京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2019年6月6日放送分
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』短評のDJ's カット版です。

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5年前のゴジラとムートーの戦いで息子を失ってしまった動物学者マーク・ラッセルは、特務機関モナークから離脱していました。一方、中国にあるモナークの基地ではマークの元妻エマが、娘のマディソンと一緒に孵化したモスラの幼虫との交信を試みます。そこへ、環境テロリストの傭兵部隊が襲撃。ふたりは拉致され、怪獣と交信する装置オルカも強奪されてしまいます。
 
巨大怪獣の存在が公になった今、武力によって怪獣たちを制圧するべきだという世論や政府の意見に対して、ゴジラ研究の第一人者芹沢博士を擁し共存の道を探るモナークラッセル親子と交信装置オルカを救出しようとするものの、南極でモンスターゼロと呼ばれる怪獣が目覚めてしまったことで、それを察知したゴジラが南極へ向かうなど、事態は混乱します。モスララドンキングギドラといった怪獣が次々と復活する中で、モナークを始め、人間はどう対応するのか。そして、怪獣たちの戦いの行方は?
日本が世界に誇るゴジラシリーズのリブートであるハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』から5年。その続編ということになりますが、怪獣たちが地球にうごうご蘇るという、レジェンダリー・ピクチャーズ製作のモンスターユニバース構想の中では、『キングコング:髑髏島の巨神』に続いて3作目にあたります。ちなみに、モンスターユニバースの次回作も既に決まっていまして、『Godzilla vs. Kong』が2020年5月に公開予定です。
 
監督は、前回のギャレス・エドワーズからマイケル・ドハティに交代となりました。彼は『X-MEN2』や『X-MEN:アポカリプス』、それから『スーパーマン リターンズ』の脚本を手がけていますが、筋金入りのゴジラ・ファンです。芹沢博士に扮するのは、我らが渡辺謙。他に、カイル・チャンドラーヴェラ・ファーミガサリー・ホーキンスチャン・ツィイーなどが出演しています。
 
それでは、制限時間3分の映画短評、そろそろいってみよう!

いろいろと監督インタビューを漁っていた中で、面白い発言に行き当たりました。曰く、「この映画はモンスターオペラです。『スター・ウォーズ』がスペースオペラであるように」。そして、構造として『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』に大きな影響を受けていると、映画サイトTHE RIVERでも答えているんですね。
 
前回現れたムートーをゴジラが撃退したことで、とりあえずの平穏が戻った地球でしたが、街は破壊され、多くの人命が失われたわけです。そこで、政府なんかはゴジラを含むかつての地球の支配者たち巨大怪獣たちを葬り去るべきだと主張します。つまりはこういうことです。地球の現支配者である人類が、その主導権を蘇った怪獣たちに渡すまいとする。一方、モナークは人類と怪獣の共生を模索します。ゴジラたちは生態系の一環であって、彼らの活動によって地球は再生に向かうのだから、うまくコントロールすれば、共生もできるし、地球環境も改善する。大雑把にまとめれば、こういうことだろうと思います。だからこそ、彼らはモンスターではなく、巨大生物をタイタンと呼ぶわけです。タイタンというのは、ギリシャ神話に登場する巨人族の神のことです。
 
ただ、作品を観ればわかるように、今回は人間たちは特にちっぽけな存在です。この物語における人間の役割は、だいたい何かを起動することです。もともと地球にはいなかったギドラを覚醒させる。禁断の武器をあっさり使用する。ゴジラをバックアップするためにこれまた禁断の核を使用する。などなど。あとはね、オスプレイとか乗り物に乗って、怪獣たちの戦いを眺めたり、よせばいいのに近づいてトバッチリを食らったりするばかり。はっきり言って、無力でした。人類と怪獣をそのままジェダイたち共和国とシスの帝国になぞらえるのは乱暴だけれど、確かに物語の構造としてはエピソード5帝国の逆襲に似ている展開を見せます。

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故に本作は、怪獣映画大好きで、怪獣たちの戦いにこそ楽しみを見出す観客にとっては、東宝オリジナルへのリスペクト満載で狂喜乱舞となるわけです。いいぞ、ドハティ監督、お前分かっとるなってことですよ。確かに、モスラの優美な姿や十字架と同時に画面に映るギドラの神々しさ、そしてゴジラをまさに神の中の神と位置づけるような存在感と神殿での芹沢博士とのやり取りなど、絵画的なキメの構図をうまく取り入れた画作りはすばらしかったです。これは宗教映画の変種と思わせる演出も随所にありました。キャストにも活かされていた西洋と東洋の価値観の違いも盛り込んでいて、なんかグチャグチャしてるけど、よくやったと思えます。
 
逆に、怪獣に相対する人間たちの欲望と葛藤のドラマを見たいという観客にとっては、ちと物足りなくなってきます。というか、大味に感じられるわけです。怪獣とコミュニケーションを取ろうとする様子も、自己犠牲的な研究者たちの行動も、ドラマとしてはわかるけど、なんかすごく小さいし、彼らの操ってる乗り物に比べて技術がチープに見えたり… なんか、スケールが釣り合ってないんですよね。そういうもんだと言われりゃ、それまでですけど。

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1本の映画としての完成度と、ゴジラと人間のバランス、そして現実の世界への批評と風刺という意味では、やはり『シン・ゴジラ』に軍配が上がるかな。

 
でも、不満足だなんて僕はまったく思ってなくて、むしろそりゃ興奮しました。構図としては「逆襲」したゴジラたちですが、ほとんど傍観するしかなかった地球の支配者たる人類はこれからどう知恵を絞るのか。ていうか、キングコングは今何してるんだ? どこにいるんだ? その行方と期待は来年に持ち越しです。


僕が観たのは字幕版だったのですが、吹き替え版では最後にこの曲が少し流れます。ボーカル川上洋平くんのたっての願いがかなってのゴジラ映画への参加となりました。


さ〜て、次回、2019年6月13日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『アラジン』です。僕が出ているという噂は本当なのか!? あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!