京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『リメンバー・ミー』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2018年3月23日放送分
『リメンバー・ミー』短評のDJ's カット版です。

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メキシコの田舎町で代々続く靴職人の大家族と暮らす12歳の少年、ミゲル。ミュージシャンになることを夢見る彼には、大きな悩みがあった。それは、ひいひいおばあさんの代から、この家では音楽を聴くのも演奏するのも厳しく禁じられていること。先祖を偲ぶ祭日である死者の日、コンテストにこっそり出場しようとしたミゲルは、尊敬する音楽家ロドリゲスの霊廟に忍び込み、飾られたギターを拝借して弾いた途端、死者の国へとワープしてしまう。元の世界に戻るには時間の制限があることを知ったミゲルは、家族に再開するため、そして夢を追うために、偶然知り合った陽気な骸骨ヘクターに助けを求める。

トイ・ストーリー3 (字幕版) アナと雪の女王 (字幕版)

ディズニー・ピクサーの最新作で、監督は『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチ。原題は”Coco”なんですが、邦題の由来となったテーマソング『リメンバー・ミー』は、今回短編同時上映された「アナ雪」の名曲”Let It Go”を書いたロペス夫妻が作詞・作曲を担当しています。
 
第90回アカデミー賞では、長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門を獲得し、興行的にも大成功を収めているこの作品。
 
それでは、3分の映画短評、今週もそろそろいってみよう!

まぁ、よくできてます。この春休み、たとえば家族で、あるいは恋人同士で、何か映画を1本観に行くということであれば、『リメンバー・ミー』という選択はまず間違いないです。テーマ設定の裏側をわかった風に読み解くとするなら、昨年の「モアナ」もそうでしたけど、もはや決して無視できないレベルでアメリカの人種を構成しているマイノリティーの文化にスポットを当てつつ、そしてもちろんしっかりリサーチしてリスペクトしつつ、それでもなお、宗教や価値観の違いを越えて誰しもが共感できる物語に仕立て上げる。その能力たるや、もうディズニー・ピクサーの右に出るスタジオは現状ないでしょう。
 
予算も潤沢にあるし、技術も世界トップレベルなので、これだけ引きの画が多くても、その背景までの微細な描き込みたるや唖然とします。だいたい、死者の世界の登場人物はみんな骸骨だってのに、あれだけキャラが描き分けられるってのは感服しますよ。

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モチーフにしているメキシコの死者の日は、このコーナーで扱ったもので言えば『007スペクター』のオープニング長回しでも利用していました。あちらは映画全体を支配する死のイメージを頭から印象づけようとしていたと思いますが、こちらには不気味さも厳かさも無くて、むしろラテンそのものな印象の多彩な色味とご機嫌な音楽に溢れています。これはどちらが間違っているということではなくて、どう切り取るかという問題なので、僕としてはどちらも面白かったです。メインの舞台となる死者の世界も、ああいう感じなら死んでも悪くないって思えるしね。ギャグセンスも一流でした。
 
そして、表面的なご機嫌さ、つまり、生者と死者の世界が実はそう遠くないものであって、精神的な交流は可能なのだという、日本で言えばお盆、つまり死者が戻ってくるという観念の裏にあるド級の切なさに踏み込んだのも評価に値するでしょう。冷酷な話だけど、生者に思い出してもらえない死者は、帰る意味があるのかということですね。死んでもしばらくは誰かに覚えていてもらえる。けれど、生者の誰からも思い出してもらえなくなった時、人は2度目の死を迎える。それこそ、本当の意味での消滅なんだと。
 
僕も基本的には同意できるんですが、家族の絆というテーマを重視しすぎているとも思いました。だって、前半のミゲルがまさにそうですけど、家族っていうのは押し付けがわりと当たり前のように許される牢獄でもあるわけですからね。血縁を越えた絆の価値を描くのが進歩的であるというトレンドの中で、実はかなり保守的な映画でもあるなというのが僕の見立てであり、不満な点でもあります。
 
だって、ミゲルはロドリゲスのある種「お導き」によって死者の国へ行き、そこでの大冒険を経てあのラストへと向かうわけですけど、もしこうしたことも無かったら… あの家族、かなりキツくないですか?
 
ただ、世界中どんな人間にも先祖がいるわけで、自分のアイデンティティを考える時にそこは避けては通れないわけです。折しも日本は彼岸の時期。自分という存在と家族について、つまりは人生の意味を考えるきっかけとして、この映画は万人に開かれた良作だと言って差し支えないでしょう。

さ〜て、次回、3月30日(金)の109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ボス・ベイビー』。これ気になってたんだよなぁ。アニメ続きですが、ユニバーサル・スタジオxドリームワークスということで、このタッグはどうなのか。見届けましょう。あなたも鑑賞したら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!