。
さ〜て、次回、2019年5月16日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『チア男子!!』です。性差ギャップものコメディーってことなんでしょうが、シンクロナイズド・スイミングの例もあったので、また既視感にさいなまれることになりはしないか。そこだけは懸念事項ですが、原作は朝井リョウなんですよね。となると、俄然期待が高まってきます。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!