京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『ワンダーウーマン』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年9月1日放送分
 『ワンダーウーマン』短評のDJ's カット版です。

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マーベル・シネマティック・ユニバースに対して、こちらはDCエクステンデッド・ユニバース、DCEU 4作目。『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』にチラッと出ていたキャラクターの単独作。
 
女しかいない孤島で、プリンセスとして、そして戦士として育てられたダイアナ。ある日、島に不時着した飛行機の男性パイロットを救い、彼から第一次世界大戦が起きていることを知らされます。世界を平和に導くという自分の民族の使命感を覚えたダイアナは、アメリカ人のパイロットと戦場へと向かいます。

 

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 アルティメット・エディション(吹替版) モンスター (字幕版)

監督は、シャーリーズ・セロン主演『モンスター』のパティ・ジェンキンス。女性です。これが久し振りの長編で2本目。監督が実写化するなら「私がやる」と強く手を挙げたようですが、大抜擢ですね。ダイアナ/ワンダーウーマンイスラエル出身のガル・ガドット、そして、お相手の男性トレバーをクリス・パインが演じています。
 
それでは、3分間の映画短評、今週もいってみよう!

あらすじを読んでいた時点で、設定にいくつか疑問があったんです。まず、女だけしかいない島っていったい何なんだ! どこにあるんだ! 行ってみたいぞ! これが初の単独作となるので、ダイアナの出自については、前半でわりと時間を割いて描かれていました。普通に考えたら、どうやって子どもが生まれるんだとか思うじゃないですか。これは設定の段階なんでネタバレにはならないでしょう。ギリシャ神話にゼウスってのがいますね。神々の親玉的な。その息子にアレスという戦いの神がいる。さらに、そのアレスから人間を守るために作られたアマゾン族という女性ばかりの種族がいる。ワンダーウーマンは、その末裔なんです。アマゾン族は、アレスが現れた時に彼を撃退するために訓練を積み続ける戦闘集団です。どうやら、殺されたりしない限りはずっと生き続けるようでして、映画のスタートは現代のパリ。ワンダーウーマンは自分の写った1枚の集合写真から、第一次大戦の頃の思い出を偲ぶという、壮大なフラッシュバックの構成なんですね。彼女がそのエリートとしての血筋と使命に目覚めてヒロインになっていく、成熟していくプロセスが描かれる。
 
この時点で疑問は山ほど湧いてきます。アマゾン族は人類の歴史とパラレルに生き続けてきたから武器が剣と盾と弓矢ってのはまだいいとして、世界史にあるような人類の戦争の歴史にどう絡んできたんだろう。飛行機が不時着したけど、あの島と世界の境界線のアバウトさは何なんだ。島から出たことがないから世間知らず、文明知らず、男知らずなのはいいとして、それでどうやってあんなにたくさんの言語が話せるんだろう。どれもこれも、設定はかなりアバウトです。詰めて考えると、クラクラしてきます。ただ、じゃあ、映画として破綻してるかっていうと、そうではないんですよ。そこが凄いなと思うんだけど、しっかり面白いし、興味が持続するんです。中だるみしないんです。
 
それはなぜかと考えると、ガル・ガドットが体現するワンダーウーマンそのものの問答無用の魅力と、映画全体のバランスが良いからですね。神話的要素、第一次大戦歴史ものの要素、カルチャーギャップをベースにしたコミカルな要素と軽い恋愛要素、そして、あくまで肉体を軸にしたアクロバティックなアクション要素。かなりごった煮なんだけど、どの具材も丁寧に下処理されてるから、火の通りも良くて、ずっと食べ続けられる。そして、どの具材も火を通しすぎて煮崩れしたりしてないから、口当たりがいいんです。悪く言えば、正面から向き合いきれてないんだけど、良く言えば、それぞれの要素のいなし方がうまい。さっき挙げた各要素を掘り下げすぎない。だから、矛盾や疑問も、あまり深く意識しないで済む。シリーズ1本目として、それって大事なことですよ。やっぱり、1本目から眉間にシワを寄せるのもしんどいしね。
 
でも、なんだかんだ、やっぱり、全体のダシに当たる、肝心のワンダーウーマンを演じるガル・ガドットがすごいんでしょうね。どんな服も着こなすし、すっとぼけた言動を取る時はチャーミングだし、髪型を変えて、露出度を上げて戦う時の頼れる感じ、意志の強さにも説得力があるし。
 
そのうえで、ヒーロー映画ですから、戦闘シーンも色々あるんだけど、いくらCGを使おうと、あくまで肉体重視のアクロバティックな戦いだから、荒唐無稽なんだけど、いい意味で人間離れしすぎておらず、しかも、だんだん戦闘が激しくなるように持っていってるから、ちゃんとラスボスまで戦闘シーンで飽きないようになってる。
 
がしかし、終わってみると、やっぱり疑問は疑問のままたくさん残ってるのも、また事実。エンディングで当然、現代にまた戻るんだけど、彼女は第二次大戦の時どうしてたんだろうとか、よくわかりません。それはまた次作ってことなのかしら。あと、仕方ないっちゃ仕方ないけど、ワンダーウーマン以外の魅力ありそうな男性キャラがその魅力を発揮できずじまいだったのはもったいないなぁ。奴らは人間だから、次作以降、時代が変わると出てこないんだろうなぁ。
 
とまぁ、気になるところはたくさんありますが、マーベルに比べると分が悪いDCEUの救世主としてワンダーウーマンが登場したってことは間違いなく、そして嬉しく断言できる1本でした。

さ〜て、次回、9月8日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『新感染 ファイナル・エクスプレス』です。この夏は『ザ・マミー』に出てくるゾンビでずっこけた僕なんで、こちらにはしっかりビビらせてほしいところ。あなたも観たら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!