京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

ジュース (旧ウェブサイトコラム『小噺パラダイス』)

 ちょっとした事情から、韓国人にジュースをおごってもらうことになった。僕が彼に親切にしたので、彼はお礼に僕にジュースをおごってくれるという話になったのだ。

 彼は、どれがほしい?というような意味のことをつたない英語で言ってきた。彼の発音はすごくくせがあって、あんまりなに言ってるかわからなかったんだけど、まあだいたいのニュアンスで内容はわかる。そうだなあ、ここはありがたく頂戴するとするか。

 僕はアイウォントアミノサプリと言った。

 本当は午後の紅茶が飲みたかったんだけど、「アフタヌーンティー」とかややこしい言うと伝わるかどうか不安だったし、アミノサプリにはちゃんと英語でAMINOSUPLI って書いてあるから、わかりやすいだろうと思ったんだ。

 通じない。
 発音が悪かったのだろうか?
 もう一度アミノサプリと言ってみた。
 彼は首をかしげている。どうやら本当に通じないぞ。うーんそうか、AMINOSUPLI って、考えてみたら英語じゃないんだな。それっぽくアルファベットで書いてあるだけなんだもんな。そのくらい察してくれよとも思うが、これが逆の立場で、謎の漢字とひらがなの羅列によるジュースの名称(例えば『西清雅ろ美よ』など)を、むこうの発音で言われたとしたら? 僕だって理解できる自信はない。というかほぼ無理だろう。よく言われることだが、和製英語は日本人にしか通じない!
 ソーリーと僕は言った。
 まいったなあ。どうすればいい? いらないと言ってしまうのは簡単だが、それではむこうの気がすまない感じだ。

 とりあえず、英語の飲み物を選ぼうと思った。「生茶」とか「小岩井まろやかヨーグルトテイスト」とか絶対通じないからだめ。「極烏(ごくう)」なんて論外だ。という制限の上で、そのとき自販機にあったのは、VOLVIC と KIRINLEMON と TROPICANA だ。トロピカーナはだめだろう。アミノサプリがだめなんだから、トロピカーナが通じる理由はどこにもない。じゃあボルビックかキリンレモンなんだけど、キリンレモンはなあ。レモンはオッケーなんだけど、キリンが微妙だよなキリンが! キリンって英語じゃないよなあ。でも麒麟はもともと中国の怪物だし、意外と国際的に通じる?だって津波は英語でも TSUNAMI だろ? いや麒麟津波は違うか。そうだ、キリンはジラフだよ。うーん、なんか炭酸そこそこ飲みたいのに悔しいなあ。ジラフレモンって言ってみるか。通じるわけないよな。もう日本人にすら通じないよな。じゃあボルビックしかないぞ。妥協するか? だけど親切にしたお礼に水もらうって、ここは砂漠か? 僕らは遊牧民か? そもそもそんなに水ほしいわけじゃないしなあ。うーん。

 彼が僕の方を見てきたので、僕はプリーズ・ウェイトと言った。
 もう一度自販機を眺めてみた。どうしようか? 右上からひとつひとつ銘柄を検証してゆく。そうしたら、「FIRE」の文字が目に飛び込んできた。缶コーヒーだ。
 おっ、ファイア、いいんじゃないの?
 いや、でもちょっと危険じゃないの?
 たしかに「ファイア」という単語が通じないということはないだろう。れっきとした英単語だもんな。でもそれを缶コーヒーの名前だと理解してくれなくて、文字通りの意味に解釈されてしまったら? 「いいよ」とポケットからライターを取り出されたら? 「こっちがいいかい?」とマッチを出されたら? 実は彼はサーカス団の火吹き男で、「おやすいごようさ」と得意技を披露されたら?
 彼がもう一度僕の方を見てきたので、僕はもう一度彼にプリーズ・ウェイトと言った。

=告知= 以下のイベントは終了しました。
  トップページにも掲載していますが、現在有北クルーラーは、『かのうとおっさん』という長年彼が活動するコントユニットの本公演に向けて稽古中です。秋の夜長、ぜひ会場へ足を運んで、大いに笑ってください。過去の名作から待望の新ネタまでを満載した怒涛の4連続公演も最終章を残すのみとなりました。演目は各章ごとに違いますので、すべてご覧いただいても、存分にお楽しみいただけます。

かのうとおっさんコントの会 ふたりは最高!

日時:玄武の章 10/17(水) 20:00〜
    白虎の章 10/29(月) 20:00〜
    青龍の章 11/14(水) 20:00〜
    朱雀の章 11/28(水) 20:00〜
料金: 1800円(前売・当日共通)
ただし、観れば観るほどお得になるんです。2回目は1000円、3回目は500円、4回目はなんとタダ! これまでに既に足を運んでいるという人は、魅惑の累進割引制度をぜひご利用ください。
場所:−IST[イスト]零番館
ご予約・お問い合わせ: メールなら、kanoutoossan*hotmail.co.jp(*を@に変えてご利用ください)。電話なら、090-4498-6621(ありきた)までお願いします。
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