京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 8月9日放送分

(C) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
最新の科学技術を駆使して蘇らせた恐竜を客寄せに活用して観光資源とするジュラシック・ワールドが存在したイスラ・ヌブラル島。火山噴火による壊滅から救出された恐竜たちが世界あちこちへ解き放たれてから4年が経過しました。人類は恐竜たちとうまく共存しきれないままでいたところ、恐竜の保護活動を続けるオーウェンとクレアは、人里離れた山小屋で暮らしています。ふたりが守っているのは、14歳になった少女メイジー。彼女はジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの娘から作られたクローンでした。

ジュラシック・パーク(字幕版)

93年に映画史を書き換えることになった『ジュラシック・パーク』シリーズの3作。そして、スピルバーグ監督が製作総指揮に回って2015年にスタートした『ジュラシック・ワールド』シリーズの3作目にして、一応の完結作と言われる本作。監督と共同脚本には、コリン・トレヴォロウが新シリーズ1作目から復帰しました。キャストには、クリス・プラット、そしてドラマ『マンダロリアン』で監督としての才能も開花したロン・ハワードの娘ブライス・ダラス・ハワードに加え、「パーク」シリーズのサム・ニールローラ・ダーンジェフ・ゴールドブラム、B・D・ウォンなども揃って躍動するほか、メイジー役のイザベラ・サーモンが存在感をますます発揮しています。
 
僕は、先週木曜の夜、TOHOシネマズ二条で字幕2D版を鑑賞しました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

これが完結編ということで、観光施設ジュラシック・ワールドに端を発する一連の騒動に一応の解決を出さないといけないわけです。なかなか大変ですよ。まず、今作のスタート時点で、恐竜は世界のあちこちに散らばっていて、自然の中で生きている状況。陸海空を問わず、はびこってます。しかも、闇取引をする連中までいて、もうカオスです。だって、これまでは一応、空間が限定された中での話だったのが、そのフィールドが果てしなく広がってしまうわけですから。
 
ただ、話の主眼としては、この作品だけでなく、新三部作に通底しているものとしてあるのが、人間が遺伝子を操作するなどして、生き物を蘇らせたり、生み出したりする、つまりは神のごとき行いをしてしまっていいのかという問題ですね。そこで今作がググッとクロースアップするのが、農作物を壊滅させてしまうイナゴと、クローンとして14歳まで成長している女の子メイジーです。

(C) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
イナゴの大量発生と穀物の被害が深刻化しているけれど、どうやらまったく被害に合わない畑もあって、これは何か人為的な要因があるのではないかと疑問に持った登場人物が、イナゴの出どころを探るストーリーも同時に展開します。一方、クローンとして生を受けたメイジーは、当然ながら自分の親のことを知りたがるわけだけれども、その母親探し、つまりは自分は何者でなんのために産み落とされたのかという自分探しの物語も並行して語られます。
 
拉致されたメイジー、イナゴの出どころを探る人たち、その他、途中からくっついてきた人たちが、まぁ、結局はやがて全員集合して、やっぱり空間的にひとところに収まってハイライトを作っていくということになりますし、複数の物語を配置することで、旧三部作からのキャストの出番を用意して、シリーズ全体のファンサービスも実現することができる。テーマに引っ張られて、キャラも増えたことで、恐竜の出番が少ないような気もしないではないが、せっかく世界あちこちに散らばったんだから、007的なスパイものや観光映画的要素も入れてみようってことで、マルタ島でワイワイとチェイスシーンやアクションシーンを撮ってみたり、なんなら、インディ・ジョーンズ的なアドベンチャー要素も入れられるんじゃないかってことでお膳立てしたり… とりあえず、全部盛りです。盛り込んだ結果、尺も2時間半に及んでいます。そして、各要素の継ぎ目には、ご都合主義という接着剤が使われています。

(C) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
その批判は免れないところですが、僕としてはそこまで悪く言いたくはないんです。観たいものは、あちこちに散らばっていて、ちゃっかり興奮させられたからです。特に、イナゴの群れの動き、マルタの世界遺産都市ヴァレッタを猛スピードで行き交う恐竜には目を見張りました。
 
その上で、テーマとして、科学者、人類に改心を促すという着地は、驚きはないけれど穏当なものだったし、処女懐胎をしたメイジーの母、イナゴの大量発生といった聖書のモチーフを出して、人間は果たして神のようにすべてをつかさどろうとして良いのかという問いかけに、一応はなっていたと思います。僕としては『ドント・ルック・アップ』ばりに突っ込んだメッセージになっても面白かったように思うけれど、このシリーズにそこまで求めるのは酷だろうと思うし、夏休みにワイワイ観るには僕は決して悪くないと感じています。


さ〜て、次回、2022年8月16日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『L.A.コールドケース』です。ジョニー・デップフォレスト・ウィテカーが共演したサスペンスってだけでも観たいのに、扱われるのは、あの2パックとノートリアス・B.I.G.が殺害された未解決事件なんですよ。97年でしたかね。ひっくり返った悲しき出来事の裏にどんなことがあったのか。僕も詳しくはないから、学びつもりで観に行きます。あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、ツイッターで #まちゃお765 を付けてのツイート、お願いしますね。待ってま〜す!