どうも、僕です。
良かった。本当に良かった。
先の煙草屋は次の日も営業を続けていました。
ちょっとした痴話喧嘩だったんでしょうね。
初老の息子がうまいこと消火活動にあたってくれたのでしょう。
ホッと胸を撫でおろした僕は、見知らぬ息子の消化の手際を讃えつつ、持て余した待ち時間を消化すべく、またもや大阪は阿倍野界隈の路地を徘徊していました。
あの辺は本当に入り組んでいるんですよ。
一家に一台の自家用車が当り前ではなかった時代の街づくりなわけです。
散歩のつもりが迷子になることもままあるのですが、どうせとくにすることもないし、ひとところにとどまっていても特に得になることもないしというわけで、足の向くまま気の向くまま、昼下がりの路地裏をぼんやりとうごうごするのでありました。
と、相も変わらず、20代最後の晩夏を無駄に過ごしている僕の足元に、こんな看板が突如出現したのです。
なんともみょうちきりんな看板ですね。
皆さんならどうしますか?
そのまま17歩進んで「どんなだだっこだべか?」と確かめてみても良かったのですが、いくら手持無沙汰だとはいえ、残暑厳しい昼下がりに「だだっこ」なんぞに遭遇しては得どころか損するばかりだろうと判断した僕は、そのまま左の脇道に逸れ、難を逃れようとしました。
ところがどうでしょう。
その道はどん詰まりの袋小路、隘路だったのです。
やれやれ。
ならば仕方あるまいと「だだっこ」に会う臍を固めた僕は、来た道を引き返し、きっちり17歩ゆっくりと前進してみました。
すると…。
なんのことはない、ただの鄙びた居酒屋でした。
なんなんだよ! 「だだっこ」はどんなメニューで駄々をこねるんだよ?
確認してみると、ごくごく普通のメニューでした。
なんなんだよ! 店名でふざけるくらいなら、メニューでもちょっとくらいふざけてみなよ! もう!
気づけば、すっかりこちらが「だだっこ」になっていました。
あ!
もしかして、店主の思惑はこれだったのか…。
ちょっぴり期待させておいて、うまいことそれを裏切り、まんまと客を「だだっこ」に変貌させてしまう…。
ええい、どうでもよいわ!
なにかしら、その後の僕がしみったれた気持ちを引きずって歩いたことは、言うまでもありません。
それでは皆さん、また明日のSwingin' Sundayで。