京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『ゴジラxコング 新たなる帝国』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 5月7日放送分
映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』短評のDJ'sカット版です。

映画製作会社レジェンダリーとワーナー・ブラザーズ、そして東宝がタッグを組んだモンスター・ヴァース・シリーズのこれで5本目となります。2014年の『GODZILLA ゴジラ』、2017年の『キングコング:髑髏島の巨神』などからの流れがあり、今は巨大な怪獣と人類が共生する世界が舞台です。未確認生物特務機関のモナークが異常なシグナルを察知。しだいに明るみになるのは、人類が知る由もなかった新たな脅威でした。ゴジラとコングは今回はvsではなく、x。怪獣たちと人類の行方は。

ゴジラvsコング(字幕版)

監督のアダム・ウィンガードや脚本のテリー・ロッシオは前作『ゴジラvsコング』から続投です。キャスト勢もモナークの女性言語学者アイリーン・アンドリューズを演じるレベッカ・ホールや、ポッドキャストのホストを務める陰謀論者バーニーを演じるブライアン・タイリー・ヘンリー、そして髑髏島の先住民イーウィス族の少女ジアを演じるカイリー・ホットルも続投している他、モナークの獣医トラッパーとしてダン・スティーヴンスなども出演しています。
 
僕は先週木曜日の夕方にTジョイ梅田のドルビーシアターで鑑賞しました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

一応、今回は前作『ゴジラvsコング』の続きということになっていますが、別に観ていなくても楽しめるって先にお伝えしておきます。なぜって、別に複雑なストーリーじゃないからです。とにかくゴジラが地上でコングが地下世界に居場所が今はありますよってことと、地上と地下はワープトンネルみたいなやつでつながっていますよってことだけわかっていれば大丈夫。なんなら、わかっていなくても、観ればすぐにわかりますんで、とにかく大丈夫です。
 
前作ではゴジラとコングの対決ってことで、物言わぬこの2大巨大生物の代わりに人間たちが陰謀論も含めてギャーギャーやっているドラマパートがなんだか多くてちょっとなぁという評判をすくい取ったのか否か、それは想像の域を出ないところですが、製作陣は今作ではとにかく怪獣たちをしっかりたっぷり見せるんだという方向転換をしていまして、それが僕は功を奏していると思います。今回はxがついていますから、構図がタイトルからは見えにくいかもしれませんが、とりあえずこれぐらいは言っておいて良いでしょう。比率としては、コングの方が多めかな。というのも、とりあえずここが俺の故郷なんだなっていう地下世界に下りていたコングがですね、地球の地下のこれまた得体のしれない生き物が跋扈する空間で孤独を抱えていたんです。俺の仲間ってどこにいるんだろう。母をたずねて三千里ばりにあちこちウロウロしながら、自分のルーツを探るうちに、現在の地下世界の本来の姿がなぜ歪められているのかに気づいていくことになります。なんだこいつはっていうか、なんだこいつらはってのが出てくるんですよ。こいつらか、世界の秩序を混沌としたものにしている悪者は! そりゃ、成敗しないといけません。秩序を取り戻すには、コングとしても、自分を畏怖してくれていた人間たちを筆頭に、借りれるもんなら猫の手も借りたい状態なんですね。一方、地上のゴジラはと言えば、困ったことにローマのコロッセオをねぐらにしている状態が冒頭から明らかになります。あれには思わず笑ってしまいましたよね。僕も20年ほど前に2年間ローマに住んでいましたから、このシリーズにおけるゴジラのサイズ感が初めてはっきりとわかりました。だって、ゴジラが猫鍋みたいな調子で、丸まってすやすや寝息を立てるんだもの。そっか、コロッセオってのはゴジラ鍋だったんだっていう発見がありましたね。

(C) 2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
冗談みたいなこと言ってますが、冗談みたいなことがちょくちょくこの映画では起こります。メインの登場人物を取捨選択してスリム化した人間たちの中に、今回は獣医の男性が出てきて活躍するんですけど、このトラッパーというサングラスの兄ちゃんがいちいちいい味出してます。まずびっくりするのが、コングの弱点は歯なんだなってことでしたね。歯が痛いとまるでダメ。芸能人と同じでコングも歯が命というテンションで、トラッパーが救世主のごとく初登場するくだりはもう、はっきりと笑いを取りに来ていました。とまぁ、髑髏島の先住民イーウィス族の生存者である少女ジアも含め、人間はだいたいが狂言回しと怪獣の通訳、あるいは実況に徹しておりまして、あとはもう怪獣たちがドッタンバッタンやってます。画面の構成も、この怪獣のかっこいいところを見せるにはこのアングルが良いかな、とか、こういう技を使ったら取っ組み合った時面白いんじゃないかというプロレス的発想が発揮されていまして、そこは地球というリングをいろいろとアクロバティックに目一杯使っていて楽しいです。それに伴い、普通ならあり得ないようなカメラの動きや画角が実験映画のように用意されているのが映画的なポイントですね。ただ、最優先事項が絵面のかっこよさなんで、はっきり言って、怪獣たちのサイズ感の統一性が途中からおろそかにはなっていましたけどね。ゴジラもコングも、それからあの見た目だけはキュートだけどおっかないやつも、あれ、急に縮みました? 逆に背が伸びました?ってくらいによくわからないです。よくわからないが、とりあえずゴジラコロッセオには何があってもぴったりフィットすることだけはわかる、みたいな。でも、そんなことはリオデジャネイロのビル群のごとく木っ端微塵にしてしまえばいいのです。そう、地上での巨大生物たちの破壊活動もあちこち観光地できっちり行われますので、そこはご期待ください。あんなに国際的な観光地を飛び回るのはもう、ゴジラかボンドかってくらいですね。

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一応、ゴジラなんで、コングなんで、人間の生み出した文明と自然環境の相克というか、共生は可能なのかという問いを読み取ることもできますが、そんなのはおまけくらいのハリウッド版ですから、そんな巨大かつ深遠な問いは一旦ゴジラの尻尾にぶっ飛ばしてもらって、巨大生物プロレスの問答無用の楽しさに酔えれば万事OK。なんか、ゴールデンウィークに観る娯楽作として僕は十二分に満足しましたよ。『ゴジラ-1.0』は技術はすごいのかもしれないけど、とにかくゴジラ一体しか出てこないのが怪獣映画としては不満だったんだよなという方なんかは特に、今すぐ劇場へ直行ください。
音楽使いもなかなか楽しくって、KISSが流れたりもするし、この曲のチョイスと使い所は、なかなかいいぞこれはって思えます。BadfingerのDay After Dayをオンエアしました。

さ〜て、次回2024年5月14日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、実写版『シティーハンター』ゴールデンウィークも終わってまた忙しくなる中で、みんな大好きシティーハンターNetflixでのんびり鑑賞ってのもなかなか良さげですよ。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!