監督・脚本は『スノーピアサー』などで知られるポン・ジュノ。キャストは… 半地下家族の父を『タクシー運転手 約束は海を越えて』のソン・ガンホ。息子のギウは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のチェ・ウシク。あとは、僕もすっかりぞっこんになってしまったこの方に触れておかねば。あの豪邸に住むIT社長の妻を、チョ・ヨジョンがそれぞれ演じています。
感心させられるポイントはいくつもありますが、ふたつの家族を象徴する建築物とその空間の見せ方がすばらしいです。半地下物件のせせこましさ、トイレの位置など間取りのいびつさ、そして当然窓からの目線の低さ。昼間でも電気は必須のじめじめした空気までを画面に映していました。一方、庶民を見下ろす山の手にある金持ち一家の大豪邸。広々。洗練。リビングからは広大な庭。窓も大きく光はたっぷり。そう、光と言えば、照明もすごい。ガレージ、リビング、キッチン、子供部屋、倉庫、そして後半大事になるあの場所と、光の当て方が一様じゃない。闇と薄明かりも効果的でした。「だるまさんが転んだ」みたいなシーンがありましたけど、あそこの照明なんて繊細ですよ。ブラックユーモアが過ぎますけどね(笑)
それにしても、実に寄生しがいのある家ですよね。序盤、半地下家族が続々とまんまと乗り込んでいくのが痛快ではあります。彼らって、それぞれに実は高い能力を持っているんですよね。だのに、社会からは弾かれてしまっていて、その能力を発揮できない。すごい設定だけど、あのお母さんなんて、ハンマー投げの元韓国代表、オリンピック選手なんですよ。今や近所のガラスを割るくらいにしか活かせてませんけど。でも、料理も家事もやればきっちりできちゃう。にも関わらず、経済的な余裕の無さが彼らの粗雑さ、がめつさを増幅しているのも伝わります。
それから、匂いと水の表現。ここにも格差が出ていましたね。当然、金持ちは無臭です。半地下家族は食べているものやジメッとしたあの地下の匂いをまとっている。物語の潮目が変わる強い雨が出てきます。社長一家の被害と、半地下家族の受ける被害の差。水は高いところから低いところへ流れる。金もそうかも知れません。そっからの、映画の逆噴射っぷりよ! 水をきっかけにうまく可視化してみせていました。あの撮影は大変ですよ。セットなんですってね。ちょっとしたハリウッド作品ばりの予算力にも恐れ入りました。