FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2019年6月20日放送分
映画『メン・イン・ブラック:インターナショナル』短評のDJ's カット版です。
UFOや宇宙人などの超常現象を目にした一般市民の元を訪問し、口封じをする全身黒尽くめの男たち。この映画シリーズには、1990年に発表された同名の原作漫画があるわけですが、そのさらに元になっているのは、1950年代以来、アメリカを中心に流布している都市伝説です。珍しいケースですよね。97年、トミー・リー・ジョーンズがベテラン敏腕エージェントKを、そしてウィル・スミスが減らず口をたたく新米エージェントJを演じた1作目以来、2002年、そして2012年と、同じコンビと同じ監督、つまり『アダムス・ファミリー』のバリー・ソネンフェルド、さらにはスピルバーグが製作総指揮という座組で3本作られてきました。
今回は、スピルバーグ以外はスタッフ・キャストを一新したスピンオフ的続編です。監督は、『ストレイト・アウタ・コンプトン』や『ワイルド・スピード ICE BREAK』のフェリックス・ゲイリー・グレイです。
20年前、幼少期にエイリアンに遭遇しながらも、記憶消去を偶然逃れて以来、宇宙の神秘に興味を膨らませ、MIBにあこがれて成長し、ついにスカウトされるにいたった新人女性エージェントM。初のミッションは、MIBに潜入したとされるスパイを突き止めること。MIBロンドン支部へ出張したMがタッグを組むのは、イケメンだけれど軽薄で、過去の栄光にあぐらをかく先輩エージェントH。このコンビはスパイを見抜き、その野望を阻止することができるのか。
女性エージェントMをテッサ・トンプソン、チャラ男なエージェントHをクリス・ヘムズワースがそれぞれ演じる他、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、レベッカ・ファーガソンなどが登場します。豪華キャストなんですけど、主演のコンビが『マイティ・ソー バトルロイヤル』のヴァルキリーとソーなもので、どうしても思い出しちゃう人がいるのはしょうがないでしょうね。
それでは、制限時間3分の映画短評、そろそろいってみよう!
鑑賞後に首をひねっている観客が多いことは、番組に寄せられた感想やネットに上がっている声に如実に現れています。曰く、トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのコンビニは敵わない。今回のMとHのバディが不完全燃焼。エイリアンが小奇麗。誰がスパイかすぐにわかってしまう。目新しさがない。などなど。
では、僕はどう感じたか。平たく言うと、こうです。
みんなの言いたいことはわからなくもないけど、結構楽しく観られたし、なんなら、たとえば1作目よりも僕は気に入ってるんですが、ダメですか?
大前提として身も蓋もないことを言いますけど、このシリーズにみんなが求めているものは、そんなカッチリしたできの良さなのかってことなんですよ。そもそもが都市伝説ですからね。だいたいあのエイリアンにまつわる部分だけ記憶をピカッと一瞬で消せるニューラライザーって、何よ。ご都合主義の極みじゃないですか。今回1作目を見直しましたけど、2019年の感覚だと、ギョッとするブラックジョークも散見されるし、ストーリーもそこまで感心するほど練ってあるというよりは、いい意味での雑さゆるさを楽しむものだと思います。だから、もう、トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのコンビと、ファッションやガジェットのポップな魅力でもっていたシリーズなんですよ。
そういう割り切りのもとに観ると、今作は僕は十二分に合格点に達していると感じました。
当たり前だけど、エイリアンの造形や動きはCG技術が発展した今の方がすんなり観られるし、旧ファンへのサービスも入れながら、ポーニィみたいな新しいかわいいエイリアンも登場させていますよね。ガジェットも今っぽく進化していて僕はすんなり楽しめました。ポール・スミスのスーツ、POLICEのサングラス、ハミルトンの腕時計、レクサスの車。どれもキマってました。パリ、ニューヨーク、ロンドン、マラケシュ、砂漠、ナポリと、あちこちの景色を観ることができる観光映画的魅力もありました。さらに、画面の色使いが工夫してあるので、「黒」がより映えていてかっこいい。テッサ・トンプソンを起用しているだけあって、MEN & WOMEN IN BLACKだみたいなポリコレギャグも加わっていましたね。ストーリー的にも、20年前の伏線回収だったり、ヘムズワースが大胆にもエイリアンと性的関係を持っていたりと、これまでと違ったブラックな笑いも盛り込めていたと思います。もう、僕としては、これで十分です。ビッグバジェットのB級大衆娯楽作なんだから、いいじゃないですか。
ただ、一応、なんじゃそりゃってところにも触れておくと、そりゃ今回のバディーには難がありました。ふたりの役割が最初から最後まで基本同じなので、変化がない。これは特にウィル・スミスの変幻自在っぷりを前にすると、確かに分が悪いです。それは認める。それから、エイリアンが小奇麗すぎる。まとまりすぎてる。でも、昔みたいに体液どろどろ一辺倒なのもどうかと思っていた僕としては、別にこれで構いません。
舞台裏について触れると、ウィキペディアにも載ってることですけど、監督が何度も降板しようとするくらい、製作はもめて混乱したようです。どうやら、エイリアンが地球にたくさん移民しているという設定に、地球での現実の移民問題を重ねようとした当初の脚本のアイデアがボツになったようなんですけど、僕としてはキャスト一新でリスタートを切るなら、もっとエッジのきいたものも観たかったなというのが本音です。
とはいえ、あちこちでロケするから「インターナショナル」ってなタイトルの安直さが示すようなB級娯楽感は十分に保証された、普通にデートにオススメできるような1本でございました。