京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

イタリア映画の聖地チネチッタ 〜巡礼の旅はワインの香り〜

今から6年ほど前、私とポンデ雅夫と彼の幼なじみであるウシ君(仮名)との3人でローマに1週間滞在した。
ひょんなことから一日空いた日ができたので、ポンデ雅夫が突然立ち上がって「イタリア映画の聖地、チネチッタ・スタジオへ行くべきだ!」と言い出した。
しかし場所がわからない。
私たちは、とりあえず手元にあったローマの地図を広げてみた。
なんのことはない、地下鉄にチネチッタという駅があったのだ。
順調だった。
早速現地へ。
地下鉄車内でスタジオの歴史を紐解くポンデ。
私たちもいつの間にやら彼の巧みな話術で心が躍りはじめ、何だか着く前からわくわくしていた。
足取りも軽く地上に出ると、驚いたことに、すぐ目の前がチネチッタの門であった。
拙いイタリア語で道を聞く必要もない。すべてが順調だった。順調すぎた。

入り口は解放的で、特に警備をしている様子もなく、若者が行き来をしていた。
私たちもそれにならって、門をくぐり、さっそく中へ。
見学はどこで申し込むのやらとさらに車用のゲートを超えようとしたところ、どこからやって来たのか警備員に呼び止められてしまった。
やっぱりか…。
順調すぎるというのは今思えば単なる前フリだったのだ。
見学には事前の申し込みが必要らしい。
遊園地ではないのだから、今考えればそういうものなのだろうが、そのときの私たちには想像力が不足していたのだ。
致し方ない。
当然のごとく、私たちはすぐに追い返されてしまった。
寸止めという言葉を私たちは痛いほど噛み締めました。
もうすぐそこなのに…入れてくれればいいものを…悪さはしませんから…

その日チネチッタ巡りに1日当てようと意気込んでいた私たちは、無惨にも午前10時にして1日の予定をなくし、ただの風来坊になり下がってしまったのだった。
凹んだ私たちは行く当てもなく、それでも悔しいので辺りを散策することにした。
結局チネチッタ・スタジオに隣接するチネチッタ2(なんて拙速なネーミング!)というショッピングモールのレストランで朝っぱらからワインを飲んで過ごしたのだった。
私もウシ君も美味しいお酒が飲めるならそれで満足だったんだけれども、3人の中で一番意気込んでいたポンデ雅夫は、切なかったに違いない。
自分の好きな映画の話に唾を飛ばしながら、レストランの窓越しに彼はただただチネチッタを見つめていた。
いや、正確に言えば、チネチッタをぐるりと取り囲む巨大な壁を…。

昼前から飲んだくれていた私が、ポンデ雅夫ではなく、この私が、それから6年後、チネチッタ・スタジオ内にある映画学校に通うことになるとは、夢にも思わなかったのである。